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第3話 類は友を呼ぶ。面倒な友を呼ぶ。⑦

激闘ののち、梛は楓と共に夕食の支度を進めていた。


 一年生組三人は仲良く入浴中。今この場にいるのは、梛と楓の二年生組、そして凜桜と綾芽の三年生組のみだ。


 ちなみに勝負の結果は、当然のように梛の圧勝。

 期待に応えるように、陽葵を場外に押し出したあと、飛び道具で復帰を妨害する卑怯者のような戦法で、終始圧倒した。


 さすがに申し訳なくなり、改めて別のキャラで正々堂々近距離戦に持ち込んだが、むしろそっちの方が楽に勝ってしまった。

 美卯に「うっわ、大人げなさすぎ」と罵られてしまったのだが、一体どうすればよかったのか。


 その後、おつかいから帰ってきた綾芽と戦うことになり、陽葵より強くて苦戦を強いられたが、背後からの声援のおかげ――なんてことはなく、負けてたまるかという気合いでなんとか勝利を収め、梛の全戦全勝で戦いは幕を閉じた。


「梛くん、梛くん」


 と、梛をギリギリまで追い詰めた綾芽が、かまってほしそうに声をかけてきた。

 まるで酔っ払いのように、手を大きくぶんぶんと振っている。


「なんですか。飯はまだですよ。姉貴でさえ大人しくしてるんですから、綾芽さんも大人しく座って――」


「そう! それだよ!」


 綾芽は梛の言葉を遮り、「犯人はお前だ!」と言わんばかりに指を突きつけてきた。


「あの凜桜が、梛くんにくっついてないんだよ。楓ちゃんもおかしいと思うよね?」


「えーっと……」


「……ああ、そういうことか」


 楓が戸惑う一方で、梛は納得したように声を上げた。


「別になんもおかしいことはないですよ。料理中だからってことです。キッチンは刃物や火を扱うんですから、ふざけてたら危ないでしょ」


 梛はごくごく当たり前のことを、小さな子供に説明するように言ってやる。


「俺がキッチンに立っている間は、絶対に引っ付かない。それがこの家のルールです」


「なるほどねえ……。しっかし、あの凜桜がそんな無理難題な言いつけを律儀に守ってるとは……」


「……だって、梛が怖かったから……」


 凜桜はクッションで顔を隠しながら、叱られた子犬のように怯えた様子を見せる。


 梛としては別に怖がらせたつもりはなかったのだが、以前料理中に抱きついてきた凜桜を、怪我をしたら危ないと本気で叱ったところ、嫌われたと勘違いして大泣きしてしまったのだ。


 あのときはなだめるのに相当苦労したし、その場面を見ていなかった美卯の誤解を解くのも、かなり大変だった。

 まあ、あれ以来、料理中に凜桜がキッチンへ近づかなくなったので、結果的には良かったのかもしれないが。


「梛くんってば、凜桜のこといじめちゃダメだよー? 女の子には優しくしないと、めっ!」


「いや、いじめてないですって。危ないから近づくなって言っただけですから」


「ほんとかなー?」


「ここで嘘をついたところで意味ないでしょ……」


 しつこく問い詰めてくる綾芽に、疲れた梛はうんざりしたように息を吐いた。


「とにかく、キッチンに入らなければ何しててもいいので、大人しくしててください」


「ほう……キッチンに入らなければ、何をしてもいい、と。つまり、梛くんの耳元で甘い言葉を囁いても……」


「邪魔したら家から追い出します」


「しゅん……」


 綾芽は声に出して、わざとらしく落ち込んだふりをする。


 というか、キッチンに入らずにどうやって梛の耳元まで顔を寄せるつもりなのか。

 まあ、どのみち近づくことすら許さないので関係ないのだが。


「――お風呂空いたよー」


 と、梛が米を蒸らしていると、パジャマに身を包んだ美卯がリビングに姿を現した。

 湯上がりだからか、髪は若干湿っていた。


 美卯は冷蔵庫から牛乳を取り出すと、コップに注いで一気に飲み干す。

 冷蔵庫や戸棚に用があってキッチンに入る分には、梛も口うるさく言うことはないのだ。


「二人ももうすぐ上がるし、お姉ちゃんと綾芽さんも入ってきちゃえば? なんなら、楓ちゃんも一緒に」


「ううん、私はあとでで大丈夫だよ。梛のお手伝いするから、凜桜さんと綾芽さんだけで――」


「いや、あとは俺一人でやるから、楓も一緒に入ってきちゃっていいぞ。手伝ってくれたおかげで、やることも少ないしな」


 梛が米を炊いたり唐揚げにつけるソースを作っている間に、楓がサラダと味噌汁を用意してくれたので、あとは下味をつけた鶏肉を揚げるだけ。

 客人である楓に頼りすぎている気がするし、これ以上手伝わせるのは申し訳ないと思った。


 しかし楓は、そんな梛の気遣いが不満だったらしい。


「……そうだもんね。私は『客人』なんだもんね」


 楓は『客人』という言葉を強調するように言うと、エプロンを脱ぎ、足早に浴室の方へと去っていった。


「……さて、私たちもお風呂いただこっか。梛くんよ、楓ちゃんのアフターケアは私たちに任せんしゃい!」


「はあ……」


「むー……梛と一緒に入りたーいー」


「……入るわけがないから、さっさと行ってこい」


 梛が追い払うように手を振ると、凜桜は何度も振り返りながらリビングから姿を消した。


 幾度となく同じことをされているが、梛が凜桜と一緒に風呂に入ることは絶対にない。まだ幼かったあの頃とは色々と違うのだ。

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