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Chocolate Cosmos。

作者: あれん。

この関係は時に最も近くて、時に激しく遠い。

酔った君が一度だけ「好きだよ」と言ってくれた。

聞きたいと、頼んだ私の我儘を受け入れて。

彼女にも、記念日位にしか言ってあげないと知っていたから、明日には忘れてても構わない。


今となっては珍しくもない出会いの形(SNS)。

たまたま同じ時期に同じアプリで遊び競い合って仲間になった。

小さな画面の向こうの君が何者であるかも知らず、なんなら性別だって。

短い文章のやり取りを繰り返し、少しずつリアルな日常に触れるようになり、君の素顔を見つけた。

あぁ、やんちゃしてるなぁ。

ピアス、煙草、髭にロン毛。

ドレッドにしてみた!

何をとっても接点なく、仮に同じ教室に居ても関わることを避けていただろう。


俺様だけど寂しがり。

素直に愛に飢えていて、束縛してしまう愛情と、自由を求めながら自分だけを愛して欲しいと強く求めていて、もっと浮ついた熱を持っているのかと思った。

夜の街、激しい音、強いお酒に奇抜で露骨な女性達。

乱れた熱と危険な薬。


「惚れてない女も、ドラッグにも興味はないよ。」


クラブDJ。

君の素顔のひとつ。


小さな画面に映し出される君。

リズムを刻み、仲間との日常。

機材を扱う君の指。

毎週楽しみにしていた。


触れてみたいと思ったし、その場所に身を置いてみたいとも。


ぱっと紫煙に包まれて君が見えなくなる。

なんだか手品みたいだなと口元が緩む。


触れる事はない、その場所に身を置く事も有り得ない。


ちっとも好みじゃなかった。

賛否はあっても、この出会い方をしてなければ知り合う事はなかったし、心を通わせる事もなかった。

ゆっくりゆっくりと文字で語り、長くなる文字と濃くなる内容はSNSからメールに変わり、もどかしい時間を重ね。


『声が聞きたいな。』


「おう」

「はじめまして」

「なんだそりゃ」


二度目のはじめまして。


日々たわいない会話。

嫌がる人も多いけど、仕事がどうだったとか何があったとか、普段真面目に頑張ってる事を知ってるから愚痴を聞くのも楽しくて、何も隠そうとしない君との何でもない会話が嬉しかった。


仕事中のはずの時間にコールが響く。

何かあったかな?

「どしたの?」

んー?

「もしもーし」

ガタゴトカタカタ、、微妙に声が聞こえるような気もするけど、、、

通信障害?

「!」

これってコールしたつもりないやつだね。

こっそり仕事の見学(盗み聞き?)


コールが来たけどどしたのかな?と送信。


「知らんうちにリダイヤルしとった!」


それってさ、昨日最後に話したの私なんだね。


帰宅途中の短い会話。

きっと夜には誰かと会うか話すかするだろと思ってた。


『おやすみが聞きたいな』


すごい時間にコールが鳴る。

深夜事故なく帰宅出来るよう会話をするようになった。

「家着いたわ」

「お帰り」

「寝るでな、おやすみ」

「おやすみなさい」


眠りに着く前、最後に聞くのが君の声。

君が聞くのが私の声ならいいな。


「あのさぁ、朝起こしてくれん?」


モーニングコールで簡単に目を覚ましてくれるような君ではなくて、

留守電切っておいてよ!って思いながらリダイヤルを繰り返す。


「おはよ、、、後5分、、、」


朝起きない子供を起こす親って大変だねぇ、、とか思いつつ。


「おはよ」

「おう」

「行ってらっしゃい」

「おう」


私からはモーニングコールだけ。

基本コール待ち。


それっておかしくない?と友人に言われた。


「んー、、私、彼女じゃないしねぇ。今はフリーのはずだけど彼女居てもおかしくないし」


ポカーンとする友人の顔に、何か変な事言ったかなと不安になりつつ、


「元カノと同じ名前なんだって」

友人に少し苛立ちが見て取れた、、、

「あ、Twitterとかで確認済み。てか、今も友人してて交流あるから嘘はないよ」

少し重い空気で少しの沈黙。


「会うの?」

「何で?」

「会いたいよねぇ?」


どうなんだろ?

会いたくないと言えば嘘。

触れてみたいというのが正しいかもしれない。

実際の君を知りたいとは思うから。


「会いに来いよ」


そう求められることは素直に嬉しい。


目一杯ハグしてやるよ!

軽い言い方をするけど、それを軽く出来ない人でしょ君は。


「無理」

「来いよ」

「出来ないよ」

「何で?」

「好きだもの」


会ってしまったら触れずにいられない。

その位には好き。


「だから来いよ」


それって同じ意味?

なら、会いに来てよ!


そんな事は聞かない、言わない。


「会った事がなく、会う気もなく、気持ちを確認するでもなく、何なのソレ?」

呆れたようにSNSで知り合った友人が溜息をつく。


リアルな友人もネットの友人も言う事は同じ。

返す言葉も同じ。

「触れてみたいとは思うよ」


触れてみたいんだ。

いつも見てる指先に。

ただ本当に会ってしまったらどうだろう?


