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Lay-up girls レイアップ・ガールズ  作者: 日野かさね
Lay-up girls 2
42/85

040 地区大会②

 

 国府台昴(こうのだいすばる)新徳学園(しんとくがくえん)による地区大会1回戦。

 

 紺のユニフォーム、すばる高がボールを持って攻め上がる。

 

 対する白のユニフォーム、新徳学園は自陣に引いて2-3ゾーンディフェンスを展開。

 人に対してマークに付くマンツーマンディフェンスに対し、ゾーンディフェンスは各選手が担当の【エリア】を守る。

 中でも2-3のゾーンはバスケの中で最もオーソドックスな布陣で、ペイントエリアと呼ばれるゴールに近いポジション、インサイドを厚く守る陣形だ。

 

 安藤環(あんどうたまき)さんを中心に身長の高い選手を3人出してきたウチに対し、まずは手堅く守ろうという意図が見える。

 

 ボールを持つ櫛引千秋(くしびきちあき)が仕掛ける。

 ドリブルで相手と間合いを取ると、ボールを受けに来た環さんへパス。

 ハイポストで上手くボールを受けた環さんは、滑らかな動作でゴールに向かってターン。

 対応するディフェンスを振り切ると、高さを生かしてそのままシュート。

 これが決まり、幸先よく先制。

 

 攻守が替わり、白の新徳の攻撃。

 対するすばるは、ハーフコートのマンツーマンで守る。

 

 パスを回しながら機を伺う新徳。

 #4の選手が、千秋の隙を突き、ドライブで中に侵入。

 こちらのマークがずれ、フリーの選手が生まれる。

 

 フリーでボールを受けた選手が、2ポイントゾーンからシュートを放つ。


「「リバンッ!」」

 シュートを打ったと同時、両チームの選手の声が重なる。

 両者の予測通り、ボールがリングに嫌われ弾かれた。


「任せろっ」

 その落下地点にポジションを取った飛鳥さんが、ディフェンスリバウンドを制する。

 

 すばるは攻め急がない。

 ボールを落ち着かせ、千秋が確実に相手陣へと運ぶ。


 千秋から詩織さん、詩織さんからコーナーへ張り出した竹谷夏希(たけやなつき)さんへとパスが繋がる。

 夏希さんが迷わず3ポイントシュートを打つ。

 しかし、このシュートもゴールを捉えることは出来ず。リングに弾かれる。

 

 その落下地点では、相手のセンターを務める#12と環さんが体をぶつけ、激しくポジションを争う。

 相手より体格で上回る環さんが、有利な位置をキープすると、両手を高く伸ばして難なくボールを掴む。

 

 そのまま、アウトサイドで待つ千秋にパス。

 今度は千秋が3ポイントシュート。

 だが、このシュートも入らない。

 

 再びリバウンドを制したのも環さんだった。

 ボールを取った環さんが、今度は自らシュートに行く。

 

 ゴール下で、環さんに体を当てられた相手センターが顔を歪める。

 環さんのシュートはバックボードを経由してリングを通る。

 すばる高が連続でポイントを奪う。

 


 ここから、すばるの攻勢が続く。

 流れに乗りきれない新徳の拙攻もあり、すばるが点を重ねる。

 

 堪らず、新徳ベンチがタイムアウトを請求。

 試合が中断され、スターターの5人が駆け足でベンチへと引き上げてくる。

 

 立ち上がりは上々のスタート。

 初戦という事もあり、みんな緊張しているようにも見えたが、動きに硬さはない。


 特に環さんと飛鳥さんの動きが良い。

 あの2人がインサイドを制圧出来ている事が大きい。

 外れてもボールを回収してくれるという安心感があり、千秋や夏希さんは思い切りシュートが打てる。


 対する新徳からすれば、早急に手を打たなければならない。

 特に環さん。

 環さんに自由を与える事のリスクを十二分に理解したはずだ。

 

  「よし、この調子で積極的にいこう!」

 タイムアウトが終わり、詩織さんの掛け声に応じた5人が再びコートへと戻っていく。


 新徳ボールで試合が再開。

 相手の#4が、声を張り上げ味方に指示を出す。


 マンマークで守るすばるのディフェンスを崩そうと、ピック&ロールでマークを剥がしにかかる。

 スクリーンをかけた選手と入れ替わるように、#4が仕掛ける。

 新徳のエースはどうやら彼女らしい。


 空いたスペースにドライブ。

 飛鳥さんがヘルプにいくが、上手く交わされ、失点を許す。

 得点を決めた#4が、味方を鼓舞しながら自陣へ引き返していく。

 

