九十三首目 綿月豊姫
前回の八卦の話は、とりあえず調べてはありますが適当です。さらっと読み流してくれれば結構です。
綿月豊姫
月のうら つねにもがもな なぎさより
山のさとへと つなぎつつ思ふ
~意味~
私の能力でなぎさと山の郷を繋ぎながら思うのです、月の裏側がいつまでも変わらないものであればよいなあと。
霧雨魔理沙
「……えと、誰?」
博麗霊夢
「月の使者よ」
霧雨魔理沙
「こんな人いたっけ? あんまり覚えてないんだけど」
八雲紫
「でしょうね。あなた達が月に行ってる頃に地上に来たから、多分直接の面識もないんじゃない?」
博麗霊夢
「そういえばそんな話聞いたわね」
霧雨魔理沙
「どんな人だった?」
八雲紫
「『海と山を繋ぐ程度の能力』を持っていてね、月から地上に直で来たわ」
霧雨魔理沙
「月の海の『なぎさ』から妖怪の『山のさと』に来たってわけだ」
博麗霊夢
「『月のうら』も『浦』の意味をかけて縁語になってるのね」
八雲紫
「あら、珍しいわね」
博麗霊夢
「何が?」
八雲紫
「ちゃんと和歌の説明するなんて」
博麗霊夢
「元の歌にない掛詞があるのに気づいてもらう為の作者のアピールよ」
霧雨魔理沙
「かなりぶちまけたな」
八雲紫
「ところで霊夢」
博麗霊夢
「どうした魔……じゃなくて紫」
八雲紫
「あ、いや、ちょっとやってみたかったから……」
霧雨魔理沙
「……」
博麗霊夢
「……もう帰っていいわよ、紫」
霧雨魔理沙
「そうだぜ、豊姫のことも分かったし」
八雲紫
「分かったわよ。残りは七首だっけ? がんばってね~♪」
博麗霊夢
「言ったわね。では改めて」
霧雨魔理沙
「ところで霊夢」
博麗霊夢
「どうした魔理沙」
霧雨魔理沙
「意外に字数稼げてる件について」
博麗霊夢
「まあ三人でしゃべればこんなものよ」
霧雨魔理沙
「月人だって元は地上に住んでたんだろ?」
博麗霊夢
「そうみたいね」
霧雨魔理沙
「なんでわざわざ月に行ったんだ?」
博麗霊夢
「なんだっけアレ……『穢れ』を嫌ったのよ」
霧雨魔理沙
「というわけで今回は『穢れをなくそう』」
博麗霊夢
「はぁ?」
霧雨魔理沙
「てんてんやまるのつかないように話を進めていきましょう」
博麗霊夢
「そういうことね、分かったわ」
霧雨魔理沙
「テーマは『私の好きな月』」
博麗霊夢
「私は……そうね、夜にお茶を飲みつつ、空に浮く望の月を見るのは好きね」
霧雨魔理沙
「徹夜明けに見かける有明の月なんかも私は好き」
博麗霊夢
「しかし魔理沙、よくこの企画持って来たわね」
霧雨魔理沙
「と言うと?」
博麗霊夢
「あなたの話し方変わっちゃってるもの、『アレ』を抜いてるから」
霧雨魔理沙
「『アレ』って何?」
博麗霊夢
「そりゃあ『ぜ』に決まってるわ……あ」
霧雨魔理沙
「よっしゃあ! 私の勝ち!」
博麗霊夢
「今回のは意外に難しいタイプだったわね」
霧雨魔理沙
「特に私にとってはな、だって『ぜ』が使えないんだから」
博麗霊夢
「悔しい……私としたことが……」
鎌倉右大臣
世の中は つねにもがもな なぎさこぐ
あまの小舟の つなでかなしも