6話 『少女と学校』
「先生! そこをなんとかお願いできませんか!!」
放課後。ヘルフの声が放課後の職員室内に響いた。数人の職員がヘルフを奇異の目で見てくる。今はヘルフがモニカを学校に入学させるために説得している最中である。
今日はヘルフは登校日で、学校に来ている。モニカは家で1人でお留守番中だ。
「そうは言ってもねぇ⋯⋯。さすがにグラスター出身の子を入れる訳にはいかないよ⋯⋯」
禿頭のメガネをかけたひょろっとしたエーベルトの担任の先生――ビアスは書類を見てメガネをクイッとあげながら言った。
「お願いします! すごく可哀想なんです! あの子を救ってやりたいんです! お願いします!」
そう言ってヘルフはアルバイト先の店長のエイブレットのときと同じように土下座をした。目には微かに涙が滲んでいる。
「ちょ、こら! 顔を上げなさいエーベルト君」
「入れてくれますか!?」
ヘルフに輝いた目で見られ、ビアスはしばらく迷ったが、禿頭の頭をわしわししてから言った。
「⋯⋯分かった分かった。特別に入学を許可する」
「本当ですか!?」
ヘルフは心の底から喜んだ。今まで1人で通っていたけどモニカと学校に通える。一緒に勉強できる。その嬉しさがヘルフにはあった。
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「ただいまー!!」
ヘルフは家に帰るなりドタバタと廊下を駆け抜けソファへとダイブした。
「⋯⋯ど、どうしたのですか?」
その音を聞きつけ、モニカが自室からリビングへ出てきた。モニカをみたヘルフはモニカの両肩を掴み興奮した様子で言った。
「あのなモニカ! お前が学校に行けると決まったんだ!」
「⋯⋯学校、ですか?」
モニカは首を傾げたが、気にせずにヘルフは続けた。
「ああそうだよ、学校だよ! お前と一緒に通えるんだ」
「⋯⋯ヘルフと一緒に?」
「ああ! これから毎日一緒に朝ごはん食べて一緒に学校に行って、一緒に勉強して、一緒に帰ってくるんだ! どうだ?」
エーベルトが言うと、モニカは微かに笑みを浮かべながら首肯した。
「⋯⋯とても、いいと思います。それしたいです」
「だろ!? もう制服とカバンは用意してあるから早速明日から行こう!」
「⋯⋯わ、分かりました。行きましょう」
そして2人は明日一緒に学校へと行くことになった。