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オチのある短編集

不倫解散総選挙

 二十年以上昔、不倫はカルチャーだと、どうどう言った男がいた。彼はT京都知事を完璧に務め上げ、ついに国政へ進出、三期目には総理大臣となった。

 そして、見計らったようなタイミングで週刊誌にスキャンダルが掲載される。総理大臣の不倫が暴露されたのだ。この時代、総理大臣の不倫は絶対に許されないという風潮があった。だったら、そもそも不倫の前科持ち男を総理大臣にまでするなよと思うが、国民は彼のかつての醜態をすっかり忘れていたのだから、仕方がない。

 一線は越えていないなどと言い訳していたが、追求はそれでは治まらず、最終的に不倫総理は開き直って、こう言った。

「どうして不倫がいけないのだ。世の中、不倫で溢れている。みんな不倫ドラマ不倫シネマ不倫ゲーム不倫ノベル不倫マンガ不倫アニメに釘付けだし、不倫タレントがテレビに出まくっている。それを支持している国民もそうだ、自分は不倫をしていないと、嘘発見器に誓えるのかね。不倫はカルチャーなのだ」

 かつて、ひんしゅくを買った自分の言葉まで引用して畳み掛けた。

 それから越えていない一線というのは避妊具のことだったが、それさえ嘘だったと認めた。

「嘘を吐いたことには陳謝する。が、今も嘘をつき続けている国会議員がゴマンといるじゃないか。私は知っているぞ! 名指ししようか! 閣内にも野党にもいるぞ!」

 総理が名指ししようとすると国会は乱闘会場になった。

「やめろおおおぉぉぉ!」

「やめてえええぇぇぇ!」

「ええーい! こうなったら、解散総選挙だ!」

 不倫総理は強権を発動し、ついに前代未聞の不倫解散総選挙が行われる運びとなった。

 街頭演説では凄まじい罵詈雑言が飛び交った。

「みなさん、不倫しましょう。不倫合法化だ。やりまくりましょう! 不倫ファーストだ」

「いいぞ! これで、少子化問題、高齢者問題も解決だ。うわーーーん!」号泣。

「わたしはホテルでスケベしながら、政治のことも話し合っていたんですよ。政務活動費で買ったエロ本は外交に使っていたんです」

「ちがうだろー! このハゲー!」


 一ヶ月後、一議員にも当選できず、不倫元総理は、愛人の一人に慰められていた。家からも追い出されてしまったのだ。丸刈りにしても許してもらえなかった。モヒカン気味にしたことが妻の逆鱗に触れたらしい。巻き添えになって落選した二世議員の息子にも散々しかられた。

 膝枕で頭をじょりじょり撫でられながら、不倫元総理は言った。

「選挙で負けた理由がどうしてもわからん。野党は全員ポンコツだし、なにをしても負けないはずだったのに」

「あなたって、ほんとバカね。でもそんなところが、かわいいの」

「君は、理由がわかるのか?」

「簡単なことよ」

「しかし、みんな不倫をしたがっているじゃないか」

「そのとおり。でもあなたはやりすぎたのよ」

「まあな」

 不倫元総理は自慢げに自分のモノを眺めた。

「違うわ、そういう意味じゃなくて、不倫合法化というのがやりすぎ」

「なぜだ」

「不倫は違法のほうが楽しいんですもん。禁止されればされるほどに燃え上がるのよ」

「たしかに、そうだ。ぼくも、立場が高まるほどに不倫が楽しくなった。だから俳優から都知事、さらに総理大臣を目指したのだ。もう少しでA国の大統領にもなれたはずだ。二重に国籍を取得すればいい」

「それがわかっているなら、また次の選挙に出たらいいわ。国民は、今回のことなんかみんな忘れちゃうんだから」

「そうか、次は心を入れ替えたふりをするんだな」

「ええ、そして、不倫をしたら死刑法案を提出すれば、また総理大臣に返り咲けるはずよ。第二次政権も前例があるし」

「そのあかつきには結婚してくれるね?」

「いやよ。奥さんとよりを戻してちょうだい」

「どうして……」

「じゃないと不倫にならないじゃない」

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