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12/17

12.~初仕事に出発~

メイン作品優先なのでこっちがなかなか更新出来ません><;

 

 

 

「こんにちは~」



 ピタ――――。



 僕が冒険者ギルドに入ると、中にいた人達は動きを止めた。

 だけどすぐに元に戻ってヒソヒソと近くにいた人と何かを話し始める。



「う~ん、やっぱり昨日のでいろいろ噂されてるのかな」



 無理もないと思う。

 僕だって大の男の人が飛ばされて、空から落ちてきたりしたら驚くし、その一件に関わってる人を見たら思うところもあるし。



 まあもっとも『人の噂も七十五日』って言うし、実害がある訳じゃないから今のところはスルーしておくことにしよう。



「さてさて、どんな依頼があるのかな~っと」



 僕は周りから向けられる視線をあえて無視して、依頼書が掲示されている場所に足を向けた。



「僕はFランクだから……ここら辺か?」



 ギルドには多種多様な依頼が舞い込んでくるけど、ランクに応じて受けられる依頼と受けられない依頼が厳密に別けられている。

 僕が受けられるのはFランク相当の難易度だと、ギルドの人が判断した物だけだ。



「どれどれ、どんなのがあるかな?」



 ちなみに僕はこの世界の文字を読めるようになった。

 言語を覚えたのではなくて、今朝起きたらいつの間にか読めるようになっていたんだ。

 もしかしたら寝ている間にティファニアが何かしたのかとも考えて、直接聞いてみたのだけれども、『なにもしていませんよ』とのことだった。

 だからどうしてなのか全く見当が付かない。



 まあ困るようなことじゃない――というか、便利になったくらいなのでラッキーと思っておくことにしておいた。

 


《Fランク掲示板》




【パンの配達】 


 場所:ミリアス全域


 内容:指定された場所への配達


 報酬:3,000K


 依頼者:『虹の雲』店主 アレックス


『ウチで作ったパンを食堂や宿に運んでもらいたい。

 昼飯前と夕飯前に来てもらえるとこちらとしてはありがたい』


 依頼ナンバー:3




【シロクキキノコ採取】


 場所:おまかせ

 

 内容:シロクキキノコを籠ひとつ分


 報酬:1,500K


 依頼者:ドリス


『私は町医者をしています。

 最近子供達の間で発熱を伴う病気が流行っているので、解熱薬を作るための材料を集めて下さい。

 あまり報酬は出せませんがよろしくお願いします』


 依頼ナンバー:14




【お手伝いさん募集】


 場所:『魅惑の赤い花』


 内容:給仕の仕事全般。


 報酬:7,000K


 依頼者:『魅惑の赤い花』オーナー フィオナ


『怪我をしてしまった従業員の代わりをお願いするわ。

 男性向けのお店なので、女の子の応募に限定させてちょうだい』


 依頼ナンバー;27




「なんか、冒険者っぽくない依頼が多いな」



 他にもペットの世話だとか、子守なんて依頼もあった。

 きっと一番低いランクの依頼なんてこんなもんなんだろう。



 ざっと見て気になった依頼はいくつかあった。

 簡単そうだとか、単純に報酬が多かったとか、そんな依頼だ。

 今僕とティファニアが泊まってる宿『龍の止まり木』の料金は、ジェーンさんの口利きで料金前払いのところを後払いにしてもらっている。

 


 え?

 なんでそんなことをしてもらったかって?

 それは僕は無一文だったからだ。

 日本円はサイフに入ってたけど、もちろんこの世界では使えなかった。

 


 ―――ちなみにこの世界の金銭感覚は、日本と大体同じ感じだった。

 パンひとつ150Kで、食事は大体1500K。

『K』はコロンと呼ぶ―――



 なので宿代の為以外にも生活のために一刻も早くお金を稼ぐ必要がある。

 状況を考えたら一度に沢山の報酬がもらえる依頼を受けたいところだったけど、僕はひとつの依頼が気になって仕方がなかった。



 それは、【シロクキキノコ】の依頼だ。

 


「……よし、これにするか」



 僕は受ける依頼を決めて受付に向かった。



「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」



 受付にいたのはジェーンさんではない初対面の女の人だった。

 ギルドの従業員の人達には、この本人曰く『このギルドで二番目に偉い』というジャンさんから昨日の出来事について説明があったので、周りの冒険者の人達のような反応を見せることはなかった。



「えっと、依頼を受けたいんですけど」


「それではその依頼のランクと依頼ナンバーをお願いします」


「Fランクです。Fランクの14番です」


「かしこまりました。少々お待ち下さい」



 女の人は分厚い本のような物を取りだして、パラパラ捲ってあるページで手を止めた。



「あら、この依頼」


「? どうかしましたか?」


「ああいえ。こほんっ、この依頼は誰も受けることがないと思っていましたので。失礼しました」



 女の人は一瞬だけ驚いた様子だったけど、すぐにキリッと表情を元に戻した。



「どうして誰も受けないと思ってたんですか?」



 僕の質問に躊躇うような素振りを見せた女の人だったけど、小さい声でだがちゃんと答えてくれた。



「実はこの依頼、相場の三分の一程度しか報酬がないんです。シロクキキノコを籠一杯に採取した場合、最低でも4,000K程になります」


「そうなんですか」


「本来ならこの様な相場を無視した依頼は、冒険者の皆さん受けないのでギルドも最初から受け付けないんです。ですけど、ドリスさんの依頼ということもあってダメ元で掲示板に貼っていたんですよ」


「ダメ元って、ドリスさんって人はそんなに凄い人なんですか?」


「彼女は優しい人なんです。貧民街で診療所を開いているんですけど、お金がない貧しい人を無料で治療してくれたりしていて、ある意味このミリアスの女神さまみたいな人ですね」



 女の人はドリスさんがいかに素晴らしい人なのか説明してくれた。

 そして、話を聞いて僕のやる気も俄然(がぜん)上がった。



「なら僕も、ちょっとでも女神さまのお役に立てるように、お手伝いしないといけませんね~」



 ちょっとふざけてそんなことを言ったけど、女の人は笑って『よろしくお願いします』と言ってくれた。



「では冒険者カードの提示をお願いします」


「はい」



 僕はカードを渡した。

 すると羽ペンでカードに何か書いてから返してくれた。




【冒険者カード】


 荒太・新見 (アラタ・ニイミ)


 冒険者ランク:F


 職業:召喚師、モンスターテイマー 


 登録支部:王都ミリアス支部


《現在“王とミリアス支部”“Fランク依頼”“依頼ナンバー14”受領中。未達成》




 カードを見てみると余白だった部分に、新しく『受けている依頼内容』についての項目が増えていた。



「これで手続きは完了しました。籠はこちらをお使い下さい。この籠一杯にシロクキキノコを集め終えたら、もう一度ギルドに来て報告をお願いします」


「どうも、ありがとうございます。――それじゃあ」



 こうして僕の初依頼、『シロクキキノコの採取』が始まった。






お読み頂きありがとうございます。


次話、新しい仲間が登場する予定です。


※誤字訂正4/13

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