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独白

 小説を書くことにした。別に書きたくて書いた訳じゃない。夢があった訳でもない。ただ、このどうしようもない自分の感情を、君にすぐ影響されてしまう私を許すために、書き留めることに決めた。

 最初は本当になんでもなかった。特に強い動機があったとかそういうのでもない。寂しかったから、君に話しかけてみた。私に危害が及ばなさそうな、「普通」の人を探していた。根拠はどこにもなかった。

 いつからだろうな。私の君を見る目が変わっていったし、君も私を好きになっていったよね。それにつれて、なんだか君がわからなくなってしまった。おかしいよね?時間も経って、前より君のことをたくさん知っているのに何も知らないように思えるなんて。

 でも、本当にわからなくなってしまったんだ。他のことに集中しようとしたから?君をちゃんと見ようとしなかったから?いや、違う。私は君を知ろうとしすぎたんだ。あるべきはずの空白を、私だけの力を使って無理矢理埋めようとした。だから、今こうやって齟齬が生じている。

 君は優しい。人は自分の鏡だと言う。そうしたら、私は自分の価値を証明するために君に優しくいてほしいのかもしれない。空白までも気になってしまうのは、君の全てを知って好きになりたいからなのかもしれない。そうやって、私は時間を超越した行為を繰り返す。無駄だとわかっていても、大して意味がないと知っていても。あなたを愛したいから。あなたを愛せるようになりたいから。


ーこれは言うなれば、不器用な恋の物語だ。他人から見たらどうしてこんなことで、ともどかしい気持ちを抱くかもしれない。それでもただ見守ってくれたら、ここに救われる人もいるだろう。


思考がとめどなく溢れ出て、そうしてできた塊は美しいのだろうか。



 1月某日。新年が明けた。だからといって特に大したこともなく、むしろ私にとっては最悪な幕開けだった。授業の発表で失敗し、その場にいた同級生や先輩には同情の目で見られる。これが初夢だなんて死んでも認めたくない。実際、発表はそこまで失敗はしなかったが、後味は悪いものだった。それはそうと置いといて、昨年10月から連絡を取っていた韓国の年上のお姉さんからの連絡が途絶えた。というか、三ヶ日に返信が来なかったからそんな兆しはしていた。元々1週間に1度のやり取りで、電話も10何分かしかしていなかったし、また電話しようと言ってもそれが叶うことはなかったので、この人とは会わないんだなと薄々お互いに感じていたのだと思う。それでも、連絡が来ないのは悲しかった。12月のある日、ストレスが溜まって寝られなくて電話アプリを開いた。時刻は多分午前3時。良い子はとっくに寝ている時間だ。たまたま繋がった韓国人の男とチャットしてインスタを交換した。プロフィールを見てそこまで変じゃなさそうだったから、私に危害を加えないと思っていた。彼は26歳で、テレビ局で派遣社員として働いていた。失恋1ヶ月後だった。正直に言うと、彼の好意が重かった。連絡を2日に1回返しただけでも、なぜ連絡をもっとしてくれないのかという素振りを見せてきた。何回も小学生みたいだと言われた。なんだか馬鹿らしかった。小学生という言葉はなんの褒め言葉でもないのに、ただ年齢が上なだけで自分の立場が上と思っているようなその男が、まるで獣みたいに見えた。そのこと自体で元彼を思い出した。あいつも性獣みたいなやつで、四六時中ヤることしか考えてなかった。なんであんなやつを一途に思ってたんだ?クソ。時は遡って昨年8月。課題でほとほと疲れ果てた私は何か気が紛れる場所が必要だった。レポートの提出最終日にツイッターのアカウントを作って、韓国人の女の子と友達になった。彼女は一見普通に見えた。普通に見せようとしていたのだから当然かもしれないが。連絡が返ってくるのはいつも夜中だった。なんだか仲が良いはずなのに私のことをどうでもいいと思ってそうだった。アイドルオタクにまともな奴なんかいやしない。でも寂しい私は新年が明けて、その子と連絡をとった。インスタで話してもいいけど相互フォローはしたくないと言われて、その意味のわからない言い分で彼女の本質が見えた気がして離れたのに、合わない人ばかりと連絡を取っていたせいで、感覚がおかしくなってしまった。そうしてツイッターのアカウントを消した理由を話して、再びぽつぽつと連絡をとり始めた。ツイッターの彼女の別アカウントを教えてもらって見たけど、なんだか私が嫌いな部類の人だった。そのアカウントを見ても失望しないでと言われたけど、そもそもあなたのことを私は好きじゃなかったのだなと思った。そうやって好きに擬態していた彼女は蜃気楼のように見えなくなってしまった。アーメン。

