九十五首目 聖白蓮
聖白蓮
魔界より うき世の民に おほふかな
船なる寺に すみぞめの袖
~意味~
魔界の封印から解かれたので、私はまた全ての人間、妖怪に対して平等に救いの手を差し伸べていきましょう。と、宝船だった命蓮寺に住み始めながら思うのです。
霧雨魔理沙
「守矢の次は命蓮寺か」
博麗霊夢
「墨染の袖は僧衣のことで、それに『住み初め』を掛けてあるのね」
霧雨魔理沙
「白蓮の服はあんまり僧衣って感じしないけどな」
博麗霊夢
「まあ、今は魔法使いだからね」
霧雨魔理沙
「なんか魔法教えてくれるとか言ってたな」
博麗霊夢
「魔界での経験を生かしてってやつね」
霧雨魔理沙
「ところで霊夢」
霧雨魔理沙
「どうした魔理沙」
霧雨魔理沙
「まだまだ尺は余ってるぜ」
博麗霊夢
「本当はそういうのないんだけどね」
霧雨魔理沙
「もともとこの部分はおまけだったんだよな」
博麗霊夢
「そうそう、メインはあくまで歌」
霧雨魔理沙
「あと元ネタの認知度が低いだろうということで元の歌とその詠み手」
博麗霊夢
「言ってみればこれらの歌は全部『本歌取り』だからね」
霧雨魔理沙
「ただの替え歌じゃないんだぜ」
博麗霊夢
「有名な古歌(本歌)の1句もしくは2句を自作に取り入れて作歌を行う方法。主に本歌を背景として用いることで奥行きを与えて表現効果の重層化を図る際に用いた」
霧雨魔理沙
「どうしたいきなり」
博麗霊夢
「BYウィキペディア」
霧雨魔理沙
「そんなどや顔されても」
博麗霊夢
「要するに有名な歌をふまえて詠むことで奥行きが増すってこと」
霧雨魔理沙
「奥行きが増す?」
博麗霊夢
「奥行きが増す」
霧雨魔理沙
「増してるか?」
博麗霊夢
「……多分」
霧雨魔理沙
「あと元の歌との違いが際立つとかじゃなかったっけ」
博麗霊夢
「やけに詳しいわね」
霧雨魔理沙
「パチュリーのとこから借りてきたんだよ、和歌の本」
博麗霊夢
「あそこそんな本もあるの?」
霧雨魔理沙
「それなりに本は書かれてるみたいだぜ。歌論はマスターしたぜ」
博麗霊夢
「へえー」
霧雨魔理沙
「で、本歌取りは元の歌とは主題が変わるのがほとんど決まりみたいなものなんだぜ」
博麗霊夢
「主題が変わる?」
霧雨魔理沙
「主題が変わる」
博麗霊夢
「この歌は……変わってないわね」
霧雨魔理沙
「ダメだな」
前大僧正慈円
おほけなく うき世の民に おほふかな
わが立つ杣に すみぞめの袖
本文ではあんなこと言ってましたが、今回はたまたま「これからの意気込み」みたいな主題でかぶっただけです。
恋の歌はほとんど全部変わってます。それはもう、詠んでる情景も変わるくらいに。
霧雨魔理沙
「本歌取りは情景は秋の山とかで変わらないのが普通だぜ」
博麗霊夢
「結局本歌取りにはならないわね」
魔理沙が勉強したのに本歌取りの定義は霊夢が説明していたり若干設定がおかしいですが、そこはご愛嬌。メインは歌ですから。