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Lay-up girls レイアップ・ガールズ  作者: 日野かさね
Lay-up girls 1
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003 天才少女

 バスケットボールMedia

 ~バスケ好きの個人ブログです~


 茅森楓。(名前出すとまずいかな…汗。)


 でも、彼女の名前は覚えておいたほうが良い。


 母親はなんとあの茅森愛!バレーボール日本代表で主将を務めた説明不要のレジェンド。

 母親の面影を残すルックスと背の高さ、まだ幼いながら力強い眼差しが印象的な選手です。


 高い身体能力と、非凡なセンスが融合した彼女のプレーは、天才的というより変態的。

 それでいて見る者を夢中にする魅力に溢れている。

 コート上の彼女を一目見れば、そのプレー異質さを誰もが感じると思う。


 長い滞空時間と抜群のボディバランスを生かした空中でのプレーは、他の女子選手には容易に真似できない代物。

 アウトサイドでのプレイも出色。特筆すべきは1 on 1のスキル。

 まるでテレビゲームでも操作しているかのように、彼女はスコアを重ねていく。


 実は、某動画サイトには彼女のプレイをまとめた動画集まであるようです。

 観客席から撮影されたと思われるその動画には、彼女の魅力あふれるプレーが満載。

 興味があれば是非観て欲しい。天才バスケ少女と一部マニア(?)に囁かれる彼女が、いかに注目を集める存在であることが、この動画から知る事が出来ると思います。


 先日の中体連県大会準決勝での彼女の活躍は素晴らしく、チーム総得点の半数以上である36得点を記録。まさに一騎当千の働きでした。

 最後はさすがというべきか、対戦相手だった強豪校 明青の底力に屈してしまいましたが、その試合を見た全員が彼女の事を深く心に刻んだでしょう。


 茅森選手の進学先については今のところ確かな情報がありません。

 ですが、県内外問わず、名だたる強豪チームから多くの誘いが来ている事でしょう。


 彼女がどの高校に進学し、どんな成長を見せてくれるのか。

 高校バスケの舞台で彼女がどんなプレーを見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。





 **********


 すぐに理解する。これは夢だと。


 夢の中で私はバスケをしていて、ひたすらゴールを決める。

 ドライブからのレイアップ、リバウンドからのジャンプシュート、アウトサイドからの3ポイントシュート。色んな形からのシュートを全て成功させていく。


 そしてゴールが決まるたびに声が聞こえてくる。

 それは称賛の言葉ではなく、誹謗中傷の類。

 何を言われているかは把握できない。でも、はっきりと聞こえてくる。私の事を言っているんだと強く認識させられる。


 ゴールを決めれば決めるほど、その声は重なるように増えていく。はじめは途切れ途切れだった声が、間断なく聞こえるようになり、大きくなっていく。


 その声を聞いていたくなくて、私の意識はどんどん内側へと引っ張られていく。内側へ行けば行くほど、鼓動が早くなり、ゴールを決めるペースも早くなる。私を責める声もどんどん増えていく。私は益々プレーにのめり込む。


 すると突然、私を圧し潰すように聞こえていた声が、全ての音が、プツリと途切れる。


 同時に、今までカラーで見えていた世界がモノクロに変化するのだ。ただ一つ、バスケットボールの色だけを残して。




 **********



「……んぬぅ……」


 目が覚める。無意識に枕元に置いたスマホを握り、目の前へ引き寄せる。

 点灯した画面には『5:55』と表示されていた。


 わーいゾロ目だ☆とはならない。最悪の目覚め。

 設定したアラームまではまだ一時間弱あるのに、意識は完全に覚醒してしまっている。

 頭は冴えているが気分は冴えない。

 深層心理だっけ?あんな夢が私のそれだと考えると、心底嫌になる。あんなくだらない夢何度も見せるんじゃないよ。


 体を起こして、ベットから出る。

 自室から廊下に出ると、リビングからTVの音が漏れ聞こえている。


 ドアを開けると、愛猫のカリーが私の足に体を擦り付けてきた。


「おはよ、カリー」


 愛猫のカリーが「みゃぁ」と、返事をする。

 続けて前足で私の足にしがみつく。朝ご飯の催促かな?

 猫大好きマグロ缶の置いてあるキッチンへ向かうと、ダイニングテーブルには弟の颯太(そうた)が座っていた。


「おはよう、姉ちゃん」

「ん、おはよ」

 颯太は既に詰襟の学生服を着ている。足元には大きなスポーツバッグが置かれていた。


「朝練?」

「うん。 あ、ジャム使う?」

「あ、置いておいて」


 颯太の座るテーブルにはお皿と牛乳が入ったコップ、ブルーベリージャムの入った瓶。

 颯太は、牛乳の残りを飲み干してからジャムの瓶をテーブルの真ん中に寄せ、皿とコップを持って立ち上がる。すらりとした長身。育ち盛りなのか、この一年であっという間に私の身長を超えていった。

 私も女子してはデカい方だし、遺伝の力は偉大だなと思う。

 ちなみにその遺伝子の元となった母君は、今日は出張で不在である。


 洗っとくからいいよ、と言うと、ありがとう。と丁寧なお礼が聞こえる。

 食パンをトースターにぶち込むと、冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップに注ぐ。


「大会、いつからだっけ?」

 喋りながら、猫大好きマグロ缶を戸棚から取り出す。そのアルミ缶の音を聞きつけたカリーが臨戦態勢で待機をはじめた。


「中体連? 六月からだからまだ先だよ、姉ちゃんも去年出たでしょ? あ、カリーはもうご飯食べたから、あげちゃだめだよ」

 なんですと!?と、カリーを睨むと、んにゃ? と首をかしげてこちらを見る。

 こいつっ……確信犯だろ。


「じゃあ、いってきます」

 そういってリビングから出る颯太を、いってらっしゃいと見送る。


 颯太は一コ下で、私も去年まで通っていた邦枝中の三年生だ。

 部活はバレー部で、キャプテンをしている。しかも生徒会長というおまけつき。

 新入生も入ってきて、今は色々と忙しいだろう。わが弟ながら、中々に良く出来た奴だ。


 中体連か……。

 私にとって最後の大会になったのが中体連だった。

 ということは、バスケを辞めてからもうすぐ一年経つんだな。

 なのに、未だにあんな夢を見る。


「……しょうもなっ」


 そう独り言を呟く私を馬鹿にするように、トースターがチンッと鳴った。




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