とか悩むとこなんだろうけど、、、

何も変わらないという妙な自信はある。

変わりようがないという自信。


知り合って関わって少し混ざり合う、戯れた時間を過ごし、ある種の甘い空気が無いわけじゃない。


コール。

「お帰り」

「疲れたわー」

「今夜は出るの?」

「多分」

「帰り待っててもいい?」

「わからんで」


深夜のコールがあるのか、何時になるのかも分からない。

深夜に更新される関係者のTwitterとかとか、、


一応嫉妬みたいな気持ちはあるんだよね。。。。

チクリチクリと胸に刺さる痛みは、あぁ君が好きなんだなと思わせる。


その反面で、早く君の心を動かす出会いがあればいいのにと願う。


「それが理解出来ない。」

「どう聞いても愛しちゃってるよねぇ?」

「相手が幸せならいいとかいうやつ?」


片恋仲間?からはキツイ言葉が多い。

片恋をしてる気はないし、重ねる時間が増える程に気付く自分の思い。


たられば。


もう少し近くに住んでいたら。

もう少し若かったら。

もう少し早く出逢えていたら。


けどさ、今知り合ったからこうなれたんだよね。

近過ぎる人達には言えない本音。


「何でも話せるんだよ。」


このままでいたい。


仲のいい従姉妹くらいの関係。


早く彼女を連れて来て。

目一杯 私がハグしてあげる。

心からおめでとうと言える。

お式でスピーチだってしちゃうよ!


そのくらい君が好きだよ。


SNSで知り合ったからリアルな名前で呼び合う事は無い。

知った所で使う機会もない。


別れたばかりの元カノと同じ名前って笑える。

いきなりのフラグ。


****君

リアルな名前で呼んでみる。

「何?」

「名前で呼んでみた」

「あー、呼ばれなれてるでな」


でしたね。。

知ってた。

でもさ、呼んでみたかったんだよね。。


「やけ、特別やんな」

「?」

「他におれへんやん、俺の事****なんて呼ぶの」


声だけの会話で良かった。

今絶対顔見られたくないや。

耳だけというのも、結構アレなんだけどね。。

想像(妄想)で、いやまぁアレですよ。。


そのくらいは思ったりはするんですよ。

夢は見たい、、かな。


「ただいま」

「お疲れ様でした」

「夕飯つくるで」


お互いキッチンに立ちながら、何時ものように何時もの報告会。

聞こえてくる生活音が心地良い。


「んっ?、風呂中?」

「ですよ」


だってねぇ、、時間とか関係なくコールして来るし、出ないと次が不機嫌なの自覚してる?


「年下君にいいように振り回されてない?」

「かもね」

「全然らしくない」

「それ言い出したら年下の時点で違うでしょ」


だからね、リアルじゃないから受け入れられるのよ。

君が好きだという自分を。


リアルに置き換えたら、、、

ないなぁ。。


「何でコールしてくれるの?」


「喜んでくれるやんか」


「気使いながら話すん面倒いやんか。何話そとか考えんのも嫌やし」


「何も話さんで繋いどるだけでもやしな」


、、、ん、好き。

音だけ聞こえる状態。

エリアが違うからTVずれるんだよね。

そこで笑うか!みたいな楽しみ方。

急に黙り込んだと思えば、寝息。

ちゃんと布団で寝落ちたならいいのだけど。。。


「おやすみ、マイネリーベ」


言ってる自分に鳥肌。

言われるのと言うのって違うのね。

簡単には起きない君に言いたい放題。


ま、起きてる君にこんな事言ったら大喧嘩確定。


君から聞く色々は、私の知らない世界。

私の常識というものからは外れてしまう事もあって、ノンフィクションで語られるそれらは、知らずにいてもよかったかな?と思う部分もあったけど、本当に身近な所で色々な事が(TVで見るような)おきているのだなと。


危ない事には関わらないで。

関わる気はなくても巻き込まれる、、、回避不能な人間関係。。


何度目かの春。

君の家の梅。

私の家の桜。

今年も綺麗に咲いたね。


君の家は坂上で、部屋から見降ろす海に続く道。

私の部屋も海から遠くはないけど、海を感じる事は少ない。


変わらず重ねる時間。

おはよ。

お帰り。

おやすみ。


君の友人とも話す機会が出来て、面倒な奴だろ?なんて言われてみたり。

そうだねぇ、、、彼氏だったらイライラしそうかな。


「今夜は何食べようか?」

「カレーやで。」


隣には居ない君だけど、声はいつでも隣。


「野菜ゴロゴロだよね。」

「せやな。」


知っている事は多くない。

追っかけ回してる子達の方がくわしいだろう。

ゆるゆるとした時はいつまで続くだろうか。


スマホの電源を切って就寝。

ふと目覚めるのはモーニングコールの数分前。

苦笑い。

苦笑い。


同じ名の元カノさん。

お互いを思って別れた。

追い回す子らに嫉妬を向けても居た。

あれから状況も変わって、今なら一緒になれるんじゃないかな。

触れられる距離は強い。


「結婚するんだわ」


、、知ってる。


どうして相手が君じゃないのだろう。


「幸せになって欲しいね」

「せやな」


出会って10年。

色々が話しやすくて、色々が聞きにくい。


気になる人は居ないの?


君には君が守る家族が必要だと思う。

ほぼ専業主婦な妻。

時には一緒に夜遊びを。

気持ちは3歩後ろを歩かせて、いつでもその手は離さない。

冷めてるようで結構な熱を持て余してるよね君。


「会った事もないのに彼氏だ彼女だもないわなぁ」


ポツリと囁かれた言葉に少し戸惑い。


SNSの仲良し(友人)以上、リア友人未満?

10年を重ねたけど、何もかわらないまま。


君は独立して時間もお金もわりと自由になっていて、、

年齢的に周囲も静かなままではないでしょうに。


回数は減っているけど、変わらずコールをくれる。

運転中で聞こえるのは音楽と君の歌う声。

室内の君の足音。

会話というより時間の共有。。


《もっとも永く続く愛は、報われぬ愛である》

(サマセット・モーム/イギリス)


3度目を伝えられないまま。


分かりにくくて、古い物言いでごめんなさい。

読了ありがとうございます。

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