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2・正妃の息子

残酷描写あり。

「ふむ、まずは・・・どうするか。」

ベットに腰掛けて、俺は何を話し始めようかと思案する。

喜代殿の手は、緊張からか微かに震えている。

俺はその華奢な手に触れて、握った。

その手はどこか懐かしい感触で、母さまの事を思い出させた。

うん、、、

「そうだな。まずは、その時の事を詳しく教えよう。。。」

目を閉じて、いまだ鮮やかに残るあの瞬間を俺は語り始めた。


「・・・俺が呪いを受けたのは5歳の時だった。」




「ローズ!母さまは何処か知ってるか?」

テトテトと覚束ない足取りで、庭にいるローズの所に行った。

「!ダ、ダンデ様。どうなされました?正妃様なら、向こうにいらっしゃいますが。」


「そっか~。あんね、そこできれいな花があったんだ!あ、ローズもみる?」

「あ、よ、よろしかったら。ご一緒しても構いませんか?」

「うん!でもさ、何でローズは僕にケイゴなの?お兄ちゃんだって、僕聞いたよ?」

ローズは少々狼狽えて、

何処でそんな事を聞いたのか尋ねた。

「んーと。えーっと。忘れた~。」

ずっこけそうになるが必死でローズは耐えた。


「さ、左様でございますか。その、ダンデ様は正妃様の息子ですが、

私めは、側室の息子ですので、身分が全く違うんです。」


「ミーブーン?」

「そうです。町人と貴族ではかなり身分、格が違うように

私とダンデ様にも差があるのですよ。さ、行きましょう。」

彼はそう言ったが、よく理解できなかった。

少し行くと、母さまがお茶を飲んでいた。

「あら、ダンデ!貴方どうしたの。泥だらけよ?」

「母さま!早く!さっきお花を見つけてね!見せてあげるから早く!」

ぎゅっと母さまの手を握り、勢いよく歩き出した。

そして、

見つけた時のことや、花の色を説明している途中で

その場所についた。


しかし、そこに居たのは鬱蒼とした緑色の草だった。

「あれえ?無いやー。何でだろ?、、、あったんだよ?本当に、

うすーい赤色で見たことの無いヒラヒラのお花。」

「そ、そうね。きっとあったのよね。不思議・・・さあ、ダンデ、

諦めてそろそろ帰りましょう?ここってなんだか不気味だわ。」

確かに、じめじめとして居て気味が悪いと思った。

そう母親が言ったので、諦めて帰ろうと立ち上がる。


立ち上がれなかった。

足元をみると、

さっきの赤い花があって、うねうねした葉っぱが足に絡みついて来ていた。

「か、母さま。ローズ。。。」

助けてと言おうとしたけど声が何故か出てこない。

すると、葉の先端が尖って、

足を突き刺した。


「あら?ダンデ??・・・!!!ダンデ!貴方足が!!」

「ダンデ様!!!え、えと、直ぐに救護班を呼んできます!」


母親達が気づいてくれたが、

葉はどんどん肉を抉り、中に侵入して行く。

激痛に声の限り叫ぼうとしたが、声が出てこない。


「ダンデ!ダンデ!!今、今すぐ取ってあげるから!!」

母さまが手を伸ばして葉を取ろうとした。


・・・!駄目だ母さま!触れてはいけない!!


とても嫌な予感がした。

「え、ちょっと、嫌!何これ!?こ、来ないで!!・・・ぐうっ!!」

草が母さまの首に巻き付いて、

締め上げる。

母さま!に、逃げてくれ!死なないで!!!


その光景を最後に、目の前が深い闇に包まれて行った。





・・・目が覚めたら、薄暗い牢の中にいた。

ローズも母さまも居無い。


妙に血生臭いそこに、怖くなって身震いした。

そう言えばと、足をみるとそこには何もなく。

抉れていた肉も元に戻って居る。


すると、声が聞こえてきた。

「・・・ダンデが呪いを受けたというのは、本当か?」

「はい、あの髪と、ローズからの証言で全く呪いを受けた状態と一致します。」

・・・一人は父様だ、もう一人は誰だろう。。。


「そうか、、、王位継承権は、ローズにいくことになるだろうな。

呪われ者だ。何をしでかすか分からん。このまま幽閉しておけ。」


え?幽閉?

「し、しかし陛下!ダンデ様はまだ小さい。この状況に混乱成されるかも、、、」

「構わん。呪いを受けた彼奴らはもう人間ではない。どうとでもしとけ。」


人間じゃ、ない?


「陛下!!・・・いってしまったか。まあ、いいか。確かにこの容姿では人間と同等とは思えんな。

餓鬼は好かんが、今後の実験台としてありがたく貰おう。」


その言葉に背筋が凍った。

人間じゃない。・・・実験台。


牢の重い、鉛で塗りたくられた扉では外の様子が見えず、

何が起こって居るのか分からなかった。


扉が開く。

外に立っていたのは先程の男であった。

「よお。生きてるな。言っておくがお前は呪いを受けたんだ。・・・もう二度とここからは出られない。

死ぬ事も出来ないぞ。呪われた奴は中の種が身を滅ぼして、植物にするまで死なない。」


実験してみたら分かったと、その男が口の端を曲げて笑っているのをみて

何があったかすぐに分かった。


「まあ、なんだ。これから仲良くしような、492番。」


492。それが今後の自身の名前なのだろうか。


そして、一つだけどうしても気掛かりな事があった。

「・・・かあ、さまは?ど、どうしたの?」

震える声で問う。


「ん?ああ、君の母親か、死んだよ?首を何かで千切り取られていた。」


死んだよ。。。。


「そ、んな、、。!!うっ」

さっとあの光景が蘇り、吐いた。


「あーあー、汚しやがっててめえ。いいじゃねえか別に。生きてたって逢える訳じゃねえんだ。

それに大方正妃様を殺したのは、呪いの植物だ。

その種が埋まってんだよ。お前の中に、な?お前は人間じゃもうねえんだ。

分かったよな。じゃ、また明日。」


そして、再び重い扉は閉ざされていった。


母さま、母さま、、、

その種が埋まってんだよ。お前の中に。

なら、母さまを、、殺したのは、、、

大方、正妃様を殺したのは呪いの植物だ。

母さまを、殺したのは、、、


僕だ。


僕が母さまを、、、殺したんだ。


冷たい壁にもたれて、この先の事を考えると死にたくなった。

頭痛がしてきて、思わず頭に手をやる。


カサッ


葉っぱの乾いた感触に、

自分は本当に人間ではないんだと、自覚した。


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