 替わってすばるの攻撃。

 タイムアウトを取った新徳はゾーンからマンマークへ守備を変更。


 ボールを持つすばるの選手に厳しくチェックをかけに行く。

 環さんにはボールを持たせまいと、タイトなマークが付くが……。


 環さんはボールサイドへ寄っていき、そのままスクリーンをかける。

 それを生かし、千秋がドライブで突っかける。


「千秋さん!」


 その瞬間、動き出した詩織さんがボールを呼び込む。

 そこへ千秋からパスが入り、詩織さんがフリーでジャンプシュート。

 すばる高がすぐに点をゴールを返す。


 高さで勝るすばる高がゲームを支配。

 その後も環さんと詩織さん、二人を中心とした攻撃で、得点を重ねていく。

 第1Qからすばる高が順調に得点を伸ばし、新徳との点差を開きにかかる。


 試合は早くも、ワンサイドゲームになりつつあった。


 **********


 第1Qを終えて、25-10。

 早くも得点を二桁に乗せた環さんが、フリースローを含む13得点。

 詩織さんが6点、千秋が4点、夏希さんが2点。


「あ~マジしんどいし!」

「夏希お疲れ~!ってか超楽勝って感じじゃね?」


 口では疲れたと言いながらも笑顔の夏希さん。

 そんな彼女を労いながら、軽口を叩く加藤理香(かとうりか)さん。

 あんまり同意したくはないが、この調子なら確かに勝つのは難しくなさそうかな……。


 相手の新徳学園は、#4が時折鋭い個人技を見せるものの、攻撃が単調。

 アウトサイドからのシュートも精度が上がらず、相変わらずインサイドはすばるが制圧。


 ただ、バスケは何が起こるか分からない。

 今は好調でも、点を取れない時間帯は必ずやってくるし、逆に相手のシュートが急に当たりだす事もある。

 チームが好調な今のうちに、相手の息の根を止める攻勢をかけるべきだ。


 ……どうでしょう、先生!

 ここはやっぱり、得点力に定評がある私、茅森楓(かやもりかえで)の出番じゃないでしょうか!?

 てか試合に出たい。出たい出たい出たい!


 そんな念を麻木先生に飛ばすと、思いが通じたのか先生が私の方を見る。

 おっ!先生、私、何時でも行けます!


「楓」

「はいっ!」

 今日一番の声で応じる。


「ちょっと邪魔よ……、葵」

「はいはいー!」

「2Qのアタマから行くわよ、夏希と交代。準備して」

「了解ー!」


 声が掛かったのは、私の後ろに隠れるように潜んでいた、同じ1年生の高木葵(たかぎあおい)だった。


「さぁ皆、ここからよっ! 前半で勝負決めてきなさいっ!」

 麻木先生が激を飛ばす。


 うぐぐ……し、試合出たい……。



 **********


 試合はその後もすばる高ペースで進む。

 後半第3Q中盤までに30点差を付け、試合は大差の展開に。

 安全圏に入ったと見るや、麻木先生は主力の環さん、詩織さんを順に休ませながら、宣言通り他のメンバーを投入していく。


 加藤理香さんや、これが公式戦経験のない1年生の豊後結衣(ぶんごゆい)北村静香(きたむらしずか)の二人も無事コートに立つ。

 試合の決まった最終盤に差し掛かり、ほぼ部のマスコットと化していた3年の佐々木由利さんまでもが試合に出場。

 結局、私と櫛引千春(くしびきちはる)を除く全員がコートに立った事になる。


 ……え、何で……?

 千春は、「昨日の懲罰かなぁ?」と苦笑いしていたが、特に気にしていない様子。


 今日はこのまま初戦を突破すれば、すぐにもう一試合ある。

 その上、次に当たるのは地区シードの高校。新徳よりも実力的には上のチーム。

 千春はともかくとして、私は温存された……という理解で良いのかな?


 うーん、そんなの関係なく、試合出たかったんだけど。

 私にとっても公式戦は久しぶり。

 中学最後の大会以来だ。


 試合に慣れるという意味では、ちょっとでも出たかったんだけど……うぬぅ。


 私が一人で唸っていると、一際長いブザーが鳴る。


 試合終了。

 国府台昴高が、地区大会初戦の突破を決めた瞬間だ。


 コートに立つ両チームの選手が整列し、挨拶。

 ベンチの私達は、次の試合のチームの為に速やかにベンチを開けなければならない。


 荷物を整理し、席を立つ。


 ふと、対戦相手だった新徳ベンチに目を向ける。


 私の視線は、試合に出ていた背番号#4の選手で止まる。


 4番を背負う彼女は、その背中を丸め。

 目を両手で覆い、泣いていた。


 今にも泣き崩れそうな彼女を支えるように、チームメイトが彼女の肩を抱く。

 そして同じように、その傍で涙を流す。


 ――そうだ。

 この大会は一発勝負。

 負ければ終わりのトーナメント。


 名も知らない彼女達が、その青春を捧げたコートを去る。

 振り返らず、ただ静かに。

 

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