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(一)
私が『快盗広尾』として仕事を始めたきっかけは、宮田益美さんからの一本の電話だった。
彼女はアートスタイルマガジンの編集者であった。以前私が企画した企画展についての取材を受けたことがあり、それ以来のお付き合いであった。
その彼女が、「ある人と会って欲しい」というのであった。そのときは一度お断りしたものの、翌日再び電話があった。用件は「絵を探してもらいたい」というものであった。
どういう事情なのかは不明なので、乗り気ではなかったが、とにかく会ってみることにした。
(続く)