山小屋
「山に登りに行こうぜ」
治が言い出した。一旦言い出したら聞かないヤツだ。俺達の中ではリーダー格で、俺、昭も何かと頼りにしている。この場にはあと健史もいた。健史が、
「山登りたって俺登った事ないぜ。」
治がニヤニヤしながら、
「いやいや本格的な物ではなくて、まぁ、ハイキングだな。言うなれば。」
俺もハイキングなら軽い物だと思い賛成した。
「何処にハイキングいくのよ?」健史が聞いた。
「今週末、隣の町の山開きがあるだろう? その山だよ。」
俺も今週末なら何も用事が入ってないので、実現に向けて真剣に話し出した。
「あの山、頂上に行っても携帯使えるのかな?」
「あまり高い山でも無いし大丈夫じゃないか?」治の見解だ。
三人で週末にハイキングに行く約束をし各々家路に着いた。
当日俺達は、待ち合わせの場所に集合し車に乗り出発した。
「今日良い天気で良かったな。」 治が俺達に言った。
山に着き車から降り三人ともリュックを背負い山の中に入って行き、とりあえず道らしきものがついていたのでその上を歩いた。
たわいも無い話をしながら楽しくハイキングを満喫した。
すると突然雷がゴロゴロ鳴り出し案の定雨が降ってきた、尋常じゃない凄い勢いだ、俺達は、勿論傘など持ってきていない、尚且つ軽装なので取り合えず雨にあたらなくてすむ場所が
ないか探し回ったが、そんな所も無くどんどん山深い所に入ったようだ。
「ここ何処だ?」健史が心配そうに言った。
「大丈夫だ、麓からそんなに遠くないはずだ。」治はあえて強がって言った。
「今日は帰った方が良いんじゃないか? 雨で濡れてるし風邪ひくぞ」俺は二人に言った
「そうだな、日を改めてやり直すか。」治が俺達を見て言った。
三人は帰る事にした。しかし思ったより山深い所まで来ていて帰り道が解らない。日は暮れだし体力は奪われ三人共イラ立っていた。
「なんだよ携帯圏外じゃないか。」健史が自分の携帯を見て言った。俺達も自分の携帯を確認する、やはり圏外だ。
「治、どうしてくれるんだよ、遭難したかもしんねぇぞ、なんとかしろよ。」健史が治の胸ぐらを掴み殴り掛かろうとした、俺はとっさに二人の間に割って入り、
「争ってる場合じゃないだろう、なってしまったものは仕方ないじゃないか、みんなで協力して家に帰ろう。」
「治ゴメン、悪かったよ、昭もう大丈夫だ。」健史は冷静さを取り戻した。治も、
「よしみんなで家に帰ろう、力を合わせよう。」三人は団結をし、ただ無事に家に帰る事だけを考えた。
しかし、行けど暮らせど現在地が解らない、日もとっぷりと暮れ暗闇に包まれた。そんな中、地獄に仏のような出来事があった。
「あれ? あそこなんか光って無いか?」治が見つけた。
「あそこに人いるんじゃ無いか?取り合えずあそこで今夜泊めて貰おうよ」健史が治の肩に手をかけながら提案した、俺も賛成だ、治も、
「そしよう、なんとか助かるかも知れない、よし急ぐぞ。」
そこに山小屋があった、光っていたのは窓から見えた明りだった。治が扉を叩いた。
「すいません道に迷ってしまい今晩一夜の宿をお願い出来ないでしょうか?」扉がギィーと開き七十台くらいのお爺さんが出てきた。
「道に迷った?それは大変だね。ここら辺は余程詳しくないと往生するんだよ。」
「今晩泊めて貰っていいですか?」治は言った。すると爺さんは、
「すまないが駄目だ。」もう後がない俺達は引き下がる事もできず健史が、
「どしてですか?僕達は悪いヤツでは有りません、なにか理由があれば言って下さい。」
「う〜ん実はうちには若い孫娘がいる、見た所あんた達は若い若気の至りで結婚前になにか有ったら大変だ。」
「大丈夫です僕達は変な事しません、神に誓えます。お願いします。」治は必要以上に頭を下げ懇願していた。たぶんこのハイキングの責任を感じてるのだろう。
「本当だな? よし君たちうを信じよう中に入りなさい。」爺さんは俺達を山小屋の中に入れた。孫娘がいた、予想していたより美人ださっきの約束さえ忘れるくらいの。
「君達は奥の部屋で寝なさい。」俺達は奥に通され雑魚寝した。
「いやしかし、あの孫娘キレイだな。」健史がどうにかならないものかという感じを出して言った。
「おい健史約束だぞ、泊めて貰うだけで有り難いのになに言ってんだ。」治が戒めた。
「はいはい、解ってますよ、明日朝いちで家に帰ろう。」疲れてたのかその後話しをすることなく眠りについた。
朝になり俺達は身支度をし、爺さんにお礼うを言って出ようとしたが、爺さんの姿が無い、孫娘に聞いて見ると出かけているようだ。俺達は魔が指した、その孫娘に手を出してしまっ
た。手を出してる最中爺さんが帰ってきた。
「貴様ら殺してやる。」手には猟銃を持っていた。俺達は土下座をしありとあらゆる言葉を使い許しを乞うたが聞き入れて貰えなかった。治が、
「なんでもしますから、助けて下さい。」
「本当になんでもするか?」爺さんが食いついてきた。ここぞと思い治は、
「はい、なんでもします、お願いします。」すると爺さんが、
「この山で生っている果物を一人ひとつずつ持って来い、そうしたら考えんでもない。」俺達三人は蜘蛛の子を散らすように探しに出た。
最初に見つけ戻ってきたのは健史だった。
「ぶどうを見つけて来ました、助けて下さい。」爺さんは健史に猟銃を突きつけ、
「ケツの穴に入れろ。」
「はい?」
「だからケツの穴に入れろ。」声を荒げて爺さんは言った。
「いやケツの穴ってそんな・・・」
「ケツの穴に入れないとこの猟銃で撃ち殺す死にたいのか?」
健史は死にたくないのでそのぶどうをケツの穴に入れ始めた、ぶどうといっても馬鹿には出来ず死に物狂いでケツの穴に入れた。
「よし助けてやる、とっとと出て行け。」健史はパンツをはく事も忘れて出て行った。
次に戻ってきたのは俺だ。
「りんごを見つけました。」爺さんは先ほどと同じく俺に猟銃を突きつけ、
「ケツの穴に入れろ。」
「待ってください、こんな物入るわけ無いでしょう? なに考えてるんですか?」
「なに考えてるのはそっちの方だ、かわいい孫娘を・・・」俺は申し訳ないのと、死にたくないという葛藤の中で、りんごをケツの穴に入れ始めた。
今までこんな事があっただろうか?いい思いも悪い思いも全部吹き飛んだ、頭の中はりんごでいっぱいだ、りんご、りんご、りんご、窓に手を掛けガラスを掻き毟りながらあと少しで
入る所だった。その掻き毟っているガラスの向こう側に治がいた、俺はそれを見たとたん吹き出してしまいりんごを落とした、一緒に命も。
あの世に行き俺は閻魔大王の前にいた。閻魔大王が、
「あの時どうして吹き出したんだ?」
「だって治のヤツスイカ持って来たんだもん、しかもニコニコしながら。」