1・19朝っぱらから騒々しい
ヒョウヒョウと、冷たい風が頬に当たる感触がした。
「・・・ん。んむ~ぅぅ。。。」
まだ起きたくなくて、暖かい場所を求めて身じろぎしていると、
バサッと暖かい毛布をかけられた気がした。
ああ、こりゃどうもご親切に、、、ちょいと顔が寒くてねえ。
・・・あ、なんかあったかくてかたい物にたどり着いたぞ?
なんだろう。この感じ、懐かしい。この温もり・・・って
うう、嫌だけど、目を開けてみよう、気になる。一体なんなんだこれ?
・・・なんだ、ダンデじゃん。びっくりしたなあ。。
まあ、いいやお休み~これでもう少し寝られ、る。むにゃむにゃ・・・
!!??
ちょいと待って!?衝撃的な事が今さらっと流されていたぞ!?
まさかの事実を確認するべく、
ゆっくり、ぎこちなく首を右横に曲げてみた。
もそりと何かが起きてきた。
「ふ、、わあ~ぁぁ。。。喜代殿、早く起きなさい。
早寝早起きは健康維持の常識だからな。」
と言いつつ、うぬぬ・・と伸びをするダンデに、
あたしは何を言っていいかわからず、口をパクパクさせた。
・・・・・・・・・・とりあえず、起きよう。
「ふむ、おはよう喜代殿。」
くしゃくしゃになった、(元からくしゃくしゃ)の髪をガシガシと掻きながら、
ダンデは挨拶をしてきた。
「お、、、はよう、、、あのさ、ダンデ?」
なんでここにいるの?
その疑問を口にしようとした瞬間、
ちゅっという音がほっぺた辺りで聞こえた。
目の前にいたはずのダンデの顔は、あたしのほっぺたにくっついていて・・・・
あれ?あれ?あれ?
「喜代殿・・・?」
「きぃやああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
パアアアアァァァァン!!!!
青い空いっぱいに、乾いた音が響き渡った。。。
ところ変わってここはローズの寝室。
チュン、チチュン、チュン。
「うーーーーん!良い朝ね~。そう思わない?ベイアーちゃん?」
細っこいが逞しい二の腕で抱き上げたフリフリのクマのぬいぐるみに
話しかけながら、ローズの朝はスタートした。
朝はやっぱり紅茶よねん。何にしようかしら、ハーブ?それとも・・・うーん。。。
途端、
ローズのうきうき紅茶選びタイムは、けたたましい音と共にかき消された。
ん?なによなによ今の音!?なんだか女の子の叫び声も聞こえたような・・・
やだあ!こわ~い!!
大の男がベットの上で身をくねらせながら怖がる様の方がよっぽど
恐ろしい。いやむしろ、おぞましい。
「ちょっとダンデチャ~ン!来てー!なんか外が怖いことになってるのよ~!」
テトテトと寝室から這い出して、ダンデの寝室に向かった。
そして、音の元凶であるダンデの寝室では・・・
会議がなされていた。
「す、すまなかった喜代殿。そのう。俺も少し酔っていたみたいで、あと、寝惚けていて・・・」
ダンデはハンモックの上での正座はキツイらしく、
グラグラとバランスを取りながら説明(言い訳)する。
「言い訳無用!」
般若か!っていうくらいの喜代の顔にうな垂れるダンデ。
「だいたい!健康の常識を説くくせに、なんで恋人でもないあたしとあんたが
同じハンモックで寝ているのさ!」
「・・・実は」
「何?もっぺん言ってみ。」
「・・・・・・・ごめんなさい。」
「え!?はい!?そこへ来てのごめん!?いや、ふざけるな。ガチでざけんな?」
そして、さらに喜代の機嫌を損ねたダンデはこんな事を考えていた。
・・・いや、喜代殿。実は俺もよく覚えていないんだ。
覚えているといえば覚えているのだが、、、
確か、喜代殿と二人っきりになったあとに喜代殿を寝室に送り、
一人でこのハンモックで飲んでいたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
忘れた。
駄目だ、完・全に忘れている。
なぜだ?なぜ喜代殿がここにいる?
