026 プロローグ
いつもの教室。
休み時間を告げるチャイムが鳴り、私はすぐさまポケットから手鏡を取り出した。
鏡に映る自分を見ながら、前髪をいじる。
この時期はすぐ前髪がうねるから、授業中も気になって仕方がない。
出かける前にいくら時間かけてセットしても無駄、マジ意味ない。
前髪のセットが終わったら、今度はスマホのチェック。
起動するとすぐに、グループメンバーのメッセージがタイムラインに表示される。
どれも授業中、先生の目を盗んで交わされたものだ。
書いてあるのは他愛もない内容。
授業中の出来事とか、今話題のお店の話とか、放課後の遊びの予定とか。
誰かが送ると、別の誰かがそれに反応して、ダラダラとやりとりが続く。
それが別に楽しいとか、そういうワケじゃない。
ただそうすることが、私にとっても、みんなにとっても日常の一部。
そんな毎日が続く。
今日も、これからも。
それを嫌だと思ったことは無いし、特別だと思ったこともない。
ただ少し、漠然と不安に思っていたのかもしれない。
そんな時だった。
「あの……」
遠慮がちに私に声を掛けてきた女子。
一際目立つ高身長と、それ以上に注目を集めるだろう整った顔立ち。
隣のクラスに所属するその子は、同級生の私たちだけでなく、学校中で話題の美少女だった。
そんな子が、私に何の用だろう?
「……なに?」
私の口から出た声色には、無意識に訝しむようなニュアンスが滲んでいた。
その子は、そんな私の様子を伺いながら、意を決したように口を開く。
私に投げかけられたのは、意外な言葉だった。
「一緒に、バスケしませんか?」




