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入学

 僕と彼女が初めて出会ったのは、入学式の日である。


僕が入学した「私立三島大学附属豊川中学・高等学校」は、名前の通り中高一貫高校。三島大学の知名度はそこそこと言ったところ。この学校の売りは、最寄りの地下鉄の駅から徒歩三十秒という立地と、去年完成したばかりの新校舎だ。ただ残念ながら新校舎は高校用で、中学の校舎は築四十年程のボロ校舎だ。

そのせいなのか偏差値は中の下でそこまで人気のある学校と言うわけではない。僕もこの学校に入る気なかったし。

高校受験で成功していればもっといい高校に行けたのに、というやや遠回しな自虐をしつつ、僕は校門をくぐった。


新校舎に入ってすぐの昇降口の近くに一年A組からF組までのクラス名簿が大きく貼り出されていた。そしてその周りには多くの新入生がたむろしており、かなり暑苦しい。あまりに多いため、出席番号が後半の人たちが書いてある下の方が見えないほどだ。まぁ自分の場合、出席番号一桁が確定しているのでさしたる問題ではないのだけど。自分にこんな名字をつけてくれた人に心の中で少し感謝した直後、自分の名前を見つけることができた。

大きく「F」と書かれた文字のすぐ下に、自分の名前と受験番号が書かれていた。


「1 赤川 大地」


1、ということは出席番号一番ということだろう。二番は岩木さんなので、「あ」から始まるのはクラスで僕だけだな、と割とどうでもいいことを考えていた。


自分の名前を見つけることができたので、こんな満員電車の中のような混雑からさっさと抜け出すことにした。知り合いが入学したという情報は聞いていなかったし、いたとしてもさして興味がなかった。


「1-F」と書かれた教室に到着すると、すでに席はだいぶ埋まっていた。入学式と言うこともあるのだろう、みんな早くに家を出たに違いない。埋まっていないのは自分が座るのであろう一番廊下側の列の一番前の席と、一番窓側の列の後ろ二つの席だけだった。


自分の席に着いた時、目の前にある扉から最後の生徒と思しき二人組が入ってきた。

一人はポニーテールで、いかにも体育会系っぽさを感じさせる凛々しさがある女子。

そしてもう一人は綺麗な黒髪で腰にまで届く長い髪を持った、「深窓の令嬢」という言葉が似合いそうな女子。


彼女らは手をつないでおり、二人はどんな関係なのかが興味があった。しかし、そんな些細な疑問にいつまでも構っていられなかった。令嬢然とした方の女子が薄い色のサングラスをかけ、そして「白い杖」をついていたからだった。


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