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3、キケンな占いの館

町の裏通り、突然ビルの壁に現れたそのドアは、本日出来たばかりの占いの部屋。

中は怪しげな雰囲気のピンクのライトにピンクのカーテンが下がり、中央の小さなテーブルにお決まりの水晶玉が置いてある。

近くには有名な占い師もいて、この辺は占いの商売には向いている。

うっふんサキューラも、そこはさすがに抜け目がない。

しかし「男性に限る」と張り紙を慌ててしたのは、女性がドッと押し寄せたからだ。

ところが場所が悪かったのか、思惑と一つ違ったのは……


「ちょっとお、ちゃんと占ってよ、お金払わないわよ。真っ赤なボンデージなんか着ちゃって、あんたちょっと商売間違えてんじゃないの?もう、失礼しちゃうわ」


水晶玉の向こうに、むさ苦しく、着物姿にケバイ化粧をしたおばさんが、文句を言いながらふんぞり返っておしろいを顔に叩く。

サキューラはクネクネいやんと、色気の通じない相手に悶えていた。


「いやんいやん、やる気が出ないのん。ここは素敵な男性専用よん」

「まっ!失礼ねえ、あたしだって男性よ。なんなら見せましょうか?」


ガバッとおばさん、もといオカマなおじさんが、着物の裾をはだけ始める。


「きゃあああん!止めてええん!」

さすがのサキューラも卒倒しそうだ。


「じゃあ占ってよっ」

ドスンと座ったおじおばさんに負けて、サキューラが水晶玉に手を添える。


「ううう……いやんな相手には見てらっしゃいん」

「は?なによっ」


にっこり、サキューラが微笑んでプルプル頭を振る。

そしてキンッと魔力を振るい、水晶を介して呪いをかけ始めた。


「ウフフフ、汝招かれざる男よ。黒魔女の呪いを受け、その野太い声は小鳥のようにさえずり、その下品なお尻にはワンワンのしっぽがはえるといいわん。オホホホホホ!」


「え?え?ピー?ピ?ピピピピ、ピーチュンチュン」

おじさんが驚いて立ち上がると、ニュウッとお尻には柴犬のようなしっぽがはえている。


「ピーーーーッ!!」


悲鳴のような鳴き声を上げてガチャンとドアを開け、転げるようにおじさんが逃げていった。


「うっふーん。いやあんねえん、なかなか一太のパパみたいないい男が来ないわん」


ハアッと、溜息混じりで小さなピンクのソファーにふんぞり返り、ドカッとテーブルに赤い膝上までのロングブーツを乗せる。

すると、控えめなノックの音がしてそうっと扉が開いた。


「あのう、まだ占って貰えるんでしょうか?」


ハッとサキューラが顔を上げて、きゃーんっと悲鳴を上げる。

燦然と輝きを放つように見えたその彼は、学生服姿のりりしい美少年だった。


「きゃんっきゃんっ、もちろんろんよっ、さあさあこちらへどうぞん。いやん、サキューラ胸がキュンキュンしちゃうのん」


ド、ピンクの室内装飾、そしてボインボインと胸を揺らし少年へ飛びつくボンデージファッションのサキューラに、少年が真っ赤に頬を染めて思わず引く。


「あの、僕…また来ます」

来る場所を間違えたと逃げる少年の腕をがっしり握り、しかしサキューラの目がキラリンと輝いた。


「ンフフフン、逃がさないわよん、ハニー」


ヒーッと、瞬間冷凍した彼の身体を奥に引きずり込み、腕と足をからめてソファーへ押し倒すと、ガバッと足を広げて挟みこむ。


「お姉さんに相談って、な、あ、にん?」

「あの、あの、彼女との恋愛運を…ひーっ、もういいです、帰してください」

「いやん、恋愛運なんて可愛いこと言わないで、お姉さんといい事しましょん」


ベロンと彼の頬を舐め、若々しい男の匂いにア、ハーンと身もだえする。そしてスルスルと髪を伸ばし互いの身体に巻き付けてぎゅうぎゅう締め上げると、すでに彼は蜘蛛の糸に囚われた虫のようになってしまった。


「誰かー、助け……」


少年はたまらず目をグルグル回して、グイッと押しつけられた豊満な胸の膨らみに、息が苦しくて気が遠くなっていく。

幸せなのか、不運なのか、むせ返る女の匂いに、やがて頭がボワンと夢心地になっていった。


「ホッホッホ!ねえん坊やん、あーんな事やこーんないけない事して遊びましょん。やっぱり男の子はいいわん。一太は機嫌壊すわけに行かないものん。遠慮するのよねん」

「…え、一太?」

「あらん、知ってるのん?」

「同じクラスの同級生で」

「な、なんですってん」


ドキッと、サキューラの頬がヒクヒク引きつる。


「僕、クラスの委員長なんです」


「きゃあああああんっ!」


バサッと、サキューラの背に大きなコウモリのような羽が広がる。

それをギュッと身体に巻き付けると、巻き込まれた委員長の身体は、しゅるしゅると小さくなって行く。

やがてそれは小さなペンダントトップになって胸の谷間にぶら下がり、羽を広げたサキューラは辺りをキョロキョロしながら乳房の谷間に押し込んだ。


「いけないわん、いけないわん、一太に知られたら怒られちゃうん。クラスの長って偉いのよねん、きっと社長さんみたいな物だわん。一太が学校を首になったら、あの家追い出されちゃうわん」


学校を首になるわけないのだが、サキューラは半端に世間を知っている。よって、証拠隠滅にクラス委員長は、文字通りサキューラの胸にしまわれてしまった。


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