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1・14感謝感激雨あられ

「おっかさーんー!」

「やあああ!も、もうはなしてえ!…ダンデぇぇえ!!!」

「キャクタス!いい加減にしろ!彼女が怯えているではないか!

女性を怖がらせるなど、常識に反するぞ!!・・・ぅおい!は・な・れ・ろ!」

キャクタスの赤い忍者衣装が千切れるぐらい引っ張っているのに

一向に離れようとしない少年とダンデ闘いは未だ続いていた。


「う、ううっ、ぐ、えぐ、、、ふえぇえん!!!」

遂に泣き出してしまった喜代にダンデとキャクタスの動きは止まった。


「お、おっかさん?泣かないでおくんなせい!い、い、い、今すぐ離れる忍!!」


ピョーンっと地面に降り立ったキャクタスはオロオロと喜代を見上げるが

喜代は腰を抜かして膝から崩れ落ちた。顔は真っ青になり、小刻みに震えている。


「喜代殿!大丈夫か?・・・キャクタス、今すぐに救護室に行く!

お前はこの事を陛下にお伝えし、飯と水を持って来い!」

それだけ言い残すと、ダンデは喜代を横抱きに抱え

脱兎の如く去った。


「・・・おっかさん、御免なさい・・・。」

キャクタスのつぶやきは夜の闇に飲まれて行った。


-------------------------------------



小さな声が聞こえる。。。

誰の声だ?

何をいっている?


・・・けど

小さくてもしっかりした声はあたしの心臓に突き刺さる。


あたしは気がついたら青い空に囲まれ、

青々とした草原の上に居た。


懐かしいランドセルの重み、春の風。

少年達が中央でたむろして何かをしている。


「ねえ、何を・・・してるの?」

近くにいた坊ちゃん狩りの男の子に聞く。


が、無視されたので少し場所をずらして彼らの手元を遠目で覗く。


何かが次々と彼らの手から出て行く。さらに目を凝らす。


・・・・たんぽぽだ。首だけの、たんぽぽ。


どうやら茎から毟り取って、誰が一番遠くへ飛ばせるか競っているらしい。


ここまで見た瞬間、あたしは全て思い出した、

これがいつの時か、そしてこれから何があるか・・・


でも、あたしの口は止まらない。

「・・・そんなことしちゃいけないよ!たんぽぽだって生きてんだよ!?

自分がそんな風に首取られたらどうすんの!?」


あたしの体はその群れに居たリーダーっぽい男の子に飛びかかり、

・・・呆気なく地面に叩きつけられた。


「はあ!?んだよいきなりウゼエな!たく、、、ブスが、調子こいてんじゃねぇっつーの。」


「いい子ぶりやがって、あ、つーかお前んとこの父ちゃん再婚したんだってな〜。

ウチの母ちゃん毎晩、あえぎ声がうるさいってぼやいてたぞ?」


「マジ?やべえなお前の新しいママちょ〜盛ってんじゃん!」


「ぎゃはは!やべえ!やべえ!ヤリまくりママじゃん!」


そんなセリフを吐きながら最後にあたしに砂を蹴って浴びせかけ、

少年達は去って行った。


悔しくて泣きそうになり、慌てて下唇を噛む

あんなの嘘だ。

そんな大きな声出るわけないし、義母さんと父さんは彼らの悦ぶような

低俗な事などしない。......あたしは義母さんを信じる!


カチャリとドアを開ける。もう夕方で、そろそろお父さんも帰ってきているだろう。。。

「ただいま。」精一杯、笑顔を作って入る。

温かい声が聞けると思っていた。・・・その時までは


・・・ああ、あたしは真実を知るには幼すぎたんだ・・・


耳に聞こえる獣のような咆哮も、ベットが激しく軋んでいる音も、

汗と何かが混ざり合った独特の匂いも、全て、


消したい。


そう思って、目を閉じる。


すると、一瞬だけ包まれたようなぬくもりが降ってきた。

一粒、

涙を落としたら、頬を撫でられる。


誰?

誰?

「だ、、、れ?」

「気がついたか?喜代殿。」


目を開ける。


猫のような瞳孔が視界いっぱいに見えた。


「ダン、、」

「喜代殿、心配した。・・・良かった、気がついてくれなかったらどうしようかと、、、」

肩に埋められたのでダンデの顔はよく見えない。


トンットンッとゆっくり宥めるようにダンデに背を叩かれた。

「うなされていた。。。喜代殿、深呼吸をしてみなさい。」

すーっはーっすーっはー、、、

「うん、後は飯を食え、人間は卑しいことに腹が満たされれば少しは

幸せになれるんだ。」

どんっと置かれた丼の余りの大きさに

唖然とした、

しかも中身はお粥でちょこんと小さな梅干しが一つ。


「・・・・っぷ、こんな、食べれないよ。」

思わず吹き出してしまった、

すると、ダンデはあたしのほっぺたを鷲掴み、己の顔に近づける。


「そうだ、喜代殿。笑うんだ、腹の底から恐怖も、嫌な事も全て、

吐息にのせて、、、さん、はい!!」


・・・・・・・・・・・・。

「さん、はい!」

・・・・

あは?

「あはははははははは!」

てめえが笑うのか!!


ダンデが顔を赤らめて笑うので嘘笑いではないらしい。


釣られて笑ってみた。


「ふへへへへへへへへへ」

ダンデ、さらに爆笑。


くそ!やけくそだ!!!

「わっはっはははははははっはーーーーーーー!!」


・・・・・あ、なんか良い。


ダンデもあたしも、なんも面白い事などないのに笑って、

互いに向き合って笑顔を見せ合って、

ああ、うん。

笑い合うって素敵なんだな。。。


ここに来てからあたしはちょっぴり救われてばかりだ

感謝感激雨あられ。


もう少しだけ、笑い合いたいな。よし、もう少しだけ・・・


しかし、事態を聞きつけ飛んできたローズに二人は見つかり

即☆

精神科行きとなった、、、








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