そして、俺はなんであんな事をした?あんな、、、恋人にするようなことを、
う~んと一人で考えごとをしていたら、頭の上にゲンコツをお見舞いされた。
「バカ!バカバカバカ!ダンデなんてスカポンバカだ!」
スカポンバカってなんだろう?
「喜代殿。スカポン馬鹿とは?・・・うわ!」
どこのボクサーかと間違うくらいの華麗なアッパーを
ダンデは寸でで、かわす。
「す、すまない喜代殿!本当に、キスなどする気はなくて!ごめんって!」
ポカポカとそれまでダンデの胸を叩いていた喜代は
ハッと手を止めると
顔を真っ赤にして頭を掻き毟った。
「ぐあああああああ!言うな!言わないでよその言葉!!なんか一気に
自覚しちゃったじゃん!ダンデのバカ!」
もはや、半狂乱となった喜代を必死で宥めようとするダンデはもう
かなりへとへとになっていた。
ガラッ!
突然、
喜代の部屋の隣の窓が開けられた。
「ダンデちゃ~ん!どうしましょう、外に何かいる、、、あら、お邪魔だったわね?
ごめんなさ~い!うふふ!!」
この状況をみたローズはなにを勘違いしたのか、そんな言葉を吐いた。
「ああ!ローズさあん!!うええええん!聞いてよダンデが酷いのお!」
涙目の喜代にびっくりしたローズは一瞬顔を無表情にして、
ダンデをギロッと睨むと低い声で叱りつけた。
ゴゴゴ・・・と地鳴りが聞こえて来る。
「おい、女の子泣かせるたぁ、どういう事だダンデリオン。てめえ、ブチ殺されてえのか。ああ?」
叱るという限度をぶっ飛んでいるセリフで叱るローズに
逆に喜代が堪らずダンデの背中に隠れてフルフルと震えた。
「へ、陛下!申し訳ございません!喜代殿の事は十分に詫びるので
どうか、怒りをお鎮めください!喜代殿が怖がっていて、、、」
今度はガクブルの喜代を宥めにかかる。
「あら、そう?ごめんねキヨちゃん!・・・ダンデ、次ぁねえぞ。」
爽やかな笑顔でそういい残すと、
サッと窓を閉めていった。
何だったんだあの人は。・・・いや、でもかなり怖かったなあ。。。
喜代はローズが去った事を確認すると、ホッと一息ついた。
「はあ~。ありがとうダンデ。いやもうメッチャ恐くってさ~。」
「いや、気にするな。元は俺のせいなのだし、」
ちらっとダンデの方を向くと、申し訳なさそうな顔をしながらダンデは
もう一度謝ってきた。
「いや、もういいよ。なんか朝から疲れた。。。」
「うん。それには同感だ。」
あ、なんか眠い。。。
そう思ったとき、ダンデも欠伸をした。
「・・・もう一眠りする?」
「・・・では、喜代殿を運ぶか。」
「いやいや、絶対あのベット冷たいだろ。丸一晩放っておいたんだし、」
二度寝の楽しみは温かいベットにあるとおもう。
「では、俺は起きる。喜代殿はここで寝ていなさい。」
しかし、その時ダンデはもう一つ欠伸をしてしまった。
何とも言い難い空気にお互い、暫し無言になった
「・・・眠いくせに。」ポツリ
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「「おやすみ。」」
どちらからともなく言い、あたしとダンデは毛布を被った。
合わせた背中の温もりがやっぱり暖かくて、心地が良かった。
・・・コショコショコショ・・・
ハンモックに二人はやっぱり狭いね。
そうだな。
あ、でもね二人だと結構温かいんだよ。・・・やっぱりこの感じ、懐かしいんだー。
お母さんとね、よくこうやって寝てお父さんを待っていたんだ、、、
あの、頃は、ホント、たのし・・・むにゃむにゃ…
・・・喜代殿は幸せだったのだな。。。おやすみ。
なんなんだよあんたら!
とツッコミたくなるお話でした。