九十六首目 さにーみるく
さにーみるく
花の舞う 神社の庭に 罠をはる
巫女に会い散る わが身なりけり
~意味~
桜の花びらが舞う博麗神社に今日も私たちは罠を仕掛ける。しかし運が悪いと巫女に見つかって、ほら、今みたいに……!
霧雨魔理沙
「ざんねん さにーみるく は ちってしまった」
博麗霊夢
「知らないうちに住み着いてたのよね」
霧雨魔理沙
「では、今回の歌について」
博麗霊夢
「お願いします、魔理沙先生」
霧雨魔理沙
「和歌において『花』と言えば? 博麗さん」
博麗霊夢
「……梅?」
霧雨魔理沙
「確かに梅の場合もありますが、普通は桜を指します」
博麗霊夢
「へえー」
霧雨魔理沙
「それでは次の質問です。伊吹さん」
伊吹萃香
「は?」
霧雨魔理沙
「今うとうとしていたでしょう」
伊吹萃香
「私は参加してるつもりはなかったんだけど」
霧雨魔理沙
「とにかく、質問に答えてもらいます、いいですね、伊吹さん?」
伊吹萃香
「名字で呼ぶなよ、なんか照れるから」
霧雨魔理沙
「はい、では伊吹さん。『罠をはる』とありますが、なぜ『はる』という言葉を使っているのでしょうか?」
伊吹萃香
「(名前云々は完全スルーなんだ)……ええと、音の響きがいいからとか?」
霧雨魔理沙
「残念、違います。『花』という春の言葉を受けて、『はる』や『散る』など縁の深い語を選ぶ。これを縁語と言います」
博麗霊夢
「『はる』は縁語であると同時に掛詞なのですね、先生」
霧雨魔理沙
「その通り。このように縁語と掛詞はしばしば同時に用いられます。何か質問はありますか?」
博麗霊夢
「先生、なんでただの妖精のくせにこんな高度な技法を駆使した歌を詠んでいるのでしょうか」
霧雨魔理沙
「いい質問ですね!」
伊吹萃香
「池○さん?」
霧雨魔理沙
「では伊吹さん、これについてどう思いますか?」
伊吹萃香
「なんかイラッとします」
霧雨魔理沙
「今日の授業はこれまで」
伊吹萃香
「(また完全スルー?)」
博麗霊夢
「起立、気をつけ、礼」
伊吹萃香
「ありがとうございました」
霧雨魔理沙
「ところで霊夢」
博麗霊夢
「どうした魔理沙」
霧雨魔理沙
「毎回これをやってればしっかり字数も稼げたんじゃないか?」
博麗霊夢
「気付くのが遅すぎたわね。残り五首もないわ」
霧雨魔理沙
「………」
入道前太政大臣
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは わが身なりけり