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無限倉庫と10人の異世界転移者~倉庫、通販、ガチャ、魔獣、癒し、影支配、武装、召喚、情報、翻訳の力で異世界を支配しろ!  作者: AKISIRO
第1部 10人の覇王候補

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第4話 無限倉庫の殺戮

 ナナリーとチャナリーは獣人族の姉妹だった。

 平和な川沿いを船で旅していたところ、山賊団に襲われ、奴隷として捕らえられてしまった。

 山賊達は言っていた。


「こいつらを売り飛ばせば、大金が手に入るぜ!」


 だが、運命は彼らに甘くなかった。

 山賊の乗る船は嵐に巻き込まれ、見知らぬ森の奥へと漂着してしまった。

 そして、その森には——常識外れのモンスターが潜んでいた。


 巨大なSランク級のドラゴンが空から襲いかかり、魔獣たちが地を揺るがす。

 山賊たちは100人近くいたが、次々に命を落としていった。


「はぁ、はぁ……今、何人残ってる?」


 団長が血まみれの顔で問うと、部下が震えながら答えた。


「団長を含めて、残り20人です……」


 ナナリーとチャナリーは奴隷として後方に置かれていたため、戦闘には巻き込まれずに済んだ。

 ただ、彼らが一人また一人とモンスターに殺されていく様を、黙って見つめるしかなかった。

 その時、視界の先に建物が見えた。


「お、おい! あそこ、城じゃねえか!?」

「ほんとだ……しかも、街じゃなくて国レベルの規模だ!」


 山賊たちの目に狂気と希望が宿る。


「団長、俺の鑑定によると……中に人は一人だけです」

「なんだと? どういうことだ」

「しかも、戦闘等級はEランク。雑魚ですわ、雑魚」

「フハハハハ! よし、あの城、乗っ取るぞ!」

「オレたちSランク並みの力、見せてやる!」


 ボロボロになった山賊たちが、歓声をあげて城門に突撃していく。

 次の瞬間——。


 轟音とともに、城門が吹き飛んだ。


 その威力はすさまじく、頑丈だったはずの石造りの門が、瓦礫となって舞い散った。

 ナナリーがぽつりと呟く。


「姉さん……山賊の人たち、乱暴はしてきませんでした。悪い人ではないのかも」

「そうですわね。でも……このままじゃ、どうなるか分かりませんわ」

「……相手の情報、分かりますか?」


 チャナリーが目を閉じて、スキル【超級鑑定】を発動する。


「一人だけ。名前はダン。異世界人……スキルは【無限倉庫】。でも、戦闘力は低いです」

「勝ち目は?」

「……分かりません。なぜか、嫌な予感がします」



 一方、城門の上。

 ダンは城門の下から走ってくる山賊達を見守っていた。


「ふぅ……嫌な予感がするよ」


 そのとき——。

 

 爆音とともに城門が破壊された。

 爆風に吹き飛ばされたダンは、もんどりうって草原へと転がり落ちた。


「うわっ!? いってて……。え、なに!?」


 見ると、ボロボロの山賊たちが剣を振りかざして突っ込んでくる。


「なにこれ、やばいじゃん」


 だが、ダンはすぐに冷静さを取り戻す。


「……あ、そうだ。【無限倉庫】って、収納できるだけじゃないんだよな。試してみるか」


 ダンは手をかざし、無限倉庫を拡大した。

 巨大な箱が空中に浮かび、城門前を覆い尽くす。


「えっ!? なんだあれ!?」

「でけぇ……やべっ……!」


 叫ぶ間もなく、山賊たちはそのまま全員、箱の中に吸い込まれた。


「うっさいなぁ……頭の中で喋るなって」


 ダンの脳内に、山賊たちの騒がしい声が流れ込む。

 面倒になった彼は、心の中で命じた。


「……解体しよ」


【無限倉庫】の中で、20人の山賊は情報単位にまで分解される。

《無限倉庫ログ》

・山賊×20名(解体済)

・獲得スキル:鑑定、爆破、奴隷紋、解錠、スリ、操船、鷹の眼、鍛冶、鍛錬、筋肉強化……

・鉄の剣×20

・銅の鎧×20


「うおー……人間を解体すると、スキルが取れるのか。鑑定スキルも手に入ったし、これ便利だな」


 罪悪感は——不思議と、まるでなかった。


「うーん、なんでこんな冷静なんだろ。異世界だから……?」


 と、そこへ。


「……ん?」


 ふと顔を上げると、近くでこちらを見ている二人の女性がいた。

 耳がぴょこぴょこ動き、尻尾がふさふさと揺れている。

 ボロボロの服。

 栄養失調で、瞳に力がない。


「……あの、奴隷だったんなら、うち来る?」


 そう言って近づいてみると、彼女たちは思ったよりも大人の女性だった。

 けれど、犬耳と尻尾は反則級の愛らしさ。


「うわ……もふもふ……!」


 思わず手を合わせて懇願する。


「お願いです! 一回、もふもふさせてください!!」


 その姿に、姉妹はポロポロと涙をこぼす。


「……助けてくださって、ありがとうございます」

「どうぞ、好きなだけ、もふもふしてくださいませ……」


 そしてダンは知る。

 獣人の耳と尻尾は、人生で一度は触れるべき神の創造物である、と——。


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