わし、生まれ変わる
外を歩けば剣戟の音が鳴り響き、魔法が飛び交う世界。
そんな世界の果ての村にある、その山奥の小屋で、1人の命が付きかけようとしていた。
「ああ、魔法を極め、剣をも極めたわしじゃが・・・ついにその生涯で友ができなかったな」
ベッドに横たわるしわしわの男は、1人手を虚空にあげ、その顔をゆがませる。
思えば若いころから修行修行、成人してからは森の中に篭って自給自足生活。
まともに会話したのは両親くらいだ。
最後の最後くらい・・・誰かにみとってほしかった。
男がそう思いながら咳をすると、手が真っ赤に染まる。
どうか来世があるならば・・・その時は友達ができますように・・・。
そう願いながら、息を引き取る。
だが。
次の瞬間、視界が真っ白に染まる。
『おめでとうございます!元気な女の子ですよ!』
「ほぎゃ?」
わしはついで聞こえてきた言葉に頭をひねる。
誰かに抱き上げられている。
年老いたとはいえ、成人男性をこんな軽々と?
相手はどんな巨漢だろうと思ったが、どうやらそうではないらしい。
よく見えない視界で辺りを見回すと、真っ白な部屋と小さな手が見える。
そして喜びに満ちた女性に抱きかかえられるわしは・・・
「あうー(そうか・・・これが転生というものなのだな)」
1人何かを悟ったように、再び深い眠りにつくのであった。