第24話 無人島にばんばん生贄が降ってくるんですが?
無人島の夜。焚火の周囲に座る三人の影が揺れていた。アルマード・ナナガミ、アーサー王、そして不滅の女神。彼らは、静かに火を見つめながら、次なる召喚の準備を進めていた。
「これだけ素材が集まれば、もう一度召喚術が使えるはずだ」
アルマードが焚火を見つめながら呟くと、アーサー王が立ち上がる。
「よし、やるか」
「おうよ」
「ですじゃ」
三人は立ち上がり、奇妙な踊りを始める。手足をばたつかせ、意味不明なステップを踏むその姿は、儀式というよりも滑稽な舞に近かった。
「これって、本当に必要なのか?」
アーサー王が眉をひそめる。
「この踊りでお前らを召喚したんだ。ちゃんと踊れ。変な奴が来るかもしれんぞ。俺の知ってる英雄で変な奴は少ないが、いや、いるかもな。とんでもないのが来たら、俺でも制御できん」
「俺もとんでもない英雄だと思うけど?」
「まぁ、お前はとんでもないが、気にすんな」
焚火の炎が勢いを増し、中心に集めた素材が燃え上がる。すると、空から何かが降ってきた。
「今、人が降ってこなかったか?」
「いや、気のせいだろ?」
「あ、ああ……」
アルマードが空を見上げると、再び何かが降ってくる。しかも、次々と。
「今日の隕石は流星だな」
「いや、完全に人が降ってきてるぞ」
「気のせいだ。仮に人でも、あの炎の中じゃ燃え尽きる」
「助けてくれえええ!」
焚火に突っ込むように、叫びながら人が降ってきた。
「……人だな」
アルマードは認めた。
「助けなくていいのか?」
「無理だろ。空から人が降ってきた時点で助からん。衝突して、エキゾチックな物体になってるぞ」
「だな」
「南無南無」
「埋葬できないのが悔やまれるがな」
「さっきから降ってきてる人数、100人は超えてるぞ」
「ああ、悲しい現実だな」
「思うんじゃが、わしら虐殺してね?」
不滅の女神がぽつりと呟く。
「いやー、それはないでしょ」
「だな」
アルマードとアーサー王は、どこか目を逸らすように頷いた。
「そろそろだな。英霊召喚を始めようか」
「おうよ」
焚火の炎がさらに高く燃え上がり、召喚の儀式が始まる。
【条件達成――召喚儀式成立】
【素材:人間×215人(Aランク)+雑多な素材(Eランク)】
【召喚対象:剣豪武蔵、破壊王信長、占星卑弥呼、方舟ノア、聖女ジャンヌ】
【召喚開始――】
アルマードは召喚された英霊たちを見て、違和感を覚える。確かに名前は知っている。だが、彼らは歴史上の人物とはどこか違っていた。
剣豪武蔵――宮本武蔵のはずだが、頭が爆発しており、サムライの衣装に身を包み、腰には二本の刀。
破壊王信長――織田信長のはずだが、背中に炎を纏った巨大な剣を背負い、衣装はファンタジー風にアレンジされている。
占星卑弥呼――邪馬台国の女王だが、子供のような背丈に鋭い目つき、きわどい衣装で身軽に動く。
方舟ノア――神話の人物だが、幼い子供の姿で、小さな玩具の船を持っていた。
聖女ジャンヌ――ジャンヌ・ダルクのはずだが、銀ではなく青い鎧を纏い、真っ直ぐな瞳でこちらを見つめていた。
彼らは、歴史の枠を超えて変容していた。アーサー王もそうだった。持っている剣は、華やかな聖剣ではなく、魔物のような魔剣だった。
召喚された英霊たちは、焚火の前で一斉に膝をつき、声を揃えて言った。
【お呼び頂いて光栄です王よ】
【戦う準備は整っておりますが、まずはこの無人島を開拓せねばなりませぬ】
「だな。素材は集まったし、この島には変な遺跡がある。まずは皆でそこを探検しよう。その後に開拓を進めたい。最終的には、この島を出て大陸を目指す」
【御意】
当初はこの島に拠点を築くつもりだった。だが、空から降り注ぐ人々、謎の遺跡、そして召喚された英霊たちの存在が、アルマードたちの考えを変えた。
この島を早急に出る必要がある。そう思うようになっていた。
だが、遺跡の探検は避けて通れない。そこに何かがある。何かが始まる。
かくして、ファンタジー風に変容した英雄たち――アーサー王、剣豪武蔵、破壊王信長、占星卑弥呼、方舟ノア、聖女ジャンヌ、そして不滅の女神――は、無人島の奥に眠る遺跡へと向かった。
それが、この島の“起動”に繋がるとは、誰も予想していなかった。