 また別の話で、7月に大学で一緒だった友達と遊ぶことになった。その子とは卒論提出の前日にたまたまコピー室で会って話をして、その次の日に連絡先を交換しようと言われた。私からしたら意味がわからなかった。だってその前の年の健康診断で会って少し話をした時は、私にまるで関心を寄せなかったじゃないか。ゼミで一緒の子に私の話を聞いて面白い子だと思ったと言っていた。でも私はそのゼミの子を好きじゃなかった。合わせなければ一人ぼっちになってしまうのがどうにも薄気味悪くて自分を殺してまで笑っていた。そうして得られた絆なんて、ボロボロの包帯よりも擦り切れているものだった。新しく仲良くなった子は、未来が明るいと思っていない人だった。その時期は私もそうだった。だから惹かれたけれど、私はやっぱり変わりたかった。ネガティブになっても前をむき続けていたかった。成長しないその子を見て、自分のことを棚に上げてでも離れていたかった。物理的な距離が近いということは、心理的な距離が近いことを意味しない。仲良く話していたように思えても、結局は本当の心の内を見せられなかったのだ。3月には飲食のバイトをした。勉強するやる気も必要も感じられなかったから、時間を無駄にしないためにお金を稼ごうと思った。自己分析をちゃんと出来ていない私は、無謀なことをしたなと思っている。一度はやってみたかったことだから後悔はしていない。そこで仲良くなった子は3つくらい年下で大学1年生だった。すごく可愛くて、私がずっと憧れてた顔だった。その子と仲良くなれるとは思ってなかったし、なんで私のことを気に入ってくれたのかはわからない。でも、それは私と仲良くなった人全員に言えるけれど、特に理由はないのだろう。その子は性格がとても良くて、塾と飲食のバイトをかけもちしている上に、軽音のサークルに入っていた。休みなんて彼女には存在しないみたいだった。というか、休んだら彼女は壊れてしまうのだろうなと思った。そんな障害持ちの彼女が少し怖かった。電車に乗っている時もすごく気を使われている気がして、私まで疲れてしまった。バイトでは無理矢理自分を殺して仲良くなろうとするから、後で自我が出てきた時に疲れるのかな。

 最近のことはあんまり話したくない。まだ過去にできてないから、何か言われたら混乱してしまいそう。それでも、こうやって言葉にしてみてやっとわかったのだ。私は誰かによく頑張ったねと褒めてもらいたかったのではなく、自分で自分を認めてあげたかったのだと。誰かに嫌われるか恐れるのは、誰かを嫌った経験があるからなのだと。同時に、これから起こることが今までに起こったことのないことで、不安を呼び起こすものだとしても、それは決して現実にはならないことも。

 私は見えない仮想敵を作って、ずっとそれと戦ってきた。それが役に立つこともあったし、役に立たないこともあった。でも、現実はどんなに受け入れ難くともそういう言い訳といった仮想敵を目の前にするよりは随分とましなのだ。現実から逃げようとして、さらに自分を苦しめているのは、やはり私自身なのだ。だから、こんな面倒くさい取り止めのないことを書いている私を、好きにならずとも受け入れなければいけない。どんな理由であれ、嫌いになる原因ではないし、他の人を見るように自分自身を見てあげればいいのだ。誰よりも弱さを知っている自分にこそ、誰よりも冷静な判断を下さなければいけないのだ。それは、正体のわからない誰かに対する好意として置き換えてはならないものだ。

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