6.僕の体重はともかく、彼女の憎悪は重い
「ニュースみた?」
「見たよ。あれやったの加奈子だろ。復讐なのかな…やっぱり」
「たぶんそうだと思う。」
「44人はヤバイって。てか、関係ない人まで巻き込んでんじゃん。」
「それね…それより、店長と連絡とれないの。なんか怖くない?このままだと、私とじゅんやもヤバイ気がする。」
「え、まじかよ。確かに…少なくとも俺はヤバイ気がする。」
「うん、私もそう思う。とりあえず、今すぐ会えない?正直怖くて。」
「そうだな…どこで落ち合う?」
「ごめん、私、怖くて外出たくない。じゅんや、本当にお願いだからうちまで来てくれない?」
「分かった!心配しないで、すぐ行くから!」
「ありがとう。待ってるね。」
純也は、バイト仲間の美里とLINEを済ませると、自慢のロードバイクに乗り、美里が住むアパートへ向かった。
アパート前に到着すると美里からLINEが来ていた。
「鍵は空いてるからチャイム無しで入って大丈夫だよ。中に入ったらちゃんと鍵閉めてね。あとチェーンもちゃんとかけてね。ほんと怖いから。」
「あ、そうそう今家の掃除してて、薬品の臭いとかするけどそこは気にしないでね。」
純也は、返信せず美里の部屋に向かった。
美里の部屋は201号室。確かに鍵はかかっていなかった。
「みさとー、入るぞー。」
美里からの返事はない。部屋の奥にいるのだろうか。
純也は、一先ず家の中に入った。
美里に言われたとおり鍵を閉め、チェーンをしっかりかけたところで、純也は本能で悟った。この空間はまずい、と。
すぐさま鍵を開けたが、チェーンが上手く外せない。手が震える。
「やべぇ、何だこの臭い。」
焦る純也。何とかチェーンを外すことができた。
勢いよく扉を押したが、びくともしない。何度押しても結果は同じだった。
「なんでだ…どうなって…る」
純也の視界は真っ暗になった。
純也のスマホが光った。
美里からのLINEだった。
「ドンドンうるさいなー。私は奥の部屋にいるよ♡」
僕は、水が満パンに入った大きなクーラーボックスに座って、ピンク色のスマホをいじっている。
そして僕は、彼女の親友と呼ぶに値しなかった女のスマホと肉片を、2階から無造作に放った。