表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lay-up girls レイアップ・ガールズ  作者: 日野かさね
Lay-up girls 3
78/85

075 明青学院 vs 流星女子

 

 試合が始まる。


「ってか、瑠雨(るう)出てないじゃん」

「みたいだね」


 千秋の言葉に短く応える。


 コート上に藤代瑠雨(ふじしろるう)の姿はない。

 一年生とは言え、あの瑠雨ですらスタメンに入れないのが明青学院というチーム。

 瑠雨を観に来た手前、残念ではあるけど……。



 まずボールをキープしたのは青のユニフォーム、明青学院。

 そのボールはすぐに、10番を付けたポイントガードの選手に預けられた。


 今日最初の試合だからだろうか。

 会場はざわざわとしていて、どこか浮ついたような空気を感じる。


 この感じ、集中出来ないんだよなぁ……なんて事を思っていると。


「いっぽーん! 集中(しゅーちゅー)!」


 そんな私に向けられたメッセージかのように、ボールを持った#10の声が届く。


 声の主は明青学院のポイントガード、二宮二葉(にのみやふたば)だ。

 癖のある髪をてっぺんで結ったパイナップルのような髪型に、黒縁のスポーツゴーグルを装着した独特の容姿。 どこから見てもすぐ見つけられるくらいに目立つ。

 そんな彼女が、ゆったりとしたフォームのドリブルでボールを相手コートまで運ぶ。

 そこで足を止め、味方を呼び寄せるように短く左手でくいっとジェスチャー。


 その動作に応じて寄ってきた味方へボールを預けると、やや右へと位置を変え、すぐにリターンパスを受ける。


 マークする相手の選手がそれに対応するように前へ出た瞬間――。


 左から鋭いドライブ。

 あっさりとマークを躱し、3ポイントラインの内側へ侵入。

 ボールを構え、ジャンプシュートを放った。


 ボールがネットを揺らす。

 明青ベンチと観客が同時に沸く。


「ナイッシュー!」

「ニコー!」

 観客席から、彼女を称える声援。


「ニコ、人気あるなあ」

 パチパチ……と拍手をしながら、千秋が呟く。


 二宮二葉。

 2年生にして名門、明青学院のポイントガードを務めるエースプレイヤー。

 私と千秋にとっては、ミニバス時代のチームメイトでもある。


 今も昔も、彼女の愛称は“ニコ”。

 その呼び名は、試合を観に来ている観客にまで浸透している。

 間違いなく、今大会ナンバーワンの人気選手だと思う。


 あの見た目のインパクトも人気の理由だろうけど、それ以上にプレーに“華”がある。


「性格は最悪だけどね……」

「くくっ、楓はマジでニコが苦手なんだな」

「苦手じゃなくて、嫌なんだよ」

「ニコが聞いたら泣くぞ、それ」


 そう言って千秋が笑う。


 ……観戦に戻ろう。

 ボールを持つのは流星女子。

 アウトサイドでパスを回す相手に対し、ゾーンディフェンスで守る明青は、ボールホルダーに対してプレッシャーを掛ける。


 中々隙見せない明青のディフェンスに焦れたか、流星の#15がパスを受けた瞬間、単騎で中へ突っ込む。


 掛かった、とばかりに明青がぐっと中を絞る。

 拡げた網を絞るようにスペースを消し、インサイドで待ち構えるセンターが両手を挙げる。

 ところが――。


「おぉ!?」


 思わず声が漏れる。

 狭いスペースの中、ディフェンスの手をするりと掻い潜り、左手一本でシュートを放つ。

 無謀にも思えるプレーだったが、ボールはリングを通過。


 今度は流星女子のベンチが沸く。


「すごー、あの人上手ー!」

「無茶すんなー、あの15番」


 由利さんが素直に驚いてみせると、千秋がそれに続く。


 得点を決めた#15は、反転してすぐに自陣へと戻っていく。

 攻守が入れ替わり、明青ボールの攻撃。

 リスタートのボールを受けにエンドラインへ寄ってきたニコさんが、振り返って#15の背中をチラリと見た。


 そしてボールを持ち、ドリブルを開始。


「オッケー! 今のはしゃーない!」


 よく通るその声で、味方へ切り替えを促すと、近くに流星の選手がいないのを確認してから、ダンダンッ、と2度、速いテンポのレッグスルーを見せる。


 その瞬間、どこか浮ついていた会場の空気が変わった。



 **********


 第1(クウォーター)、立ち上がりから4分が経過したところ。

