14.~採取対象発見!~
「おーいそっちはあったかー?」
「見つかりません! アベルさん!」
「むむ、これか」
「え~っと、プリム? それ毒茸よ」
「見つかりませんね、主」
「そうだね~」
僕の周りではアベル、ブリッジス、プリムラーナ、マナリエラ、ティファニアがそれぞれ手分けして『シロクキキノコ』を探していた。
だけどまだひとつも見つけられていない。
『グオォォ』
「あ~、タケミカヅチはジッとしててね。窮屈だろうけど」
『グゥ……』
ちなみにタケミカヅチはシロクキキノコ探しに参加しないで、開けた場所に寝そべっていたりする。
理由は体が大きすぎるから。
目測だけど電車とか新幹線とかと同じくらいあるんじゃないかな?
タケミカヅチは長い体で蛇のように蜷局を巻き、それでもスペースがなかった部分はクネクネと木々の間に滑り込ませて何とか落ち着いている。
『グゥ……、グォオオ……』
「え? いやいや、気にしなくてもいいよ。『役立たずで済みません』なんて言わないで」
タケミカヅチは『グオオ』とかしか言わないけど、何故か言いたいことがわかる。
僕だけなのかと思ってみんなにも聞いてみたら、みんなも何となくわかるそうだ。
たぶんこの世界には魔法とかがあるから、そのせいなんだろうと納得しておいた。
「かぁー、腰がいてぇぜ。俺ももう歳か~?」
「そんなことないですよ! アベルさんはまだまだ現役ですよ!」
「ははははっ! そうかそうかジス坊っ、俺はまだ現役か」
「はい!」
アベルとブリッジスは父と子くらい年齢が離れて見えるけど、実に仲がいい様子でよく笑い声が上がってる。
なんでもスマホの中でもいろいろ一緒にやってるんだとか。
「マナ、これならどうだ? 今までにない茸だぞ」
「どこでどうやったらそんな毒々しさ一〇〇パーセントの茸を見つけられるのよ。逆に尊敬するわ、プリム」
「………」
「あぁ~ん、もう、そんなに落ち込まないで」
プリムラーナとマナリエラも二人で草木をかき分けて探していた。
時々プリムラーナが茸を見つけてはマナリエラが鑑定して、結果ことごとくそれが毒茸でプリムラーナが落ち込むという流れが出来上がってる。
二人は見た目『聖騎士』と『悪魔』なので相性が悪いのかと思ったけど、意外や意外、アベルとブリッジスのように良好な間柄だった。
これもスマホの中で(以下略)。
「主、もう少し奥に行ってみましょうか。どうやらこの辺りは少し前に動物がやってきた痕跡があるので、もしかしたらシロクキキノコは食べられてしまったのかもしれません」
「う~ん、そうだね。わかったよ。みんな~、僕とティファニア少しあっちの方に行くけど~?」
僕がみんなに声を掛けたら、プリムラーナとマナリエラも一緒に行くといい、アベルとブリッジスはもう少しこの辺りを探すことになった。
『グルルル』
「タケミカヅチはお留守番」
僕についていくと言い出したタケミカヅチはここで待っててもらう。
「じゃあ行こっか」
僕は三人と一緒にその場を後にする。
………今気付いたけど、僕以外みんな女の人じゃん。
ここが友達が熱弁していた全男性共通の楽園、『ハーレム』かっ!
「主、行かないんですか? 置いていきますよ」
「あ~待って~」
――――――。
――――。
――。
ガサガサ、ガサガサ―――。
「見つからないな~」
移動した先はいい感じで薄暗く、ジメジメしていたので茸が沢山生えていた。
だけどお目当てのシロクキキノコにはなかなか出会えない。
「主、あまり一人で離れないで下さいね」
「そうです。我々の目の届く範囲にはいらっしゃって下さい」
「も~、ここジメジメしすぎじゃない? 髪が大変なコトになっちゃうわよ」
ティファニア、プリムラーナが俺の身を案じてくれる。
マナリエラだけはなんか違うけど……。
「大丈夫だよ。ちゃんとみんなが見えるところにうわっ!?」
ズザザァーー!
「主!?」
「主様!」
「ちょっ?!」
僕は草で隠れててわからなかった斜面に足を踏み外してしまった。
三人から見たら、僕がいきなり地面に吸い込まれたように見えただろう。
―――ドサッ!
「いたたた……」
幸いなことに斜面はすぐに終わって、僕は地面に尻餅をついた。
大体五メートルくらいの高さに、さっきまで立っていた場所がある。
「大丈夫ですかっ」
「ご無事でしょうか!?」
「ちょっと気をつけなさいよね~。見てるこっちがヒヤヒヤしたわよ~」
すると三人はそれぞれ飛んで僕のところに来てくれた。
ティファニアは背中の翼を羽ばたかせ、プリムラーナはバリアーみたいな物で体を覆って、マナリエラはさっきまで無かったコウモリみたいな羽を使ってだ。
「ごめんごめん。心配かけちゃって。でもケガもないし僕は大丈夫だよ」
「本当ですか。ああほら、ここに傷があるではありませんか。少々お待ち下さい」
プリムラーナが斜面を下った時に付いたと思われる、小さな擦り傷に手をかざすと、その手から光が漏れだしあっという間に掠り傷は治ってしまった。
これも魔法だろう。
きっと『ヒール』とか『キュア』とかいうに違いない。
「ありがと、プリムラーナ」
「も、もったいないお言葉です」
お礼を言ったら逆に恐縮されてしまった。
「二人とも、その辺りでやめにしたら? 見てみなさいよ」
マナリエラにいわれて見てみると、そこには茸の群生地帯があった。
その中の一つを手にとって、しげしげと観察していたティファニアが笑みを浮かべて僕たちに振り返る。
「間違いありません。ここにあるのは全部シロクキキノコです」
これだけの量があれば簡単に指定されていた籠一杯の量も採取出来るだろうな。
「よしっ! じゃあ手分けして集めようか」
こうして僕たちは指定されてた量のシロクキキノコを手に入れた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
タケミカヅチが不遇……。
いつか活躍させてあげたい。