俺の妹はミステリー 〜過去編〜
俺の妹はミステリー 〜過去編〜
この話だけでも十分理解出来ますが出来れば
俺の妹はミステリーの方も読んでみてください。
おれの妹、美優は幼い頃から身体が悪くずっと入院をしていた。そのため中学校も数えるほどしか行くことができなかった。そんなある時、クラス委員の真奈香があまり来ていない美優のことを心配し見舞いに来てくれた。最初はあまり話さなかったが見舞いの回数を増やす毎に仲良くなっていった。
「今度一緒に学校に行こうね」
そう真奈香と約束するまでになっていた。さらにその1週間後に外泊の許可が下りるほど回復し中学校に行った。
しかし美優にとって1日学校に行くだけでも大変でその次の日また体調を壊してしまった。
「ごめんね、私が無理に学校に連れて行ったから」
真奈香は自分のせいで体調を崩したと思い責任を感じてしまった。
「大丈夫だよ」
そう美優は言ったが真奈香がそれ以来姿を見せなかった。そのため美優が笑顔を見せることが減っていってしまった。
「こ、こんにちは」
その代わりに連れて来たのが神山だった。
「美優、俺の友達の神山だよ、前話したよね」
俺はよく神山との出来事を真奈香に話してあげていた。
「僕はどうしたら」
神山が俺に耳打ちするが頑張れと言い、任した。
「トランプできるよね」
俺は神山の提案に感心した。何気にしっかり考えていたのか。
「海斗もやろ」
神山が俺の返事を聞く前にカードを配り始めた。美優はベットの端に座りトランプをするスペースをつくる。
「ババ抜きで良いよね」
美優が表情変えずに頷く。ペアのカードを捨てババ抜きが始まった。最初は重い空気でどんよりしていてやりずらかったが回数を増やす毎に楽しくなってきた。
「これかな」
美優が神山の手札から何を取るか真剣に考える。
「どうかな」
神山はそんな美優を見ながらにやにやする。
さらにいやらしく1枚のカードを勧める。
「じゃあ、そのカード!」
美優は勧められたカードを手に取ると表情を歪める。どうやらババを引いてしまったようだ。
「お兄ちゃん、これをオススメだよ」
今度は美優が笑顔で俺に一枚のカードを勧める。可哀想だが俺はそのカードを引かず隣のカードを引く。
「え!? 」
俺が手にしたのはジョーカーだった。美優の策士に俺はまんまと引っ掛かってしまったようだ。俺が悔しがると美優がバカにしてくる。
「お兄ちゃん、私はそこまで馬鹿じゃないよ」
そんな感じでゲームは進んでいった。美優が本当に楽しそうにしている様子を久しぶりに見れて俺は安心した。しかしそれを遮るように美優の点滴の時間になった。
「じゃあ、僕は帰るね」
そう言い神山は帰っていった。
「ねえ、お兄ちゃん、まな、元気してるかな」
美優が点滴をしながら俺に尋ねる。よく美優は真奈香のことが心配で何度も尋ねてくる。俺はそんな美優の想いを叶えてあげたいが俺自身真奈香と会っていない。
そんなある日、俺は偶然真奈香と道端で出会った。俺はこのチャンスを失ってはいけないと思い話しかけた。
「真奈香! 」
声が大きすぎたためか周りの人も俺に注目する。当然真奈香も俺に気づき振り向く。
「美優が待っているから来てくれないか」
真奈香は答えない。行くか迷っている感じがした。
「よし、今から行こう」
そう言い俺は病院に向かった。後ろから何も言わずに真奈香もついてきた。真奈香自身もこのままは辛かったのだろう。
「美優な、いつもまな、元気かなって心配してたから会ったら喜ぶだろうな」
「……」
答えはなかったが俺は美優のことについてたくさん話した。20分くらい話したところで目的の病院に着いた。
「どうした」
