表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lay-up girls レイアップ・ガールズ  作者: 日野かさね
Lay-up girls 2
35/85

033 挨拶代わりの一発

 

 センターラインに、両チームのメンバーが並ぶ。


 赤色のビブスを付けたのが、私のいる「イト君」チーム。

 黄色のビブスを付けたのが相手の「エイジさん」チーム。


 きっちりジャンプボールからスタートするようだ。

 ジャンパーとして、エイジさんチームから、一番身長の高い人がセンターサークルに歩み出る。

 こちらのチームからも、一番背の高いイト君さんがやる気満々といった様子で前に出る。


 二人の身長差はほとんど無い。

 が、体格は対照的。


 相手選手がすらりとした細身の体型なのに対し、イト君さんは横にもデカイ。


 あの体型で、ジャンプ出来るのだろうか……。



 と思って見ていたら、案の定ほとんどジャンプせず、相手にボールをタップされた。


「うひゃーwwww」


 何がうひゃーなのか……。

 でも心底楽しそうだ。


 そんなわけで、相手ボールでゲームがスタート。


 特に指示があったワケではないけど、自然とマンマークの形になる。


 私がマークに付くのはチカさん。


 チカさんの動きを見ながら、ポジションを取り直しつつ、ボールホルダーを見ていく。


 今、ボールを保持するのはエイジさん。

 ゆったりとしたフォームでドリブルしながら、周囲に目を配っている。

 その姿は、真にポイントガードの所作。


 そのエイジさんが、左サイドにいる味方にパスが供給される。

 ボールを受けた選手が、ドリブルで中へ切り込む。


 完全にマークを振り切れないと判断するや、今度は逆サイドへパス。

 ボールは私のマークするチカさんの元へ。


 チカさんはそのボールを受けると、すぐさまパス。

 テンポ良く、正確に展開されるパス回しに、所詮は遊びと高を括っていた私の意識が置いて行かれる。


 中央やや右の位置で、再びボールを受け取ったエイジさんが、低い姿勢からドライブ。


 ――速いっ!


 マーカーを置き去りにして中へ侵入。


 ゴール下で守るイト君さんが、自分のマークを捨ててこれに対応。

 エイジさんを潰しに出るが……。


 その動きを読んでいたのか、絶妙のタイミングでパス。

 ゴール下でフリーになった相手が、難なくゴールを決めた。


「うひゃーwwwww」


 イト君さんが笑いながら、リングを通ってきたボールを掴む。


 ――レベルが高い。


 こちら側の守備が緩いというのもあると思うけど、どの選手もパスやドリブル、シュートといった基本スキルが正確だ。


 次のプレーへの動作に無駄が無く、判断も早い。


 結果、プレースピードが速い。


 男子基準でもかなりレベルが高いと思う。

 少なくとも、ウチの女バスでのプレースピードに慣れきっていた私の意識は、完全に置き去りにされてしまった。


 普段のゲーム難易度とはまったく別物だ。


 イメージを切り替えないと、まったく何も出来ずに終わってしまう。


 ゴールラインからイト君さんが、山田さんへボールを入れてゲーム再開。

 ゆっくりとボールを相手コートへ運んでいく。


 味方全員がハーフラインを超え、相手コートへ侵入したところで、迎えるようにエイジさんチームのメンバーが、各自のマークに付き始める。


 3ポイントライン周辺をうろつく私に、パスが渡される。

 私をマークするのも、やはりチカさんだ。


「楓ちゃん、いつでもどーぞ♪」

 ボールを受けてゴール方向に足を向け、チカさんと正対する。


 チカさんは右手を前に出し、私と腕一本分の間合い取りながら、じりじりと足を拡げ、静かに腰を低く落としていく。


 優しげな笑顔を浮かべながらも、その視線はわずかな動きも見逃さないとばかりに私を射抜く。


 さっと周囲に目をやると、味方も相手も、私たち二人から離れるようにポジションを取っていた。

 誰しもが一様に、私の動向を見ている。


 明らかに、意図的に創出された一対一の状況。


 ……なるほど、『お手並み拝見』って事か。


 この人たちがいつもやっているレベルに、私が付いていけるのか?

 そうではなく、レベルを落とさないと楽しめない子なのか?

 この一対一を通して、私というプレーヤーを図ろうとしているんだ。


 意地が悪い、なんて事は思わない。

 むしろ……。


「燃えるね」



 小さく呟き、左手でドリブルを開始。

 半歩、右足を突き出すと同時に、ボールを右手にスイッチ。

 対峙するチカさんの前に、ボールを晒す。

 構えるチカさんの足にぐっと力が入り、重心が後ろに下がったのが分かる。


 その瞬間、一気にギアを上げる。

 再びボールを左手に戻し、左からドライブ。


「っ…!」


 チカさんの口から漏れた促音(そくおん)を右耳で捉え、そのまま前へ進む。


 一歩で並び、二歩で切り裂き、三歩で抜き出る。

 チカさんを置き去りにして、相手コート中央、フリースローラインへ単独で侵入。


 相手チームのヘルプが出てきて、私の進路を限定するようにスペースを埋める。

 男の人はさすがというか大きくて、まるで壁のように感じる。


 誘導されるように、空いているスペースへ。

 ドリブルしていたボールを両手に持ち、ステップを踏む。


 1ステップ。

 マークが私の進路を塞ぎにくる。


 2ステップ。

 急激に進路を変え狭い方へ。

 ステップを踏んだ足が軋む。

 脇を縫うように、ジャンプ。


 左手を伸ばし、リングの方へと照準を向ける。


 瞬間、ブロックの手が視界に移った。

 咄嗟に体勢を変え、角度を変える。


 普段のボールより重い。

 ぐっと左手に力を入れ、気持ちいつもより高く、ボールを放り投げる。


 勢いを殺すように、タタンッと着地。

 すぐさまボールの行方を追う。


 山なりの起動を描いたボールは、ブロックの手をギリギリ躱し、リングを捉える。

 パシュっと控えめにネットを揺らして落ちてきた。


 危なかった……!

 ボールが思ったより重くてヤバかったけど何とか点を取れた。

 まぁ、自己紹介の代わりにはなったかな……?


「ヒュー!」


 そんな事を思っていたら、誰かがすぐさま、そんな声を発したのが聞こえた。


「ナイス!」

「やるじゃん!」

 立て続けに、周りから声を掛けられる。


「くそぉ、やられたぁ……!」


 チカさんが悔しそうな表情を見せながら、私の前に手のひらを差し出す。

 ども……と、控えめにタッチ。


「私もガチで行くからねっ!」

 そう言って笑うチカさん。


 良かった……。

 どうやら、そこそこやれると認識して貰えたっぽい。


 その事に安心すると、急速に胸の奥が何かで満たされていく。


 これだ。

 私がバスケに求めているのは、この充足感なんだ。




プチ解説コーナー!

(作中バスケ用語の補足です。ご要望を頂きましたので、今後はちょくちょく書くよう努力します…)


ドライブ

ボールを持った人がドリブルで相手を抜きにいくプレイ。ドライブインとも言うみたいですね…。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