序章
何もなかった私には
まるで初めて物語を見たときに似た感覚が芽生え
ていた。
今では見た物すら覚えていないが
あの時に感じたものは...
『感動』
なのだろうか。
漠然としていて覚えていない。
だが、確かに心が震えたのだ。
まるで呼吸をしているかのように感じられた。
作品はナマモノと言うのは本当のことらしい。
そして、目の前のソレもまた違った息づかいをして
いた__
人にはそれぞれ感じ方がある
人生はつまらない。という声や、
人生は喜劇のようだ。
という声もあるように。
前者も後者も同じ人間だが、
人間力の差は隠せない。
ありふれた刺々しい言葉を吐く人間の人生は
当然つまらなくなるだろう。ならなかったら
それこそどこかがおかしいのだ。
それに対して、人と違うことをする人間の人生は
とても苦しそうに見えるが、
当の本人は気にしていないようだ。
むしろ楽しんでいるのだ。
まるで世界中の雨を浴びるように
一筋の光を浴びて、
一本の純粋な花を咲かせるように。
このように、違う生き方をしてきた前者と後者
だが
心の底を叩いてみれば、
どちらからも悲しい音がするのは
どうしてなのだろうか。
閑話休題
つまらない話をした、話を戻そう。
これから綴る物語は、
今の私に至るまでの物語である。
時間は少し遡り、5年前のお話だ。
...もう5年も経つのか。
だんだん時間がはやく感じるな。
つい最近の出来事だと思うが、
あの時間は私にとって、空白と
は真逆のものだった。
確かに有った、私の胸に残る温かな記憶。
情熱をくれた思い出。
...もうそろそろ始めようか。
これは、1つの出会いから始まる、熱く、
...ちょっぴり切なく、
確かな温もりが灯る物語である。
そして、何かを始めるには、いつからでも遅くない。
いつだって始められる。そんな一筋の
『希望』
を持った物語。
題名は...そうだな.....
『君の声を探している』
にでもしておこうか。
...さぁ、
新たな物語が.....始まる。