0 辛い辛い嬉しい
あの衝撃的な言葉を聞いてから、
もうどれ位経ったのだろうか、、、、、
ササヤマ君はあたしの帰る術を全力で見つけてあげると言ってくれて、
気がつけばあたしはササヤマ君と二人で暮らしていた。
まあ、あたしも年頃で
しかも一つ屋根の下で何もないなんて考えられないと思うけど
ササヤマ君はあたしに何もして来なかった。
それは始めはあたしに安心感を与えたが、
ある時を境に不安へと変わっていった。
その、ある時とは
あたしがササヤマ君に恋心を抱いていると感じた瞬間だった。
ササヤマ君はあたしをどう思っているのかしら。
いつ見ても笑ってくれるのに、絶対に考えていることが分からない。
もしかしたら、他の女の人の前では違うのかな?
もっと、色々言っているのかな?
ササヤマ君は、いつも言うから、
「アゼイリアさんのやりたいようにして良いよ。」って。
その言葉はどこか壁を感じて苦しいの、、、
そんな事を思っていたある日、
決定的な瞬間を見た。
ササヤマ君が珍しくレポートを忘れていった。
ダイガクという所の場所は一度連れてってもらったから分かるし、
何よりササヤマ君の役にたてるのが嬉しくて早足でかけていった。
ダイガクはとても大きく、どうやったらササヤマ君に会えるかまで考えてなかった
あたしは、途方に暮れた。
すると、中庭から声がした。
・・・・ササヤマ君!
確信した瞬間に脚は中庭の方に向かう。
そして、見てしまった。
「英雄君!」
「ん?何かな?」
「何かなじゃないよ!一緒にお昼食べよって言ったの英雄君じゃん!」
「ああ!ごめんごめん、、、考え事してたらね、、、」
「も~。まあいいよ!早く行こ!」
そう言った女の人は、ササヤマ君の腕に自分の腕を絡めた。
それだけで、全て分かる。
でも、なんで?ササヤマ君は、ヒデオなの?
彼女にだけ?そう呼ばせるのは、、、
そんなに特別なんだ、、、
その場で泣くのは流石にあれだから、
部屋に戻って泣きはらした。
帰りたい、もうここに居たくない。
帰る、帰る帰る帰る!!!
でも、目を開けても目の前はもはや見慣れてしまったあの人に部屋。
「・・・帰りたい。」
ドサッ
物を落とす音がして
バッと後ろを振り返った。
「ササ、ヤマ君」
「・・・ただいま。」
その返事が異常に暗い事に、気づく。
「ど、うしたの?顔色、悪いよ?」
あの女の人と喧嘩したの?
ああ、貴方がそんな顔をするのを初めて見る。
あの人だけが彼の心を動かせるのかな。。。
痛む心が更に悲鳴をあげ、
緩んでいた涙腺から涙が膨らんで、溢れた。
もう、限界よ、、、
「ササヤマ君、あたし、」
ここから出て行く。
その言葉はササヤマ君の胸に埋れて、
伝わらなかった。
・・・・あたし、抱きしめられてる。
それがたとえ涙を流した人間を宥める行為だとしても
あたしは天にも昇る気持ちだった。
「・・・ササヤマ君?」
「ゴメン。アゼイリア」
初めて呼び捨てにされた!!
「アゼイリア。アゼイリア。本当にごめんなさい。」
「な、なんで貴方が謝るの?」
ふっとササヤマ君の腕から力が抜ける。
「・・・僕は、君の帰る術を見つけたくないとずっと思っていた。
そして、君の気持ちを無視して、僕はなんの努力もしないで
のんきに君と暮らして居たんだ!
呆れたろう?君には帰れる様に全力を尽くすといっておきながら、
本当は帰らずずっと、、、」
ずっと?
「ずっとここで僕と共に生きて欲しいと願って居たんだ。
僕は、君のいない生活になんて最早耐えられない。だって
君が余りにも魅力的だったから。そうして愚かな僕はそれに抗えずに、君をここまで追い詰めた。」
「・・・・・・。」
「アゼイリア。ごめん。」
ササヤマ君があたしの身体を解放し、床に頭を付けて謝る。
「う・・・ひっく・・・ずずっう、うわあぁぁ、んんっぐすっぇぇえんっ・・・!」
遂にあたしの涙の堤防が、決壊した。
「う、うぅっずびっサ、ササヤマ君。あたし、あたしね、
あのね、聞いて、ずずっあたしね・・・!」
「うん。何だい?ゆっくりでいい。何でもいって。」
ササヤマ君の大きな手が、宥める様にあたしの後頭部を撫でた。
「あたし、、、、ササヤマ君が、好き。。。大好き。」
「っ!?」
ササヤマ君の手が止まった。
そして、ササヤマ君はさっきよりもずっと強く、あたしを抱きしめた。
「今の、前言撤回は許さないよ?いい?」
「ずずっ。い、良いに決まって、、、」
「アゼイリア。愛してます!」
そう言って、ササヤマ君とあたしは互いの唇を重ねあった。