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Lay-up girls レイアップ・ガールズ  作者: 日野かさね
Lay-up girls 2
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029 茅森楓の日常②

 

 放課後。


 練習着に着替え、男女バスケットボール部が練習に使っている第二体育館へ。


 館内には、練習着を着た男女が数名いて、各々ストレッチなどをしている。

 その中、丁度館の中央で仕切られた網のカーテンを掻き分けて、女子バスケ部の面々が固まっている奥の一帯へと合流。


 女子バスケ部には練習スペースとして一面が与えられている。

 もう一面は男子部が使用。

 ニ面あるコートを、男女で分ける形だ。

 去年出来たばかりの、しかも部員が十二名しかいない女子バスケ部に与えられたスペースとしては十分に広い。

 むしろ余しているくらいだ。


 そのせいで、倍近く部員がいる男子バスケが割を食っているように見える。

 よくこれだけのスペースを貰えたなぁと、不思議に思う。

 これは……露骨な政治力の差か?


 そんな私たち女子部員を見る、男子部員達の視線はどこか冷やかだ。


「おつー」

「お疲れ様ですぅ」

「……ども」


「お疲れ~。 みんな早いね」


 同じ一年生のメンバーたちと挨拶を交わす。


「うにゃ、一番乗りだったぜー」

 一際背の小さな少女。 高木葵が、エヘン、と胸を張る。 

 その両脇にいる豊後結衣と北村静香の二人も、真似してエヘンと胸を張った。


 私と千春を含めたこの五人で、この春に国府台昴高女子バスケ部に入った一年生全員だ。


 私たちに続き、二年生、三年生の先輩部員達も続々と館内へ集まる。

 三年が二名、二年が五名を加えた、計一二名の部員が全員集まった。


「集合!」


 そう声を掛けたのは、一際目立つ長身の美少女。

 部長の中村詩織さんの号令で、部員達が彼女を中心に輪を作る。


 ちなみに、顧問である麻木先生の姿は無い。

 学校には居るはずなのだが不在。

 理由は察するべし。


 麻木先生に代わり、中村さんから今日の練習メニューについて指示がある。


 彼女の指示に沿って、全体練習がスタートした。


 とは言っても、練習内容に凝ったメニューや難しい動きはない。



 全員でのウォーミングアップから始まり、フットワーク、レッグスルーやロールといった動きを入れたドリブル練習、スクエアパスと、基本的なスキルの練習が続く。


 このチームにはマネージャーがいない。

 今日に至ってはコーチもいない。


 その為、練習には特に指導が入る事もなく、時間配分も非常にルーズ。


 中村さんの号令が掛かったら次のメニュー、というような具合で、全員が同じメニューをこなしていく。


 取り組み方は人それぞれだ。


 この春からバスケを始めた結衣、静香の二人は、まだぎこちない動きながらも真剣にメニューに取り組んでいる。


 千春や葵なんかは、この辺の基本動作はお手の物といった様子で、時折笑顔を見せながらソツなく消化していく。


 ヤンキーの那須さん、副部長の安藤さんが黙々とメニューをこなす。


 一方、ギャル然とした同じ二年の二人、竹谷さんと加藤さんは、いかにもダルそう。

 練習に関係ない話をしながらメニューを消化していく。


 由利さんは……そもそも基礎的な動作が全然出来てない。

 ドリブル練習とか、ボール持って走ってただけだし。


 そんな調子で時間は過ぎ、一時間ほど経過。

 中村さんの指示で、1on1、2on2をやるところだ。

 そんなタイミングで、竹谷さんが加藤さんを引き連れて中村さんの元へ寄る。



「シオ、私ら今日塾あるから、今日はもう帰るわー」

「あ、うん…………お疲れ!」


 これですよ。

 私がこのバスケ部に入って一番驚いたのは。

 うちのバスケ部は、こうやって竹谷さんとかが普通に早退していくのですよ……。


 しかもこれが、別に顧問の先生が不在だからとかじゃなくて。

 先生が居ても当たり前のように帰っていくんだよね……。


 早退だけじゃない。

 練習参加自体、かなり緩いのだ。

 特に体調不良とかじゃなくても、今みたいに用があるからと言って練習に来ない。

 それが部全体で容認されている。


 竹谷さん達ギャル二人もそうだし、千秋や由利さんも来ない日がある。

 むしろ今日みたいに全員が揃う方が珍しい。

 スペースを余している、と言ったのはそのせいだ。


 普通に考えれば、練習メニューにかなり影響が出る。

 例えば五対五のフルコートで試合形式の練習を予定しているとこに、「じゃ、帰るわ」とか言う人がいるとそれだけで予定が狂う。


 何でこんなにも活動がゆるいのか?

 ……大丈夫なんだろうか?


 私からすればありえない。

 当然、不安になるよね?

 というわけで、こっそり千春に聞いた。


 千春から聞いた話によると、部の設立過程に関わっているようだ。


 去年の話。

 まず、この女子バスケ部の設立を企図したのは二年の中村さんらしい。


 中村さんはまず、もともと仲の良かった安藤さんを誘い、了承した安藤さんと二人でバスケ部の部員を集め出した。


 学校の規約で、部の設立には顧問が一人と、部員が最低五人必要。

 ところが、メンバー集めは難航を極めた。


 単純な募集では集まらず、二人は人づてに情報を集めては、部活に所属していない生徒や、昔バスケをやっていた経験者に声を掛けまくったそうで。


 その中で、ようやくゲットできた部員が、ギャルの竹谷さんらしい。

(当時もギャルだったかは知らんけど)


 部員集めに難儀した中村さんが、竹谷さんを引き入れる為に取った策が、このフリーダムな練習参加制度。

 結果的にはこれが功を奏し、部員集めに成功したそうだ。


 極め付けは顧問。

 ほとんどの先生がどこかしらの部活を請け負っている中、唯一担当を持っていなかったのが麻木先生。

 しかもバスケ経験者とあって、請け負ってくれるだろうと思っていたのがどっこい、麻木先生は部活の顧問をとにかく嫌がったそうだ。


 仕事が忙しくて余裕がないとか、残業がとか、様々な理由で難色を示す麻木先生を落としたのも同じ策。


 要は、ほぼ名義貸しみたいな状態なのだ。


 この間の練習試合みたいに、先生発信で練習相手を見つけてくるなんてほぼ無いらしい。

 指導もほぼ放棄。

 たまに、気分転換に練習を見に来るくらい。


 さすがに歪とは思うけど……経緯を聞けば納得出来なくはない。

 イチからの部員を集めがどれほど大変なのは容易に想像がつく。


 貶すわけじゃないけど、映画研究会や写真部みたいな文化系と比べると、どうしてもスポーツ系の部活は敷居が高いと感じる。

 ましてバスケは運動量も多い。

 入学当初はともかく、素人が後から入部するなんて、中々無いだろう。


 中村さんからしてみれば、それでも入部してくれた竹谷さん達に感謝の念はあれど非難する気持ちはないだろう。


 というわけで、私も納得している。

 レベルも含め、物足りないのは事実だけど。


 ただ、そんな事情を知らない男子バスケ部員達の視線は痛い。

 どう見ても人口密度低くてガラッガラだもんね……女子側のコート。


 ゴメンナサイ。

 空いてるスペース、どうぞ使っちゃってください!


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