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紛失


「よう青年! 我がテニス部に入って青春しないか! きっとモテるぞ!」

「いや、野球部に来い! 今年こそ甲子園に行けるぞ!」

「体育会系は汗臭いし体がもたないぞ! 時代は今や理系男子! 天文学部に是非!」

「理系と言えば物理だろうが! 物理部バンザアアアアアアイ!」

「こんな五月蠅いやつらと部活をしていれば鼓膜がいくつあってもたりませんよ。どうです? 我が囲碁部に入って静かに五目並べをしましょう」


五月蠅い。非常に五月蠅い。体育会系、文科系を問わず、五月蠅いことこの上なかった。


それになぜか必要以上に体を触ってくる。合気道部の髭を蓄えたむさくるしい上級生が僕を背後から鷲掴みにした。柔道着を着たハゲの人は、殺気と見分けのつかないほどの豪気を僕に放ちながら襟を掴みかかった。

生物部の人は謎の赤いシミがついたメスを握り、化学部はなんとも表現しがたい色の液体が入った丸底フラスコを持ちながら右側から距離を詰めてきた。

将棋部に至っては香車の駒を執拗に僕の額に当ててきた。


これは新手の拷問なのだろうか。

それともこれはすべての新入生が通る道なのか? 

と思ったが、僕以外の新入生が普通に群衆を通り抜け、校門をくぐるところを目撃した。なぜだ。なぜ僕だけ。


適当に腕と足を振り回した結果、僕の周りに群がっていた上級生を払いのけることに成功し、ようやく校門の外に出ることができた。

さすがに学校の外にまで追ってくる人はいなかった。

僕は最低限の身だしなみを整えて、すぐ近くにある地下鉄の出入り口を目指して歩を進めた。


「死ぬかと思った……」


高校入学式、部活の勧誘で新入生死亡。などというニュースが全国放送されたら、いい笑いものだぞ。

僕は地下鉄の改札付近に来ると定期券を取り出すために左肩に掛けていた鞄のファスナーを開けた。


入学式なので鞄の中は殆どないと言ってもいい。

僕は鞄の中を漁ると、入学式の式次第、自己紹介後に配られた今後の予定などが書かれたプリント類、そして筆箱が入っており、あとは何もなかった。



定期券を入れていた財布さえも



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