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3・守るための戦い。

アゼイリアさんは、意識を取り戻した後

自分の身に起きた事を冷静に話してくれた。


あたしの困惑顔とローズさんの苦々しい顔を見つめながら、

アゼイリアさんは、更に続けた。


「・・・あたし、ね。還ってから、ずっとして来た事があるの。

彼の幸せを毎晩毎晩空に向かって願う、、、届かなくったって良かった。

ただの自己満足で済むはずの儀式が、ついこの前、取り返しがつかなくなったの。。。」



---いつも通り、潮の満ちない丘で祈ってる最中に

彼の声が聞こえたという。


その声は昔と変わらず、なおかつ彼は迎えにいくと言っていた。


「・・・迎えにいく、、、」


「そう、そしてこんな事が続いて、私は彼が、帰る直前に言ったあの言葉が

真実になってしまうのかもしれないと、思ってる。。。」


そんな、嘘でしょう?

佐々山先生は、いつだって、他人の幸せを願って、絶対に人道には反しちゃいけないって、、、


「・・・嘘だよ。そんなの、、、」

「喜代ちゃん。。」


すっと向けられたアゼイリアさんの氷のような瞳が、

あたしの怒りを燃えあがらした。



「勝手すぎるよ!!!先生もアゼイリアさんもなんで!!そんなの!もしもあったら、許される事じゃ無い!!」

このままダンデが目覚めなかったら!

いや、それよりももっと前にこの星が無くなったら!!!


不安と怒りの混じった涙がボトリボトリと重く落ちる。


ダンデ、ダンデ、ダンデ!!!


「キヨちゃん!落ち着きなさい!まだ決まったわけじゃ無いでしょう!

貴女がやるべき事はアゼイリアを傷つける事じゃ無い!恥を知りなさい!!」


喜代はローズの一言に気圧され、

俯き、ふるふると静かに震え出した


-------「だって、ダンデがぁ、、、」


「キヨちゃん!」


だって!!!!


「~~~~!!!」

もどかしさで吐き気がする。

思わず胸の辺りを掻きむしって、


部屋を、出て行った。







酷く痛い静けさと重苦しさがのしかかってくる。


「アゼイリア。」

ローズは鋭く能面の様に無表情の彼女を睨みつけた。


「・・・・喜代ちゃんが、怒るのも当然よ、ね。

だって、あたし達があんな風に別れなかったら、ダンデは、、、」

続きを言おうとしたアゼイリアを、

ローズはその眼光で制し


厳しく突き放した。



「アゼイリア。貴女はあの子に謝るベキだわ。

貴女の下らない自己中心的妄想に付き合わされて、酷くあの子を動揺させた罪として。」


ピク、


肩を震わせ、目を大きく開けるアゼイリア。

やっと出てきた表情には驚き意外の色は無い。


「妄想、、、ですって?」

「ええ。声が聞こえたというのは貴女の幻聴かもしれないし、

偶然こんなことが続いている可能性もある。

それをよく考えもせず決めつけて、その責任から救われようと告白してあの子を不安に

させたのよ。」


「!!!!」


自分の軽率さと愚かさがまざまざと叩きつけられ、

アゼイリアは本当にワナワナと震え出す。


私は、自分の不安をあの子に押し付けてしまった。

あんな年端もいかない女の子に!

私は、私は、


ああ、なんてこと!

どうしましょう。なんて愚かな行いを・・・!


「ローズ、、、わた、し、、、」


「もしも、貴女の言っている事が本当だとしたら、貴女はどうするの?」


「え?」

唐突な質問に、何も答えられない


「貴女は、多分すごく不安を感じたでしょうね。だから一緒に考えて貰おうとした。」

でも、とローズは王が羽織るマントを掴み、

ふわりとそれに腕を通す


「貴女は、昔からそうだったわ。自分から考えず、人に頼り、ひとに流されていく。

そんな貴女が、本気で愛した男性でしょう?」

「・・・そう、ね。」

「迎えなんて待たずに、行っちゃえば良かったのよ。

地球にね?」


そう言って、彼女は軽くウインクをして、出て行った。


彼女の言いたかった事が、そのウインクに込められているかのごとく

胸がギュッと締め付けられた。


・・・流されてばかりの私


彼のために幸せを願ったって、届きっこない。

結局、私は何も出来ないで、、、


ワタシニハ、ナニガデキル?


あの子に償うために、

もしもの時のために、、、



アゼイリアは、静かに扉へと向かい

喜代を探す第一歩を踏み出した。。。



「たのもおおおおおおお!!!!」


そして、大絶叫と共にアゼイリアの第一歩は二歩目を踏み出すことなく、


終わった。


「アゼイリアさん!もう!もうあたし決めたから!!!和解しよ!」

「え?え?え??」

何もアゼイリアは喜代の大声にこんなに戸惑ったわけではない。


そこには喜代の素顔が奥にあるであろうフルフェイスのヘルメットと、


右手には空飛ぶフライパン(高速ですぶりをしている)

左手にはいつしかの黒いブヨブヨ。(流石に手袋越し)


そして、ヘルメットのおでこ部分には、


【夜・露・死・苦!】

の四文字が乱舞したハチマキが括り付けてあり、




モロ戦闘モードじゃねえ!?

とツッコミ魂を刺激しまくるこの様子で和解と喚く喜代。




・・・・遂に、イッタカ。。。。


「き、喜代ちゃん。和解って?許して、くれるの?」

そしてそれ全てをスルーして和解だけに食いついてくるアゼイリアも中々大物だ。



「うん。アゼイリアさんは、先生に会いたいんだよね?」

「先生・・・?佐々山くんのこと?そりゃ、会いたいけど、」

でも、これ以上我が儘は言ってられないわ


と、続けようとした瞬間喜代の素振りが激しさを増す。


「だったらもう!アゼイリアさんとあたしは、敵だから!全力で先生を追い返すから!!」

「ええ!?ちょっと、喜代ちゃん話を聞いて、、、」

戸惑うアゼイリアの声を遮るかのように更に喜代は続けた。


「絶対絶対ぜーーーーったい!!!この星を壊させないし!ダンデも守るし!

皆ハッピーにするし!誰も泣かせないし!

出来たら、アゼイリアさんと先生もくっつけるから!!!だから!

あたしに協力して!アゼイリアさん!!!」



・・・空いた口が塞がらない。


何なのかしら、この子は。本当に、

エネルギッシュすぎるわよ、、、

私の撒き散らした不安を、この子は、こんな年下の女の子が、、、

ローズの様に疑いもせず、


尚且つ、立ち向うなんて、、、、



完、敗。


佐々山くん、、、

貴女は、いい生徒を持ったわね、、、


どうなるかなんて分からない。

でも、喜代ちゃんは全身全霊で戦おうとしてる。


だったら、あたしのやる事は、決まっているわ。


軽く息を整えて、

喜代を真っ直ぐに、見つめる。



「喜代ちゃん。もしも、佐々山くんが来るならば。


貴女に協力する。


・・・そして、佐々山くんと共に、地球に帰るわ。」



----貴女の居場所を貴女と共に、守ります。。。



果たして有言実行なるか・・・

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