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第22話同族の溝

 遺跡の発見、雫との再会から数日。俺はルチリアとフォルナを連れて、あの遺跡の中にある古代都市(みたいな場所)にやって来ていた。


「ここに街が昔存在したみたいな話はなかったのか?」


「ううん。私は初めて知った。フォルナちゃんは?」


「私ここに住んでいた」


「俺逹とあそこで会うまでか?」


「うん」


「でも気づいたらここにいたって、この前言ってなかったか?」


「だから気づいた時にはここにいて、他の獣人達と暮らしてた」


「何というか不自然極まりないよなそれ」


 以前同じことを言っていたけど、気づいたらいたって言葉は不自然にもほどがある。まるで誰かが意図的にフォルナを、いやフォルナ達をこの遺跡に住まわしたみたいだ。


(でもいかにも古臭いここを知っている奴なんているのか?)


 もし仮にここを知っている者がいるとしたら、その人物がこの遺跡の真実を知っている者なのかもしれない。一体何がどうなってるんだ。


「それにしても相変わらず広いね、ここ」


「だな。全部調べ終えているけどまだ何かありそうだよな」


「そうだけど、あらかた調べたから何もないかもよ?」


「さらに地下に進む?」


「うーん。それもいいけど、何かまだ調べ足りない気がするんだよな」


 一回目に訪れた時は、雫との再会の事があってもっと詳細には調べていなかった事もあるし、これだけの広さなのだから何もないっていうのも少し変だと思う。


「カエデ君、あれ」


 どうしようか考えていると、ルチリアが何かを指差して俺に声をかける。そこにはどこか見覚えがあるものがあった。


「これって」


「私知らないけど、カエデ君は分かるの?」


「分かるけど、どうしてこれがここにあるんだ」


 そこにあったのは日本の歴史とかで出てきそうな昔の車。長い間放置されていたからか、ほとんど形を保っていないがそれだと認識できる。使う事はできないだろうけど、それは問題ではない。


「これ俺逹の世界にくらいしか存在しないものだぞ」


「え? それがここにあるって事は……」


「間違いない。昔から俺や雫のようにこの世界に来ている人がいたんだ」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎


 昔から人と獣人達との合流があったのは俺も予想していなかった。しかもその形跡がこの遺跡の中にあるという事は、やはりここはただの遺跡ではないらしい。


「カエデ、何かいる」


 車を見ているとフォルナが俺を呼ぶ。先程から自分も感じていたが、誰かに見られているような気はしていた。だけどその姿はどこにも見えない。


「フォルナは見えるのか?」


「カエデは見えないの?」


「ああ」


 辺りを見回してみるが、やはり何も見えない。ちなみにルチリアは匂いだけは何かを感じているらしい。


「見えない以上諦めるしか」


 とりあえず無視をしようと思ったが、遠くの方から足音がした。しかも複数。


「誰か来る」


 警戒してそれぞれの武器を構える俺達。そしてその足音ががすぐそこまで来たところで、俺はある事に気がついた。


(この音もしかしたら複数の場所から)


 包囲された事に気づいた時には、既に多くの獣人達に囲まれていた。


「フォルナよ、まさか人の手に堕ちているとはな」


 その中でも一際目立ったのが、フォルナと同じような馬人間の獣人。見たところによるともしかしたら親子なのかもしれないり


「別に堕ちてなんかいない。そっちが勘違いしているだけ」


「我が娘からそのような言葉を聞く事になろうとはな。実に悲しい」


「私はあなたの娘でもなんでもない」


 フォルナとその父親らしき男が淡々と会話を続ける。どうやらフォルミナが俺逹の所で暮らし始めたのにも何か意味がありそうだ。


「あの、話しているところ悪いんだけど、何で俺逹は囲まれているんだ?」


「黙れ人間。どこから紛れ込んだか知らないが、我々の島に足を踏み入れるなど、普通はあり得ない話だ。さっさとこの世界から消えるか、今ここで死ぬかどちらかを選べ」


「何が理由でそんなに人間を嫌っているか知らないけど、俺があんたらに何かしたか」


「していないがここにいる事が罪なのは変わりない。大人しく消えるんだな」


 そう言いながら俺に弓を構える男。どうやらあちらは話を聞く気すらないらしい。


「やめて、カエデは悪い人間じゃない」


 すかさず俺の前に出るフォルナ。人の家を乗っ取ったり燃やしたりしている奴が言える台詞ではない気がするが、そこは気にしないでおこう。


「お前も邪魔をするというなら、たとえ娘でも撃つぞ」


「構わない」


「そうか、残念だ」


 そう言いながら男が矢を放つ。しかしそれはフォルナの手前で何かに弾かれていった。


「どなたか存じないけど、私の仲間に手を出すのはやめてくれません」


 弾いたのはルチリアだった。その言葉からはいつも以上に真剣味感じる。


「お前はあの小さな村の村長か。よくものうのうとここにいられるな」


「余計なお世話よ。それより私達別に戦いに来たわけじゃないんだから、武器を向けるのはやめてくれない? もしこれ以上手を出すなら、島長に連絡するけど」


「ふん、罪人が人に罪を問えるのかと不思議だが、そこまで言うならここは見逃そう。だが次々遭遇した時はタダじゃ済まないからな」


 男はそう言い残すと、多くの獣人を引き連れて、どこかへ消えてしまった。緊張の糸が切れたせいか、俺は思わずそこに座り込んでしまう。


「何だったんだ今のは」


「私と同族の獣人達。でも、仲間だなんて思ってない」


「まあ、今の会話見る限りそうだろうな」


 フォルナの父親らしき男は明らかに人間を嫌っていた。だから俺と一緒にいるフォルミナが許せなかったのだろう。でもフォルミナは彼らを仲間と思っていない。それはつまり彼女は……。


「もしかしてフォルナ、人間好きなのか?」


「……」


 俺の問いに彼女は何も答えなかった。でもあの時フォルミナは確かに俺を悪い人間じゃないと言っていた。それってやっぱり……。


(何か複雑だな……)


 人と獣人達との明らかな溝を俺は改めて思い知らされ、俺は内心複雑な気分だった。

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