病院に入ろうとした時に真奈香の足が止まる。
「やっぱりごめんなさい」
「大丈夫だよ」
俺はどうやればこの一歩を踏み出させることができるのか悩んだ。
「まな! 」
病室から俺たちのことを見えていたのか美優が現れた。俺も真奈香も驚いた顔をした。
「見舞いに来てくれたの!ありがと!」
美優はそう言い真奈香の手を引き病室に連れて行く。
「ババ抜きやろ、私、強いんだよ」
そう言い有無を言わせずにトランプを配る。真奈香はベットに腰掛け配られたカードを渋々手にとる。
「美優強いから、甘く見ないほうが良いよ」
俺もベットに腰掛けカードを受け取る。
「私からカードひくね!」
そう言い美優が真奈香のカードを引く。次に真奈香が俺のカードを引く。そして俺が美優のカードを引く。
「このカードがオススメだよ!」
美優が真奈香にお気に入りの戦略をやる。
真奈香がどれにしようか悩んでいるようでオススメのカードを手に取ろうとし止め、別のカードを取ろうとした。しかしオススメのカードを取るということが捨てられないのかオススメのカードを手にしようとする。
「どーする、どーする」
美優が笑顔でむかつくことを言う。
真奈香は悩み、オススメのカードを引く。その結果顔を歪ませたのは美優だった。対して真奈香はドヤ顔をする。その顔が可笑しかったのか二人とも笑いあった。僕もつられ笑ってしまった。ほんとに心から笑っているようで幸せそうだった。
「あー、久しぶりに心から笑ったー」
美優はベットに手を大きく広げ大の字でベットに横になる。真奈香も私も、と言い大の字ではなかったが横になる。
「元気してたー」
「してたよ」
「私、また学校に行きたいな」
美優がぽつりと言う。
「いいねー、学校で待ってるよ」
「うん、待っててね、こんな感じでみんなと話がしたい」
横になりながら二人は話し続ける。
「やっぱり私がいない間、寂しかった? 」
「そんなことないよー」
美優が強がる。
「うっそだー」
真奈香がからかう。
「 けどちょっと病院の夜は怖いかな」
恥ずかしそうに美優が白状するが今度は美優が真奈香に尋ねる。
「けど真奈香も部活で夜まで残ってたら学校怖いでしょ」
「怖くないよ」
「うっそだー」
美優が真奈香の真似をし笑い合う。ほんとに楽しそうだった。
「今度、学校に忍び込んで七不思議の謎調べない、こわいぞぉ」
真奈香がベットから起き上がりお化けの真似をする。
「いいね、やろやろ、その時はお兄ちゃんも祐樹さんも連れて行こ」
「俺もか」
「いいね!」
美優も起き上がった。そして何時間も話し続けた。それが最期の会話だとは思わずに。
事態が変わったのはその日の夜中だった。
静かな病院内は一つのコールによって騒がしくなった。何人ものの看護師や医師が病室を行き来する。俺も病院から呼ばれすぐに向かった。
「お兄さんですか」
俺は看護師に呼ばれ美優のそばに寄る。美優は昼の様子が嘘だと思えるほどになっていた。ベットで横になり酸素マスクをつけ必死に生きようとしている。
「おにい……ちゃん」
か細い声で俺を呼び見つめる。
「なんだ」
俺はできる限り優しい声で答える。
「いままであり……がとね」
その言葉で俺は抑えていた涙が溢れる。
「泣か……ないで」
美優がからかうように言おうとしてるがうまく言えていない。
「泣いてないよ」
俺は強がるが溢れる涙は止まらない。
「頑張って」
「大好きだよ」
「いつも見てるよ」
「彼女作ってね」
美優は残された時間たくさん俺に言葉を残した。
「それとはやく死なないでね」
その言葉を最期に何も言わなくなり病室に電子音だけが悲しく響く。
美優は学校に行くという約束を果たすことはできないまま旅立った。