十一首目 詠み死神知らず
今回は長めです。長いセリフは読み飛ばしてくれて構いません。
詠み死神知らず
賽河原 三途の川へ こぎいでぬと
映姫に告げよ 渡し屋の舟
〜意味〜
私は賽の河原から三途の川へと舟に乗って行ってしまったよ、と映姫様に伝えておいてくれないだろうか、渡し守の舟よ。
長年閻魔庁に勤めてきましたが、仕事があまりにもキツいので逃げることにしました。孫娘の小町を渡し守の仕事に就けましたのでどうか探さないでください、映姫様。
霧雨魔理沙
「…誰これ?」
博麗霊夢
「小町が『おじいさんの詠んだ歌もあったから載せていいよ』って渡してくれたの」
霧雨魔理沙
「おじいさん脱走してるよな?」
博麗霊夢
「まあ、サボり癖はしっかり受け継いでるみたいね」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「…脱走者は裁かれないといけませんね」
霧雨魔理沙
「げっ」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「さて、捜索隊を募らないとね。霊夢、協力してくれません?」
博麗霊夢
「え、誰を探すんですか?」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「何言ってるの?そんなの決まってるじゃない、小野…」
博麗霊夢
「これ、詠み人知らずの歌ですよ?」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「それが何?明らかに黒じゃない」
霧雨魔理沙
「詠み人知らずじゃ裁く際の証拠にはならないんじゃないか?」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「…そうね、じゃあこの件はまたいつか」
霧雨魔理沙
「…(危なかったな)」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「ところで霊夢、」
博麗霊夢
「え」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「あなたが頼んできたからせっかく歌を詠んでわざわざこの博麗神社まで持って来てあげたというのに、出迎えも無しとはどういうつもりなのかしら?いつまで経っても出てくる気配がないから、『ああ、あの巫女もやっと博麗神社に使える身だという自覚を持って、修行に励んでいるのね』と思って部屋を覗いてみたら、何?なんでこたつに入ってお茶啜りながらのんびりしゃべってるのよ!少しはこの幻想郷を守ってるという責任を感じないの?」
霧雨魔理沙
「……」
博麗霊夢
「……あなた、紫みたいなこと言うのね」
四季映姫・ヤマザナドゥ
「誰があんなスキマ妖怪と……!
じゃ、これが私の歌だから」
霧雨魔理沙
「霊夢、やっぱりあんたスゴいわ」
博麗霊夢
「どういうこと?」
霧雨魔理沙
「いや、いろんな意味で…」
参議 篁
わたの原 八十島かけて こぎいでぬと
ひとには告げよ あまのつり舟
霧雨魔理沙
「なんで作者の言葉を制限するんだ?」
博麗霊夢
「あとがきが本文より長くなったらおかしいでしょう?」
ニグラム
「では、今回の歌の解説をさせてもらいます」
博麗霊夢
「三言でね」
ニグラム
「今日は映姫様が長々としゃべってくださったから大丈夫!」
博麗霊夢
「…いいわよ、好きにして」
・賽の河原
三途の川の川岸のこと。親より先に死んだ子が「親を悲しませる罪?」を償うために石を積み上げるという話があります。しかし石の塔が完成する前に鬼がやってきて崩してしまう。
今回はただ川岸として使っています。
・小町の祖父
この歌を詠んだ「参議 篁」は小野篁で、小町の祖父にあたります。
また篁は昼間は朝廷、夜間は閻魔庁に仕えていたという伝説があったので、
本来このタイプの小説ではありえないはずのオリキャラが生まれてしまいました。
記憶を頼って書いたので間違いがあるかもしれません。ご了承下さい。
これからもよろしくお願いします。
博麗霊夢
「ずいぶんと長く書いたわね…」
霧雨魔理沙
「まあ今回は本文も異常に長いし、いいんじゃない?」