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"キレイ"な金

作者: 画架ヤシロ

真似しないでくださいね。

黒色人種の一人ポールは銀行に姿を現した。

普段は銀行員なのにも関わらず、アンダーグラウンドに生息する彼の顔は紛れも無い犯罪者だった。

覆面を被り、声も変えて、片手にはハンガリー共和国製造のAMD-65をぶら提げていた。十二分な時間を費やし、仕事の暇に準備してきたこの計画に多くの未来が懸かっている。母国アメリカの為に彼は命を懸けて、今回の仕事に取り組んでいるのだ。

ロシア国家、都市ベロゼルスク。極寒の地。

さっきまで居座ってた喫茶店が冷蔵庫と変わらない寒さのを思い出し、銀行に入るのを躊躇うポール。

コーヒーは不味かったし、サービスで出してきた硬いパンもクソみたいな味だった。

さっさと終わらせたいと心中何度も不満を泳がせながら、脳裏ではハワイでサーフィンしていた。

「寒さも上等にオソロシア」

語る相手を知らず、知らず相手に語るなんてまっぴらと思いながら、不快で深い溜息を溢して銀行へ向かった。


-------------------


銀行強盗は高校数学の問題を解くよりも容易だった。

手法は今度話したい。

ポールは鼻を穿り、べっとりと汚い鼻くそを口に含んでちゅぱちゅぱと下品に音を鳴らす。ケツの穴を舐めて大腸菌を体内に取り入れている売春婦よりよっぽどマシなんじゃないかって。どっかの医師が鼻くそ健康法だとかなんとか。まあどうでもいい。

ポールは日本へ向かった。偽造パスポートを手にして、難なく搭乗する。AMD-65は武器密輸行為で鹵獲そして拿捕されても困る訳で、銀行襲撃の助成を担ってくれたロシアンマフィアの野郎に分け前と一緒に上げていた。

冷徹マザーロシアともおさらば楽観の機内だったが、着陸後に見た景色は変わらず雪一色だった。

日本、北海道。

もう勘弁してくれよと言わんばかりにポールの顔は真っ青だった。真っ黒だってのに。

しかしここは世界有数の平和国家だ。幼少の頃、拳銃規制がされていると最初に聞いた頃は驚いたものだ。

で、ここに来た目的だが、ここでも銀行だった。

日本での所用を済ませば、仕事は完了する。

ポールは日本系ではなく外国銀行の一つ、香港上海銀行の支店を探しているのだ。すぐさま銀行に金を預ける。

ここに勤務している中国系アメリカ人のチェンは優秀な銀行員だ。そして優秀なエージェントでもある。こういった銀行員にも中国やアメリカ、それに限らずにロシアやフィリピンなどの工作員が潜伏しているのはアンダーグラウンドでは常識でしかない。

ポールはただ金を預けるだけ。担当は勿論チェンだ。

ロシアでぶんどった金を日本で中国銀行を通す。後は彼の仕事。これを永世中立国スイスの銀行まであらゆる銀行に廻されていく。するとどうだろう。金はその間、ルーブルから円、円から香港ドル、もしくは元となって、最後には米国外資系銀行での仲介でドルで預金される。

「これでお仕事終わりっと」

ポールは一掴みのルーブル紙幣を円に換えて、銀行を後にした。チェンは会釈して、悪人面を拝ませた。

マネーロンダリング。この作業を人は呼ぶ。

汚いモノは洗わなくてはならない。洗浄しなくてはならない。では汚い金も洗わないといけないだろう。

再びその金を使う時、札束の山は金塊の如く、見た目は綺麗で中身も"キレイ"なのは間違いない。


読んでくださって感謝です。

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