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3・5それから

一面にツルが張り付いている城内の廊下を、クレマティスは彼女らしく無いキビキビとした足取りで歩いていた


朝日が床に差し込み、美しい光に包まれている。しかしクレマティスの顔は暗く、

ため息とともに彼女はあの知らせを聞いた日のことを思い返していた。


「よう、クレマティス。」

研究所に連れてこられたクレマティスを最初にハイドが迎えた


「あーハイド様チーッス!今日も今日とてでこ広いッスね!てか、あたしが呼ばれたってことはダンデ様目覚めたんスよね?」きっとダンデ様の身の回りの世話を言いつけにいたんだろなー

早く喜代様と一緒に祝いたいと思い、研究所の廊下を進もうとしたら腕をつかまれた


「クレマティス、それ、なんだけどな・・・」

「?ハイド様?」

いつものチャラけた態度を微塵も見せない真剣な目線に動けなくなる

すると、喜代様が音もなく67号室の扉から出てきた


少し遠くからだったけど喜代様の様子がおかしいことはわかって

すぐに駆けつけた


「!!喜代様!オハヨござます!てか、ダンデ様は…「クレマティス!!!」

「ひっ…!?は、ハイド、様??」

ハイド様はすごい剣幕であたし達を引き剥がし、喜代様に向き合った

「嬢ちゃん、ローズが先帰る船に乗ってるから、いきな。」

「・・・」

「喜代様・・・?」

俯く喜代様に語りかけない訳にはいかなかった。

こんな、こんな喜代様みてらんないよ、、、


すると、パッと弾かれたように喜代様は顔を上げた


「・・・っ!ク、レマティス……っ!!」

「っ喜代様、どうしたんスか!?こんなに泣いて!一体何が、どうか泣き止んでくださいッス!」


まさか、ダンデ様が泣かしたんじゃ、、、?

オロオロしていると、ハイド様がため息をつき、あたしに一言、告げた。




「ダンデリオンが、、、死んだ。」





そこまで思い返していてふと気がつけば、目的の扉の前についていた

ためらいがちにノックをしてみる。


返事は無い。けれども、勝手を承知で入った。



「ローズ様…」

「・・・クレマティス、返事が無かったら入っちゃダメでしょぅ?」


赤い目をした女王様が諭すように優しく言った。

「すんません。でも、いい加減ご飯ちゃんと食べなきゃダメッスよ?

栄養つけなきゃ、ホルモンバランスだって崩れちゃいます。せっかく、苦労して女性になれたのに、」


「・・・そう、ね。弟が呪いに苦しんでいる時なのに手に入れたモノだものね。大事にしなきゃダンデちゃんにしかられるわ」自嘲気味に吐き捨て、ローズは食堂へと降りて行った。


「ローズ様。。。」自分の言葉のデリカシーの無さに呆れた

ダンデ様が亡くなって、もう、1ヶ月が経とうとしている。


喜代様はまだ部屋から出てこない…

自然と、彼女の元へ足が動いた。



眩い朝日って、こういう感じなんだろーなー。

そんな事を思いながら窓際に腰掛ける

窓のさんにホコリが溜まっているけれど、どうしても何もする気になれなかった。


眩いの漢字が読めなくて、何度もダンデに聞いたっけ

その度に辞書引かされて、

「ダンデ…」ふっと目を細めながらつぶやく


また、今日も眠れなかったよ。


もう今ではだいぶ片付いた物置のダンボールの上に瓶詰めにされたたんぽぽの種を見た。

研究所で預かると言われたけど、必死でそれを断って傍に置かせてもらっている。

おでこさんは最後まで反対してた

「あぁもう!!いーか!なんか変な事あったらすぐに俺をよべよ?いいな?すぐだぞ!?」


まるで本当のお兄ちゃんのようにあたしに言い聞かせて、おでこさんは仕事に戻った。

クレマティスも最近じゃ全く会って無いけどきっと仕事してる。

アゼイリアさんは傷心のローズさんを気遣って長期滞在することにした。


・・・あたし、だけだ。こんな無様なの。


まだダンデを思い出して、泣き続けてる



会いたい。嘘でしょ?消えたなんて、信じない。信じられる訳…無いじゃん…っ!


「ダン、デェ…っ」

嗚咽を噛みこらえていると、ノックがした

反射的に立ち上がる

「っダンデ!」

「あ、喜代様…」



扉の外からは、クレマティスが入ってきた。

一瞬で膨らんでいた期待はみるみる萎んで行くのが分かる


「クレマティス、、どうしたの?」

「えっと、、、んーと、、、ガ、ガムいるッスか?」

苦し紛れに言われた言葉で懐かしさがこみ上げて来た


まだあたしが来て間もない頃、

それ言われたね

「クレマティス、一つちょうだい。」

何も知らないダンデへの想いも無かったあの頃に、、、戻りたいよ。


噛み締めたガムはぶどう味で、酸味がきいていた

「喜代様…掃除しないッスか?なんか、ここホコリっぽいし」


17年間生きて来て自分の部屋が汚い言われたのは初めてだった。

「・・・そうだね。でもなんか体だるいしっぶへぉおお!!!」


え?は?ちょちょちょい!?クレマティス!?

なんか右頬!右頬に拳が来たんですけんど!?


「な、なにすヘブシッ!!」

お次は左ストレート!!何?え、右頬やったから左もって?

「誰がイエスやねん!!!」

ツッコミがもはや言葉として出て来た。

すると、クレマティスのほっぺたに涙が溢れていて、


「クレマティス、、、」

「喜代様…あたし、あたし、喜代様が好きッス。」


………。

両頬に拳を叩き込んでから言うセリフちゃうよね?


ポカーンとしていると、クレマティスは更に続けた

「いつだって喜代様は行動力があって前見てて、明るく変人で、、、だからこそあたしは、喜代様がマジブルーな時は傍にいたいんス。喜代様がここを自分の場所だって思ってもらいたいんス!自分がしょげている時も甘えられる場所であってもらいたいんス!!」

一息にそう吐き出して、クレマティスは大粒の涙をいくつもいくつも落とした。


クレマティス、、、

「・・・クレマティス。」

「自分、バカッスから、どうしたら喜代様の心を沈ませないか考えて、、、」

「考えた結果、顔面殴打か、、、」


泣きながら頷くクレマティスが堪らなく愛しく感じる

「ふっははっあはは!!!クレマティスっあんたバカだマジっ!!はははは!!!馬鹿すぎる!!」

耐えられないっ本っ当に馬鹿すぎるよクレマティス!!

馬鹿で素直で、



あったかすぎるよ



笑いすぎて涙が出て来た。

そういやダンデも笑えば楽しくなるとか言ってたっけ、、、

クレマティスが今度はポカーンとしてるけど止まらない。

ようやく落ち着かせて向き直った


「ふっははっはぁ…クレマティス、あたしもクレマティスが好きだよ。ありがとう。本当に、ありがとう」


ふふ、何まだポカーンとしてんだかこの子は

「ちょっと、クレマティスいい加減その顔やめてって。掃除しようと思うから、手伝ってもらえない?」


……ちょいと、反応してよー?


「クレマティス?」

「き、喜代様。後ろ。」


?後ろは確か窓だったけど??

クレマティスの指差す窓を向いてみると、、、

言葉を失った。


「未確認…飛行物体…ッスよね?」

「略して、、、UFOだよ、、、」

















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