六十八首目 蓬莱山輝夜
蓬莱山輝夜
薬のみ 永久にこの世に ながらへば
かたちかはらぬ 夜半の月かな
~意味~
薬を飲んで不死の身となり、永遠にこの世で生き長らえるのならば、今見ている月はこの先ずっと同じ形を見ることになるのでしょうね。
霧雨魔理沙
「今回は真面目に歌の解釈をしてみるんだぜ」
博麗霊夢
「六十八首目にして初めての試みね」
霧雨魔理沙
「さすがは平安京を虜にしたお姫様。歌の上手さは日本一なんだぜ」
博麗霊夢
「まずは句切れね」
霧雨魔理沙
「句切れなしだな」
博麗霊夢
「全体で一文として読めるからね」
霧雨魔理沙
「じゃ一句目から『薬のみ』、これは?」
博麗霊夢
「『薬飲み』と『薬の身』の掛詞ね」
霧雨魔理沙
「気付かなかったぜ」
博麗霊夢
「『永久にこの世にながらへば』ここは普通ね」
霧雨魔理沙
「蓬莱の薬で不死の体を手に入れたら、ってところか」
博麗霊夢
「『かたちかはらぬ夜半の月かな』これも平気ね」
霧雨魔理沙
「まあ、毎月毎月同じ形の月を見ることになるわけだな」
博麗霊夢
「これで表面的な意味は取れたわね」
霧雨魔理沙
「次はこれを詠んだ輝夜の気持ちを推測していくぜ」
博麗霊夢
「『ながらへば』の『ば』は、前に未然形が付いてるから、仮定条件ね」
霧雨魔理沙
「つまりまだ薬を飲む前の話なのか」
博麗霊夢
「そういうこと」
霧雨魔理沙
「多分永琳に薬を作ってもらって、飲む前に月を眺めながら……」
博麗霊夢
「不死の体を手に入れることに対する不安がにじみ出てるわ」
霧雨魔理沙
「今回は全然ふざけなかったな」
博麗霊夢
「たまには完璧なトークも良いわね」
霧雨魔理沙
「ところで思ったんだが、」
博麗霊夢
「なあに?」
霧雨魔理沙
「今回の内容って~意味~を読めばだいたい分かるんじゃねえか?」
博麗霊夢
「それは言わない約束よ」
霧雨魔理沙
「あ!」
博麗霊夢
「今度は何?」
霧雨魔理沙
「薬を飲む前ならさ、まだ輝夜は月にいるんじゃないか?」
博麗霊夢
「……あ」
霧雨魔理沙
「その状態で『夜半の月かな』とか詠めるわけないじゃねえか」
博麗霊夢
「ま、まあ良いのよ。歌っていうのはフィクションなんだから」
霧雨魔理沙
「………」
三条院
心にも あらでうき世に ながらへば
恋しかるべき 夜半の月かな
実は作者は理系だったりします。
高校卒業してからの方が古文の参考書よく読んでるなんてどういうことなの……
誰も気付けないとは思いますが、文法的に間違いのないように努力しているのです。
博麗霊夢
「その努力、もう少し別のことに向けられないのかしら」
霧雨魔理沙
「まったくだぜ」