唐揚げとゲンコツと明るさと
今回は後書きにて補足説明の他人物解説が入っています。
よろしければご覧下さい。
仕事終わりのある日私は魔法学校の通りに入って近くの食堂で夕飯を食べに行くことにした。
今日はオヤっさんが重要な打ち合わせとかいうやつで帰ってこないのだ。
一人での夕ご飯は久しぶりなような気がするけど、寂しいとかよりもワクワクの方が大きい。
なんだか少しだけ独り立ちしたような気分だ。
小さい頃オヤっさんに何度か連れてかれた飯食い所は再開発によって無くなったり、全く違う趣旨の店になったりとしてきたけどここの食堂だけは変わらず残れた。
店内に入ると熱気と共に味噌汁の匂い、揚げ物を揚げる音、箸と食器がぶつかる音、色んな情報がやって来た。
私は席につくと、すごく印象に残っている山オオカミの唐揚げ定食を頼んだ。
ぼーっとしていると周りの人達の会話が聞こえてくる。
「今日の効果持続の講義だるかったなぁ...」
「分かる分かる、神経ずっと使うしやってらんねぇよ」
と学校終わりの学生達の話や
「きいたか?近々東部の国の連中らが王都に反抗するために組織を作るらしいぞ」
「マジかよ、王都もいろんな国に恨まれてっかんなぁ....」
「まぁ大したことはないだろ?王都から使節団が派遣されていっつも丸くおさまんだから。それに、戦争は直属の軍が引き受けるんだから工場の人員は割かれねぇ、大丈夫だよ。」
と仕事終わりの作業員たちの会話。
このガヤガヤ感は改装したレストランなどには残ってない昔ながらのいい雰囲気だ。
私がこの街に来てからの17年間の中でも大きく環境は変化した。
良くなったところもあれば残念だと思うこともある。
そんな中でこういう場所は大事だ。 うん。
しばらくすると揚げたての唐揚げが運ばれてきた。
美味しく夕食を食べた後、私はもう一つ別の場所に行くことにした。
工具屋だ。
魔科学が発展したといっても魔法を支えるのやはり機械で、いずれ壊れてしまう。
だから今でもこういう工具屋は健在なのだ。特にこんな街では。
まぁそれはさておき、なぜわたしが工具屋に来たのか。
私は以前からある工具が欲しくてたまらないのだ。
それは、特殊合金ハンマー「オヤジのゲンコツ」
其の名前もインパクトがあるけれどそれよりもそのデザインだ。
1mぐらいの鉄の棒の先に付くのはゲンコツ。
ゲンコツデザインの特殊合金だ。
もう、その名前と外見を見た時から欲しいと思った。
こんな使いにくいにもほどがあるデザインのものを誰が使うのだろうか。私しかいない。
欲しいと思ったその時から私はコツコツお金を貯めてきてやっと買えるようになった。
そう、値段もそこそこしてしまう。通常の金槌が2000Gに対してこのオヤジのゲンコツなんとお値段40000G。
ほんと、誰がこんなネタの塊買うのか。やはり私しかいない。
40000Gを握りしめ私は工具屋の中に入り、帰りは背中に担いだゲンコツの重さに苦戦しながら帰った。
家に入って私は自室にゲンコツを下ろし、また屋上から街を眺めることにした。
もう暗い夜が来ているというのに街からは日中と変わらない明るさが溢れている。
朝方の風景を見てからだけどこの街の風景もなかなか悪くないもんだ。
明るい工場の明かりを眺めながら息を吸うとやっぱり油臭かった。
しかしながらその時は不意に、突然に、急速にやって来た。
家からおよそ距離も程々に離れた工場地帯から火柱が上がった。
私がそれを目にし何かを考える間も無く、爆風、熱風と共に音に聞こえない、いや耳が許容出来ない音が家を含めた辺り一体へとやって来る。
屋根に登っていた私は風に吹かれるままに転がされ3階の高さがある家から家の裏にあるごみ捨て場へと落ちる。
途端、激痛と混乱が襲ってくる。
「アグっ...」
呻くと私は意識を失った。
魔法学校:モールタルの再開発時にモールタル工場長達によって作られた。通常の学校と同じくらいの授業時間の中で実用特化の魔法を訓練する。
山オオカミ:この世界には鶏のような鳥はいなく鳥類は凶暴な上に捕まれば最後上空から真っ逆さまのような知能が高いものが多い。その為オオカミ種のような陸地の肉が好まれて狩られてきた。
山オオカミは肉の中でも癖がなく食べやすい。
人物解説
ヴィーア・ファンハール(その1):17歳、身長は170cmぐらい胸は程々(豊満とは言えないが貧乳でもないのだ。)長い金髪は後ろでひとまとめにしておくことが多い。ある程度自由な環境で育ったからか何事も溜めずにしておきたい派。
明るい性格と声、割と可愛いその容姿から実は魔法学校にファンがいたりする。
ファンハールはオヤっさんの名字である。
タマル:ツルッパゲ、筋肉モリモリマッチョマンの(ry高身長(2mちょっと)と彼の筋肉は第2魔科学工場の力仕事をこなすに十分である。
魔法の種類は自己強化。どこまでも自分を強化したいようだ。
顔は決して悪い訳じゃないので結構モテたりする。オヤっさんとは旧知の仲である。