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地球は最高のトレーニング場所だった?

「だから、何でそんなに足速いの!?」


 猛スピードで逃げたリコレットを追いかけてみたら、やっぱり普通に追いついた。

 さっきもそうだけど、言われて見れば随分と速くなったな。

 自転車を全速でこいでいる時以上の速さは出ているような気がする。


「お前を絶対に離さない。そう決めたんだ」

「セクハラじゃなければきゅんとくるかもしれない台詞なのに!」


「セクハラ!? なんのことだよ!? 話をちゃんと聞いてくれ! リコレットは何か勘違いしてるよ!」

「勘違い!? だって、私の寝る場所を教えて欲しいって!?」


「そうだ! 一緒に寝られる宿を知りたいだけなんだ!」

「やっぱ勘違いじゃないって!? 本気で言ってるじゃん!? 私の身体狙いなんでしょ!?」


「えぇ!? 街がどこにあるか分からないから、今夜泊まれる宿を教えて欲しいだけだぞ!?」


 併走しながらワーワー騒いでいたのに、俺の意図をようやく理解してくれたのか、リコレットは急に足を止めた。

 そして、膝から崩れ落ちると、酷く長いため息を吐いていた。


「はぁぁぁぁ……。今日は厄日かしら……」

「そういう日はゲーム三昧で引きこもるに限るな」


「誰のせいだと思ってるのさ……。うぅ、酷い勘違いした……」


 リコレットはそう言うと、真っ赤な顔でジト目を向けてきた。

 しかも、まだ勘違いを引きずっているのか、腕で身体を隠すように抱きしめている。

 うーん、おかげで身体の線が目立つけど、胸以外はスタイル良いなぁ。


「やっぱり勘違いじゃない視線を感じるよ……ちょっと邪な気を感じる」

「いや、誤解だ」


 ごめん。今のは誤解じゃなかった。

 何とか話題をそらさないと……。


「そうだ! マナって何? 響き的に魔力的な何かに関わっていそうだけど」

「嘘ついた上に何かとってつけたような話題反らしですけど、そうですよ。マナとはこの世界に満ちる魔力の源です。って、常識じゃないですか?」


「ちょっと遠い所から来たからさ。その、マナがない所から」

「何を言っているの? マナが無ければ立つことすら困難だよ? あれ? でも嘘はついてないみたいだし……」


 リコレットがきょとんとしながらそう言うと、今度は俺がきょとんとした。

 マナがないと立つことすら出来ないだって? なら、俺は一体どうやって立っているんだ? それに身体も足だけじゃなくて、剣を軽々持って走れるほど腕の力もついているぞ。

 どうにもリコレットの言うこととかみ合っていないな。


「それはねー。ヨミ君がマナの無い地球で暮らしていたからだよ」

「「女神様!?」」


 この女神は本当に神出鬼没だな!?

 というか、今回はリコレットも反応してるし、もしかして見えてるのか?


「リコレットにも見えるのか?」

「う、うん、と、と、というか、ここあの世じゃないよね? ウルシア様って魂を司る神様なんだけど……」


 さっきまで真っ赤な顔をしていたリコレットの顔が急激に青ざめている。

 そんなリコレットを見てウルシアはケタケタ笑っているのだから、この女神様良い性格してるなぁ!


「安心して。ちゃんと生きてるから。それと、さっきのマナの話しなんだけど、ヨミ君の世界でも高い山の上で生活している人って、低地で生活している人より呼吸機能が上がる話しあるよね? そのためにわざわざ山の上で練習するって話しも聞いた事ある?」


 いわゆる高山トレーニングってやつかな?

 マラソン選手がやっているのをテレビで見たことある。


「それと同じことがヨミ君の身体で起きててね。今まで限りなくゼロに近いマナで生きてきたせいで、マナの吸収効率と変換効率が最高になってるの。そのおかげで、超人的な足の速さと腕力そして体力が手に入ったんだよ」

「身体能力が強化されるってこのことだったのか」


「そうそう。後は魔物を倒して吸収出来る経験値にボーナスがかかるよ。何せ今まで吸ったことがなかったんだからさ。今回のでレベルが五くらいあがったと思うよ」


 思った以上に色々整備されていたんだなぁ。

 いきなり放り出されたことさえなければ、案外まともな女神様なのかもしれない。


「私としてはさっさと死んで貰って、魂化と肉体復元の経験をしてほしかったんだけど。まさかロングホーンドラゴンを倒しちゃうなんてねー」


 訂正しよう。この女神ろくでもないわ。

 笑顔でとんでもないこと言いやがった。

 そんなろくでもない女神でも、リコレットにとっては偉い神様みたいで、おどおどしながら話しかけていた。


「あ、あの、ウルシア様、何がなんだか話しについていけていないのですが……」

「あぁ、ごめんね。リコレットにも分かるように説明するね」


「ありがとうございます。ウルシア様」


 ウルシアが微笑みかけたおかげか、リコレットの表情から不安が少しだけ和らいだようだ。

 うーん、ろくでもない女神だけど、ちゃんとこの世界では信仰されているんだなぁ。


「このヨミ君はお金も家も服もないから、リコレットが世話してあげて」

「「え!?」」


 なんだ。意外と話が分かる女神様だった。

 いきなり放り出されたと思ったけど、ちゃんとケアもしてくれる良い女神様かもしれない。

 信仰の対象にされても不思議じゃないな!


「それじゃあ伝えたいこと伝えたし、隔離世の狭間に帰るよ。またねー」

「ウルシア様!?」


 なお、リコレットは涙目になってウルシアのいた地面を叩いていた。

 ……うん、まぁ、そうなるよね。


 ごめん。やっぱりあの女神はろくでもないわ。

 そう心の中で謝って俺はリコレットの肩を叩いた。

 ――その時だった。


「あ、そうそう言い忘れてた。夜のお世話もして良いよ。子供が出来たら祝福しにくるね」

「ウルシア様ああああ!?」


 おい空気読め!?

 ほんとろくでもない女神だな!?

 リコレットの俺への警戒心がすげー上がったじゃねぇか!?

 おかげであらぬ誤解を解くのにすげー時間がかかったよ。

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