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(二)
宮田さんから紹介された人物は、資産家で会社経営などをしている南平大輝という人だった。駅近くの喫茶店で会った。
話は、空想画家の蒲田虚空という画家が初期に描いた『鵺』という作品を探して欲しい、とのことであった。
というのも、お父様が亡くなり、大輝さんが今の家を継いだのだが、相続の際に業者にその絵の鑑定を依頼したところ、「価値がない」とのことで二束三文の価格で強引に売却されてしまったという。
お父様の南平大二郎さんは美術品の収集を趣味としていた。しかし大輝さんにはそのような趣味もなく、美術品の価値はさっぱりわからなかった。そのため、業者が提示した価格もそんなものかと思ったのだそうだ。しかし、故大二郎さんの弟で、大輝さんの叔父にあたる大三郎さんと話す機会があり、その絵の話題が出た。そこで、その絵にはそれなりに価値があるものだということ、つまり業者にダマされたことを知り、慌てて取り戻そうとしたのだ。
(続く)