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Lay-up girls レイアップ・ガールズ  作者: 日野かさね
Lay-up girls 2
41/85

039 地区大会①

 

 土曜日。

 インターハイ第10地区予選、当日を迎えた。

 会場となる塩浜高校は、大会に出場する学生やその関係者達で賑わっている。


 私達、すばる高女子バスケ部は、9時開始の第一試合から登場だ。

 既にユニフォームに着替え、早速試合が行われる体育館でウォームアップを開始していた。


 いよいよだ。

 自然と胸の鼓動が速くなるのを感じる。

 ……まぁ、私はベンチスタートだけど。


 初戦のスターティングファイブは、2年生を中心としたメンバー。

 昨日、そのメンバーを巡って起きた千春と2年生との一悶着が尾を引いていて、チームには何とも言えない空気が介在している。


 顧問の麻木先生が全員を試合に出すと明言したことで、表向きは沈静化したように見えるが、2年生は試合前の緊張もあってかピリピリしているし、そんな先輩達の空気を察知してか、他の1年生もやや萎縮した感じ。


 そんな中、波風を立てた張本人である千春は飄々としている。

 千春の性格を知る私からすれば、昨日のはわざとやった感じがあるので、本人としてはまぁ、こんな雰囲気になる事も想定内だったのかもしれないけど……意図は良く分からない。

 真面目に練習していた私や他の1年生に対しての配慮だったのか、チームに対して問題提起だったのか……。


 表立ってではないが、千春は部長である詩織さんをチームの癌と言った。

 その意見には私自身、共感出来る部分はある。


 詩織さんは正直、このチームをどうしたいのかが分からない。


 ウチの部が出来た経緯を知れば、その過程での部員集め・顧問の問題を解決し、部の設立までこぎつけたその行動力は尊敬できるし、詩織さん本人も練習熱心だ。

 だけど、その事を差し引いても詩織さんには不満がある。


 このチームには、皆が共有する大目標が無い。

 勿論、個人的な目標は人それぞれで良い。

 でも、チームとしての指針、目的は必要だと思う。

 このインターハイで言えば、県大会出場とか、地区大会での優勝とか。


 本来それは部長である詩織さんではなく、顧問である麻木先生が立てるべきなのかもしれない。

 ただ私は、先生が一貫して一歩引いた態度を取っているのは、意図的なものだと感じていた。

 自主性を重んじていると言えば、都合良く解釈しすぎかもしれないけど。


 最初は単にやる気の無い先生だと思っていた麻木先生は、実は結構バスケに詳しい。

 求められればちゃんとアドバイスするし、その内容も的確だ。

 先生に紹介されて参加したバスケサークル【ハイファイブ】には、先生も参加していると聞く。

【ハイファイブ】の人たちは、かなりレベルの高い人たちの集まりだったし、そこに参加する先生自身も見合ったレベルのプレーヤーなのだろう。


 そもそもあのサークルに私だけ参加させたのも、普段の練習レベルに不満を持っていた私に対するケアだったんじゃないかと思う。

 要は存外にバスケに関してはちゃんとした顧問なんじゃないかと、個人的には評価している。

 ……明青との練習試合の時とか、言動がちょっとアレな時もあるけど。


 このチームは先生も含めて詩織さんが作ったもので、その方向性は良くも悪くも彼女に委ねられている。

 だからこそ、先生は必要以上に介入してこない。

 そんな中で、詩織さん当人がこのチームをどうしたいのかが一向に見えてこない。


 賛否は別として。

 千春の発言が、部の状況について改めて認識する機会となったのは確かだ。


 そんな事を考えていたら、千春が後ろから、ちょんちょんと私の肩を指で突いてきた。

 振り返ると、千春はその指である方向を示す。


「ホレ、楓の大好きな人が来てるよ?」

 言われて、指で差された方向、二階のギャラリースペースに目を向けると……。


「咲希ちゃん!」

「楓ちゃんー! 応援にきたよー!」


 同じクラスの友達、峰藤咲希(みねふじさき)ちゃんがギャラリーから私に向かって手を振っている。

 その隣にはアミちゃんやコウジ君といった、咲希ちゃんの紹介で知り合った友達も居る。

 コウジ君は男子バスケ部の小島渚(こじまなぎさ)の友達だ。

 男子チームも同会場で試合を控えているので、その応援も兼ねているのかもしれない。


「頑張ってー!」

「応援してるぜー!」


 二人も声を掛けてくれる。

 わざわざ応援に来てくれるなんて……皆、何て良い人なんだ……っ!

 でも私はベンチスタートなんだけどね……。


 そんなギャラリーの3人に手を振る。

 気付かなかったが、ギャラリーは多くの人が詰めかけていた。

 出場する選手の親御さんらしき人たちや、他校の選手たちだろうか。


 それを見て気持ちが引き締まる。


 集中しよう。

 チーム内の問題を考えるのは、それからだ。


 **********


 試合開始時間が迫り、コートには両チームの選手が整列する。


 すばる高のスターティングファイブには、昨日の発表通り、2年生を中心としたメンバーが並ぶ。


 PG #6 櫛引 千秋(3年)157cm

 SG #8 竹谷 夏希(2年)159cm

 SF #4 中村 詩織(2年)175cm

 PF #9 那須 飛鳥(2年)171cm

 C #5 安藤 環(2年)180cm


 1回戦の相手は新徳学園(しんとくがくえん)

 近年の成績は良くて2回戦敗退、取り立てて成績の良いチームではないようだ。

 コートに出てきた選手にも、特別目を引く身長の選手は居ない。

 一番背の高い選手で、ちょうど飛鳥さんくらいだろうか?


 その選手とすばる高では一番背の高い環さんが、ジャンパーとしてセンターサークルで対峙した。


 審判がボールを投げ上げ、ティップオフ。

 ボールは難なく環さんがタップし、自陣で構える千秋がキープ。


 地区大会1回戦、国府台昴 対 新徳学園の試合が始まった。


プチ解説コーナー

ポジション表記

PGポイントガード

SGシューティングガード

SFスモールフォワード

PFパワーフォワード

Cセンター


ティップオフ

試合開始時(1クォーター)のジャンプボールの事。


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