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15.~その頃街の様子は~

主人公視点は最後にちょっとだけ

 

 

 

 時間は少し(さかのぼ)り、アラタが仲間達を召喚した頃のこと。



 ――――――。

 ――――。

 ――。





 ギルドの中は物凄いことになっていた。



「おいっ、情報をよこせよ!」


「古龍が出たってホントなんですか!?」


「俺が聞いた限りこの街に向かって飛んで来てるって話だぞ」


「え? 俺は森の上で留まってるって聞いたけど?」


「討伐隊の編成はどうなっている」


「に、逃げた方がいいんじゃないかしら」


「けっ! 何が古龍だよ。大昔に絶滅しちまったって種族だろ。そんなやつの何が怖いんだか」


「お前はバカか。お前も冒険者の端くれならもっと勉強しておけ」



 原因はアラタが召喚した仲間達の中にいた、【夢幻飛龍】タケミカヅチだ。

 実は召喚の際に発せられた光に気が付いた狩人がいて、光の原因を確認しようとした時、空に浮かぶタケミカヅチを発見した。



「あ、あれは、『古龍』……なの、か」



 その狩人はタケミカヅチを見て驚きから棒立ちになったが、目の前に浮かんでいる古龍が降下してくるのを見て我に返り、手にしていた弓や今日の獲物を放り出し少しでも身軽になって、一目散にミリアスへと帰還した。



 そして自分が見たことを騎士団と冒険者ギルドに報告して―――今に至る。



 バタンッ!



「失礼する! ギルドの責任者にお取り次ぎをお願いしたい!」



 その声は喧噪で満ちあふれたギルドの中でも人々の耳に届き、さっきまでが嘘のように静寂が訪れる。



「私は騎士団長コウエン様の使いで参った! ギルド長にお取り次ぎを!」


「すまんがギルド長は今街を離れてるんだ。だから副ギルド長の俺がこの場の最高責任者だ」



 声を張り上げる騎士にジャンが近づいて行く。



「これはジャン様」


「様はよしてくれよ。背中がかゆくなるぜ」



 そう言って本当に背中を掻き始めるジャンに、騎士は『はははっ』と軽く笑ってみせる。



「それで何の用だ……ってのは、聞かなくてもまあ大体わかってるがな」


「恐らくご想像通りかと」


「こっちも今状況の確認作業中だ。とりあえずついてきてくれ」



 騎士は頷いてみせジャンの後に続く。



「おうお前等、もうちょっと待っててくれ。いずれにしても遅かれ早かれ、お前達の力を借りることになるだろうからな」



 ジャンは扉へと姿を消す前に、集まっていた冒険者達に向かって待機するように言う。

 それを聞いた冒険者達は文句を言うこともなく、それぞれどんな事態になってもいいように準備を始めた。



「――待たせたな」


「いえ、構いません。さっそくですがコウエン様からの伝言です。『騎士団は冒険者ギルドに対して、対古龍のために共闘を願い出る。詳細については城で話し合いの場を設けたい』――以上です」


「やっぱりな」



 騎士が取り出した書簡を読み上げ、それを聞き終えたジャンは腕を組んでドカッとソファに腰掛けた。



「グレガンは古龍を倒すつもりなのか」


「そこまでは自分は聞き及んでいません。ですが、『やられる前にやるしかない』と息巻く団員が多かったのも事実です」


「そいつらは古龍の恐ろしさを知らんのか、まったく……」



 ここで古龍についてお話ししておこう。



 この世界で間違いなくトップクラスの強さを持つのはドラゴンだ。

 だがそんなドラゴンよりも強かった者がいた。

 それが『古龍』だ。

 古龍はドラゴンとは違い蛇のように細長い体を持ち、短い手足がついていて自由自在に空を飛ぶという。



 古龍という通り、奴等はもうとうの昔に絶滅してしまっている。 

 原因は定かではないが一部の研究者が言うには、種族間でしか広まらなかった伝染病があったのではないかとのこと。

 そして絶滅したと言われる古龍だが、今なお目撃情報が出てくることがある。

 ほとんどは見間違いや出鱈目な与太話だろうが、それでも今なお人々からは恐れられている。



 そんな伝説上の生き物とも言えるドラゴンより強い古龍が、突然王都の近くに出現したというのだからそれはもう上から下まで大騒ぎになったわけだ。



「確か言い伝えだと古龍はかなり知能が高いはずだ。こちらから手を出すのはどうかと思うぞ。好戦的な俺が言うのも何だがな」


「その辺りも踏まえて一度騎士団の方へご同行願えますか?」


「ったく。しかたねぇな」


「ありがとうございます」



 騎士団と冒険者ギルドの仲は悪くはなかった。

 一部の貴族達が平民がほとんどである冒険者を、軽く見ている嫌いはあるが概ね問題は起こっていない。

 今回のように騎士団がギルドに、逆にギルドから騎士団に協力を要請することもままある。



「んじゃ今から準備する。それと、俺以外にも何人か連れて行きたいんだが」


「はい、勿論構いません。さすがにさっきあの場にいた冒険者全員とはいきませんが」



 騎士が言った冗談に少し笑ってジャンは城に出向く準備を始める。



 バタンッ! 



「じゃ、ジャンさん! 大変ですっ」


「なんだなんだ騒々しい。今お客さんがいるんだぞ」



 勢いよく扉を開いて入って来たのは、ギルド職員のジェーンだった。

 肩を上下している様子から、かなり急いで走ってきたのだろう。



「んで、どうしたそんなに慌てて」


「今、古龍が出たって言う森に、出向いている冒険者について、照会していたんですが、一人だけいました」



 ジャンは内心で舌打ちをする。

 危険かもしれない場所に自分のところの冒険者がいるのだから、副ギルド長として心配からきたものだ。



「誰だ? 確か今はあの森の依頼には高ランクの物はなかったよな。ということは低ランクの奴か」


「それなんですが」



 ジェーンは言いよどんでから、意を決して口を開いた。



「今森にいるのはアラタ・ニイミの一名だけです。この間の騒ぎのあの人です」



 ………………。

 …………。

 ……。 






 ~その頃の森~





「ほいほいほいっと」


「主、籠から外れてます。適当に投げないで下さい」


「主様、あまりそのように粗末に扱うのは如何なものかと」


「すみません。真面目にやります」


『グオッオッオッ』


「あははは~、怒られてる~」


「笑わないでよタケミカヅチ。それとマナリエラは手伝ってよ」



 地面に置いた籠目掛けてシロクキキノコを投げ入れようとしたら、見事に籠の縁に中って全部外れた。

 ティファニアとプリムラーナに注意されちゃったよ。

 そんな僕の様子をタケミカヅチとマナリエラが見ていて、二人に笑われてしまった。

 


 タケミカヅチは僕が斜面を滑り落ちた時の大声を聞いて、心配して木々の合間を縫うように体をくねらせて頭を持ってきてくれた。

 空を飛ばなかったのは僕が森の中にいるようにって言ったかららしい。

 タケミカヅチの頭の上にはマナリエラが乗っかってる。

 シロクキキノコの採取に飽きてしまったようだ。



「せっせっせっせ」



 今度はちゃんと籠に入れる。

 採取に夢中になっていた僕は、今この瞬間、街の方が大騒ぎになっていることに気付くはずもなかった。






お読み頂きありがとうございます。


次話では主人公と騎士団&冒険者ギルドの間で、一悶着あります。

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