表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/73

第25話兎の国のお姫様 後編

 突然俺の前に現れたのは、フォルナの友人のモカという兎の少女。しかも彼女はある国の王女だと言うのだからこれまた驚き。


「フォルナの友人の幅って、恐ろしいな」


「私もそれを知った時は驚いた」


「まあ、そうだろうな」


 いきなり王女だと名乗られたら、驚くのは当たり前。まあ、それが本当なのかをまず疑うけど。


「とりあえず村に戻って、ルチリア達にも話を聞いてもらうか」


「元からそのつもりだった」


「つまり買い物はついで、だったんだな」


 彼女には一度市場での買い物に付き合ってもらった後、安全のため一度村へ戻ってゆッくり話を聞く事にした。匿うのならポカルミ村が一番だと思ったからだ。


 で、その道中、もう少しだけ彼女から事情を詳しく聞いてみる事にする。


「それでモカさん、どうして一国の王女の君がこんな所まで逃げてきたんだ?」


「モカでいいですよ。カエデさん。ここにいる以上は王女でも何でもありませんから」


「だったら俺もカエデでいいよ。それで質問に答えてほしいんだけど」


「あ、ごめんなさい。実はですね」


 そうモカは前置きするとここまでの経緯について、簡単に説明し始めた。


「反乱軍による制圧?」


「はい。只今ラビリンズ王国は国の反抗勢力によって支配されようとしているのです。どの理由を持って彼らはそれらを行っているのかは存じませんが、確実に私達の国は危険な状態にあります」


「それでせめて王女の安全だけでも、って事か?」


「はい。実は少し前からその身分を隠しながらここで暮らしていたのですが、やはりそれでも危険はあり逃亡の毎日を繰り返していました」


「そこでフォルナに出会ったのか」


「そうです。彼女には一度助けてもらった事があり、私の命の恩人でもあるんです」


 モカの説明はすごく分かりやすく、大筋の事は俺も理解できた。それにしても意外だったのが、


「フォルナでも人助けするんだな」


「それ、すごく失礼」


「悪い悪い、冗談だって」


 ともかく匿ってほしいという事は、現在進行形で彼女は命を狙われているという事だ。そんな彼女を俺も簡単には見捨てる事はできない。


「でも何で俺に頼んだんだ? ルチリアでもよかったのに」


「カエデの方が頼みやすかった。それにカエデは、獣人と人の間の和睦を目指してるから、いい機会になると思った」


「そこまで考えてたのか。まあ、一つのきっかけにはなってくれるけど」


 でもそれで追っ手の獣人達を倒してしまったら、元も子もないのでは、と思う。その辺の事は村に戻ってから話すとして、


「なあモカ、匿うとは言ったけどさ」


「どうかしましたか?」


「もうバレバレなんだけど」


 既に敵の気配が周囲からしているこの状況をなんとかしないと。


「フォルナ」


「うん」


 襲ってくるであろう敵に対して、俺達は武器を構える。だがそれよりも先に動く影があった。


「やー!」


 目にも留まらぬ速さで動くそれは、周囲に隠れていた敵を瞬殺して、俺達の元へと戻ってきた。


「あ、あのモカさん、今のは」


「あ、一つ言い忘れてました。これでも私、最高速度三十キロの速さで移動できるので、それを生かして敵を倒す事ができます」


「それってもはや、匿う必要ないよな?!」


 兎の国お姫様は、想像以上に戦闘力に長けているお方でした。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 かくして無事にポカルミ村へと帰還した俺達は、モカと共にルチリアの元へ。


「あ、おかえりカエ……って、何でモカ王女様がここに?!」


 モカを連れて帰ってきた俺達を見て、ルチリアは座っていた椅子から転げ落ちた。


「何だ知っているのか?」


「し、知っているも何も超有名人よ! もしかしてカエデ君、誘拐を……」


「決して違うからな!」


 とりあえずルチリアに一通り説明。最初は驚いてばかりいた彼女だが、話を聞くにつれてその表情は変化していく。


「つまりモカ様は、しばらくの間匿ってほしいと」


「ご迷惑でしょうか?」


「そ、そんな滅相もない。わ、私達でよければ力になります」


「ありがとうございます。それであなたの名前をお伺いしてよろしいでしょうか」


「る、ルチリアといいます。こ、今後ともよろしくお願いします」


 全てが敬語になるルチリア。街でも噂されているくらいなのだから、やはり超有名人なのだろう。だからルチリアの反応も当然なのかもしれない。


(とんでもない人に出会ったな俺)


「それでモカはどこに寝泊まりしてもらう? 匿う以上は一人にするわけにもいかないし」


「うーん、とりあえず一番安全なのは私達の家かな。他は何となく危なさそうだし」


「一つの家に三人か」


 何だかまた騒がしくなりそうだな。というかそもそも、フォルナが乗っ取りさえしなければ、俺には俺の家があったんだけど。


「という事でモカ様は、私の家にお泊まりください。家にいる以上は安全だと思いますので」


「分かりました。それではよろしくお願いいたしますね、お二人とも」


 という事で、しばらくの間とはいえ一国の王女が俺達の村で暮らす事に。その後ミルフィーナ達の家も回ったのだが、皆同じような反応をしていたのは言うまでもない。


「カエデ君、モカ様に手を出したりなんかしたらタダじゃおかないからね」


「そうだぞカエデ。モカ様も何かあったら、どんどん言ってください」


「私達がお守りいたしますからぁ〜」


「どんだけ信用ないの俺?! あと、どちらかというとミルフィーナの方が危ないからな!」


「楓、何かあったら私もデストロイするからね」


「怖っ! デストロイって何だよ雫」


 まあ、色々な意味で怖い村だけど、きっと守れるよな。多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