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(二)-19
私は「それでは横浜駅で」と言って電話を切ろうとした。
すると八尾は「あー、ごめんなさい! 実は今日別件でアポがあったの忘れていました。すみませんがまた後日でいいですかね」と言った。アポがあったのではなく、私と会うことが都合悪いのだろう。
私は「今日お会いできませんか」と続けたが、「あー、ごめんなさい、ちょっと別件の電話が入りましたんで切らせて頂きますね」と通話を切られてしまった。
なるほど、こうして業界関係者との接触をなるべく断ち、アートと関係ない人を騙し続けるのだろう。話し合いもできなければ、交渉などできない。詐欺グループの住所や連絡先がコロコロと代わったりするのと同じだ。利益だけ持ち逃げするわけだ。
ただ、今回は幸いにもまだ絵の代金は支払われていないようだ。となると、絵はまだ画廊にあるから、まずそれを押さえた上で石見屋の八尾と交渉するのが良いかもしれない、と考えついた。
(続く)




