たすけてみた
「友が…欲しい…」
今月何回目かになるそんな呟きをしながら、階段下のスペースでジメジメしてるのは、我らがぼっちひろ。
前回の話しかけてもらおう作戦が失敗に終わった事で意気消沈しているひろは溶けた顔でだらりと体を横にする。
「なぜ失敗したのじゃろうか…やはり本日の主役が悪かったじゃろうか…」
などと見当違いな事を呟きをながらこの世に絶望する。
やはり…ぼっちは生まれた時からぼっちなのであると。
「帰ろう…」
項垂れてる間にいつの間にか完全下校時刻だ。
ちなみに完全下校時刻になっても帰らずに1人項垂れていることがある為、この階段下は学校の七不思議に数えられていたりもする。
今日は大人しく帰るひろは、ランドセルを背負い1人とぼとぼと帰路に着く。
忘れてはいけないがまだ小学生なのである。
そんなひろが人目を避けながら薄暗い路地を通り、帰っていると何やら言い争いが聞こえてくる。
「良いじゃん、ちょっと遊ぼうよー」
「や、やめてください!」
そんなテンプレのような台詞が聞こえてくる。
よくよく見てみると、1人の男が女の子に絡んでいる。
(うわー、なんというてんぷれ、しかも事案じゃな)
(ここで見逃しても寝覚めが悪いしのう…)
ひろは近くにあった木の棒を手に取り2人に近寄る。
「しょ、しょこまへだ!」
しかし人見知りの癖にしゃしゃり出てきた為絶妙に気持ち悪かった!
相手の男はひろのそんな態度が怯えてると勘違い。
「ああん?なになに?びびってんじゃん」
などと言っていやらしく笑みを浮かべる。
「というかお嬢ちゃん、可愛いじゃん、一緒に遊ばない?」
そして事案だった!
ひろはそんな男の言葉を無視。
木の棒を下段に構える。
そして一気に距離を詰め、スネを一閃、ついでに股間を打ち上げる。
「母上から預かった防犯ブザーを使っても良かったんじゃがな」
ひろは痙攣する男を見下ろしながら、木の棒をシュッとする。
仮にも前世は剣聖、筋力はなくとも一般人等瞬殺なのだ。
そんなひろがまたつまらぬものを斬ってしまったと木の棒を収め、振り返った所で固まる。
そう、助けた女の子がいるのである。
助けた後の事などなーんにも考えてなかったひろは、顔を青ざめさせながら、目を逸らす。
「あ、あひょ、らいひょうぶれふか?」
そして勇気を出して安否をかくにんするが、女の子はハッとしたように何かに気づくと、急いでその場を離れてしまった。
「…やっぱり気持ち悪かったじゃろうか」
残されたひろは、そんな事を呟きながら肩を落とすのであった。