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(二)-10
「骨董商店石見屋」の人間と画廊の人間は別人だ。ならば、画廊の人と交渉しても「販売する」としか話さないだろう。騙し取った人間に直接交渉できなければ意味がない。そこで、探りを入れてみることにしたのだ。
翌日、私は仕事を休んでギャラリー広尾に来た。
前回フロアにいた初老の男性がいた。男性は私の顔を見るなり「この前の方ですね」と声をかけてきた。
「ええ。あの絵に興味がありまして」
「そうですか。実は昨日も買いたいと言ってきた方がいましてね。非常に注目されていますよ」
(続く)