04.~僕って勇者なの?~
実はひっそりタイトルを変更していたりします><;
「あの、僕の話を聞いてもらえますか? 僕も信じられないんですけど、でも本当に起きたことで」
僕は自分に起きた信じられないことについて、とにかく誰かに聞いてもらいたかった。
「ああ、かまわない。むしろ私たちの方が君の話を聞きたいくらいだ」
「そうだな」
よかった。
二人とも僕の話を聞いてくれるみたいだ。
「えっと、まず自己紹介を。僕の名前は新見荒太と言います。新見が名字で、荒太が名前です」
「何だ? アラタは貴族だったのか? 名字って、つまり家名のことだろ」
「まあ待ちたまえ。まずは一度彼の話を一通り聞いてみようじゃないか。質問はあとで纏めてした方が彼も話を進めやすいだろう」
男の人が僕の名前について質問してきたが、女の人がそれを止めて僕に話の続きをするように促す。
なので僕は話を続けた。
「とりあえず、僕は貴族じゃないです。出身は日本という島国で、ごく一般的……いや、ちょっと親は特殊ですけど、僕自身は学校に通う普通の高校生です。――そして、どうやらこことは違う世界から迷い込んでしまったみたいで……」
そこでいったん区切って、乾いた唇を舌でひと舐めして続きを話す。
「僕は今朝いつも通り目を覚まして布団から起きました。そのあと朝食を食べて、学校向かうための用意をしてから家を出ました。そして……凄い風が吹いて目を瞑って、次に目を開けたら知らない場所に立ってました。その時に目の前に立っていたのが」
「俺って事か」
「はい、そうです」
「ふむ……」
僕が『目の前に立っていた』の辺りで男の人を見ると、話のバトンを受け取るように続けてくれた。
その話を聞いて、女の人は椅子に座ったまま足を組んで、腕を組んで何か考えるように目を瞑る。
「にわかには信じられない話だが、どう思う?」
「そうだね。普通なら信じられないだろう」
「あの! 僕は嘘なんか吐いてないんです! 本当なんですっ!」
僕は必死に女の人に訴えかけた。
すると女の人は笑顔を浮かべてちょっと待てと言うように、僕に向かって掌を向けて手を伸ばした。
「言っただろ? 『普通なら』信じられないだろうって。今回のは明らかに異常だからね」
「おいおい、じゃあアラタの話を信じるって言うのか? 怪しすぎるぞ」
「聞き覚えはないかい? 言葉が通じない人間が、私たちの知らない場所――世界から、突然現れるって話をさ」
「ん? そう言われれば、何だか聞いたことがあるような? 無いような?」
「まったく。体ばっかり鍛えて勉強の一つもしないから、そんな軽い頭になっちまうんだよ」
女の人は男の人の反応に、ヤレヤレと言わんばかりに溜息を吐いて首を左右に振った。
「なにおう! 今の言葉は聞き捨てならんっ、これでも騎士団一の石頭で頭突きも凄い威力なんだぞ! そんな頭が軽いわけ無いだろうっ」
「いやいや、さっき言った意味はそういうことじゃないんだけどね」
どうやら男の人はちょっと天然系みたいだ。
鍛え上げられた肉体を持つ中年男(天然系ボケ属性)って、いったいどんな層に需要があるんだろう?
まあ需要があること前提に考えたくもないけど。
「まったくしかたないね。いいかい? 私が言いたかったことは、さっきの少年の話はまるで『絵本に出てくる勇者様』みたいじゃないかって事だよ」
「ん? おおっ! そう言われてみればそうじゃないか。まるでお伽噺の『異界の勇者』みたいな話じゃないか」
「『異界の勇者』ですか?」
「そうさ。さっき君が話した事は、まるで私たちの知る絵本に書かれている勇者が現れた時の状況そっくりみたいなんだ」
女の人はざっと簡単にその物語のストーリーを教えてくれた。
物語は千年以上前に実際にあったことがモデルとなっていて、その当時、大陸全土で暴虐の限りを尽くしていた邪龍が存在した。
大陸に存在した大小多くの国は力を合わせて邪龍を討伐しようと、軍を邪龍に差し向けるが倒すことは叶わず、人々の被害が増える一方で手を拱いていた。
そして突如として大陸の真ん中に勇者が現れた。
勇者は自分の事を『この世界とは違う世界からやってきた』と言っていた。
勇者は強い力を持っていて、邪龍に苦しむ人々に協力し共に戦い、最後には見事に邪龍討伐に成功した。
「――と、ここまでがどの勇者の物語を綴った本に共通する話となっている」
「ちなみにだが、邪龍討伐後の勇者については詳細がわかっていなくてな? 『元の世界に帰った』とか『国を作った』とか『力を使い果たして亡くなった』とか、いろんな説があって学者共は今でも研究しているらしいぞ。ちなみに俺は『元の世界に帰った』と思う」
なんてベタな物語なんだろう。
邪龍――ようするに悪いドラゴンのことだろう――を退治する勇者とか。
………ん?
待てよ。
「それじゃあ、もしかして僕は『勇者』なんですか?」
僕は勇者なのかなんて質問、日本で実際に誰かに聞いたりでもしたら、ほぼ間違いなく正気を疑われちゃうだろうな。
でも女の人はいたって普通に答えてくれた。
「いや、残念だがその可能性はない」
「そうなんですか?」
「ああ、何故ならもう邪龍なんてこの世の存在しないからね」
「そうだな。もし邪龍そのもの、もしくはそれに近い存在が現れたとしたら、各国お抱えの魔術師が何かしら感知して、情報は騎士団にも入ってくるはずだからな」
じゃあ何で僕はこの世界に来てしまったんだろう?
あ、いや、別に戦いたい訳じゃない。
僕はそんなに好戦的じゃないし、平和が一番だからな。
「とりあえず、今度はこちらから質問しても良いかな?」
「あと念のために持ち物も全部渡してくれ。アラタが危険な奴じゃないのは雰囲気でわかるが、ま、念のためな」
「なんだい、まだ検査していなかったのか? ちょっと不用心すぎやしないかね」
「言っただろ、雰囲気で悪い奴じゃないってわかったって。それにもし何かしようとしたとしても、それをさせる前に俺が片付けてたさ」
何やら物騒な話をしている。
さて、僕の話が終わったので、今度はあちらの二人の番だ。
女の人に勧められた椅子に座って、持っていた荷物を男の人が指し示した台の上に置いた。
お読み頂きありがとうございます。
今の職質のような絡みが終わったら、ギルド登録などにステージアップします。
もう少々お待ち下さい。