 試合は予想外の展開になる。


「また15番! きた!」


 明青の選手が放ったシュートが外れ、流星ボールになると、いの一番に前へ走る選手にパスが渡る。

 ボールを受けたのは#15。


 速い。


 後手を踏んだ明青のマークを置き去りにして、そのままレイアップシュートを決める。


 ――――。


 ここでタイムアウトを告げるブザー音。


 8-12。

 リードしているのは流星女子、最初のタイムアウトを取ったのは明青学院だった。


「……流星、強くね?」

「……だね」

「……15番、凄くね?」

「…………まぁ……なかなかやるんじゃない?」

「謎の上から目線! 素直に認めりゃ良くね」

「ぐぬぅ……」


 千秋の言う通り。

 ここまでは#15の活躍が目立つ。

 流星女子自体、流石はベスト8まで残るチームというか、普通に強い。

 特に攻撃面では、#15が突出したプレーぶりを見せていた。


 ゾーンで守る明青のギャップを上手く利用して、15番が仕留める。

 明青があの15番に手を焼いているのは、誰の目にも明らかだった。


「守り方、変えるのかなー?」

「だろうね。 流石に一人にやられ過ぎ」


 由利さんの問いに、千秋が答える。

 15番への対応をどうするか。 序盤に問題を突きつけられているのは明青の方だ。


 タイムアウトの時間が終わり、両チームの選手が再びコートへと戻ってくる。

 明青ボールで試合再開。


 明青の攻撃。

 アウトサイドでのパス回しから、中へカットインした明青の#5へニコさんから高めのパスが通る。

 上背のある5番がこれをしっかりと両手に収め、そのままシュート。

 きっちり決めて10-12。

 明青が差を縮める。


 攻守が変わって流星女子。

 注目は明青のディフェンス。


「15番だけマンマークっぽい?」

「多分」


 ゾーンで守る明青の中、#9の選手だけがボールを目で追うこともなくピタリと流星女子の#15に張り付く。


 相手のエースに対して、明青が出した処方箋。

 それでも#15は止まらない。


 味方のスクリーンを生かし、3ポイントラインの外でパスを受けると、ブロックの手も意に返さずそのままシュート。


 ゴール下でリバウンドに備える選手の間に落ちてきたのは、リングを通過したボールだった。


 10-15。

 流星の勢い、#15の勢いが止まらない。


「お」


 何かに気付いた千秋が、短く声を漏らす。


「出るんじゃない?」


 言われて明青ベンチの方を見ると、コーチの指示を受け立ち上がる一人の選手。

 そのユニフォームから露出した両肩が見える。

 何度も見る姿だけど、こうやって観客席から姿を見るのは久しぶりな気がする。


 彼女から視線を外し、ボールの行方を追う。

 明青が小気味良いパス回しで、相手のディフェンスを乱しにかかる。


 ふと、左サイドでフリーの選手が生まれ、そこへ右サイドでボールを持つ選手から山なりのパス。


「あっ」


 声を漏らした瞬間、そのボールに流星の#15が食らいつく。


 ターンオーバー、攻守が入れ替わる。

 ボールを奪った#15がドリブルで一気にボールを運ぶと、雪崩れ込むように流星の選手達が相手陣内へ走りこむ。


「マーク! 外すなっ!」


 ニコさんから激が飛ぶ。


 それをあざ笑うように、#15は追ってくるディフェンスをいなすと、左サイド最深部へ走りこんだフリーの味方へ速いパスを通す。


 ボールを受けた選手が、ゆっくりとフォームを作りシュート。

 審判が三つ指を立てて示す。


 心地よい音を立て、ボールがネットを揺らす。

 流星が連続で3ポイントシュートを沈めた。


 オフィシャルがジェスチャーを審判に送り、審判がそれを受け入れる。

 コートから9番が出ると、サイドライン脇で待ち構えていた30番が勢いよくコートの中へと入っていた。


 10-18。


 流星女子が点差を広げた所で、藤代瑠雨の出番が来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] なろうでまさか!こんな本格的なスポーツ物を目にするとは思いませんでした!書いてみるとわかると思いますが、これは本当に難しいことだと思います。 [気になる点] やはり題材が難しすぎるため、バ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