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無限倉庫と10人の異世界転移者~倉庫、通販、ガチャ、魔獣、癒し、影支配、武装、召喚、情報、翻訳の力で異世界を支配しろ!  作者: AKISIRO
第1部 10人の覇王候補

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第12話 奴隷帝国を成り上がれ

 物語が始まる前から詰んでいる──そんな理不尽、異世界ではよくあること。  レオ・バルーザは鎖に繋がれたまま、うす暗い牢の中でぼやいた。


「なんで異世界に出た瞬間に、俺、鎖付きなん?」


 レオは25歳、元の世界では八百屋を営んでいた。  青果の仕入れに命をかけ、商店街の人々に笑顔と新鮮な野菜を届ける日々。  希望に満ちた人生が、気がつけばどこかの牢屋の床。

 しかも、異世界転移した先は地下牢。目を覚ました瞬間、騒然とする守衛たちに囲まれ、問答無用で鎖を打ち込まれた。


「お前……悪魔か?!」


 ローマ兵のような装備を身に纏った守衛たちは、恐怖を隠しきれぬ声で叫んだ。  誰も彼もレオの目を見ようとせず、ただ震えながら言葉を繰り返す。


「ここは奴隷帝国だ。お前のような得体の知れぬ者は、戦闘奴隷にされる運命なんだ」


 飯のたびに、守衛はぶつぶつと忠告と脅しを繰り返してくる。


「そのうち、帝国の英雄様とやらがお前を選別しに来る。試練だ。勝てば奴隷兵士として徴用、負ければ……処理される」


 その老齢の守衛はどこか憎めない男だった。  妙に世話焼きで、野菜談義を振ってきたり、筋肉を褒めてきたり、ちょくちょく差し入れまでくれる。


「おめー、悪魔でも野菜好きなら話は別だ」


 結果、レオはとっつぁんと呼ぶようになった。  気がつけば一ヵ月。名を名乗ることすら忘れるほど、異世界生活に馴染み始めていた。


「おう、そろそろ決着の時だ。相手はガルーザ、帝国の英雄だ」


 とっつぁんが真剣な顔で言う。


「スキルは【十剣の舞】。魔剣を十本同時に浮遊させ、全方位から攻撃を仕掛けてくる。逃げろ、当たるな、死ぬな」

「逃げれば勝ちって、それ選別じゃない気がするけど……」

「名前、なんて言ったっけな?」

「レオ・バルーザ。よろしくな、とっつぁん」

「よし、レオ。生きて帰ってこい」


 そうしてレオは巨大な闘技場へと連れ出される。  観客席には帝国兵士、貴族、そして王とおぼしき男──王冠をかぶったちょび髭の中年男。  その隣には、威厳と気品をまといながらも、どこか気まぐれそうな美少女が腰を下ろしている。


「……変な国だな」


 と呟いた瞬間、目の前に現れたのは黒曜石のような重厚な鎧に身を包んだ男。浮かぶ十本の剣が周囲を取り囲む。


「俺がガルーザ。お前がレオか。まずは一撃、選別させてもらう」


 一本の魔剣が空を泳ぎ、魚のように滑らかに、しかし確実にレオの心臓を狙ってくる。  レオは一歩も動かず、その剣を受け止めた。

 否、剣はレオの胸に突き刺さったにもかかわらず──溶けるように、彼の体内に吸収されていく。


【スキル発動:武装支配】


 その剣の名は【ヴォルテックス】。  紅蓮の魔剣、その意志と力をレオの体に宿す。  瞬間、レオの体は炎の魔人へと変貌した。  煮えたぎるマグマのような鎧を纏い、空気が焦げる。


「な、なんだ……こいつ……」


 観客席がざわめく。


「お、おめえええええ、すげえな!!」


 とっつぁんの歓声が響く。


「じゃ、今度はこちらから行きますか」


 地面が炸裂する。  瞬時に距離を詰めたレオの拳が、ガルーザの顔面を狙う。  だが、ガルーザは残った剣で防御しようとする。

 ──その瞬間。  またしても剣が吸収された。


【スキル発動:武装支配】 【魔剣:デャリャクス】──氷を統べる剣。


 氷の籠手が両腕に生成され、右手に氷剣、左手に紅蓮の籠手。  火と氷の相反する力が、完璧に調和し、レオの身体を包む。


「な、なにィ!? 我が剣が……吸われた……だと……?」


 最後の一閃。  氷剣が唸りを上げ、ガルーザの首を斬り裂く。

 沈黙が闘技場を支配する。


 誰もが、敗北などあり得ぬと思っていた帝国の英雄が、八百屋の青年に敗れた。

 しかしレオは不思議と、命を奪ったことに罪悪感はなかった。 異世界という舞台が、倫理観すら変えてしまったのかもしれない。


「う、うそだろ……」


 ちょび髭の王が震え声で呟く。


「よくやったああああああああああ!!」


 歓喜の声をあげたのは、意外にも隣の姫だった。  彼女はひらりと宙を舞い、まるで重力を無視するようにふわりとレオの前へと着地する。


「よくぞ勝った、このわし、スカーレットの命運をお主に預けたい!」

「……え?」

「つまりじゃ、わしの婿になってくれ。そうでないと、父上に決められた変な爺と子供を作らねばならぬのじゃ。嫌じゃ、嫌すぎるのじゃ!!」

「ちょっと待って!? 展開早すぎて追いつけない!」

「お主を夫にして、英雄として仕立て上げる。この奴隷帝国の未来を変える者、それがレオ・バルーザ。よろしく頼むのじゃ!」

「まじかよ……」


 頭を抱えるレオ。


「え、ええええええええええ!?!?!?!?!?」


 とっつぁんの絶叫が、すべてを物語っていた。

 こうして、ただの八百屋だった青年は、奴隷帝国の英雄となり、  お転婆姫の未来の婿候補として、政争と陰謀渦巻く帝国の中心へと投げ込まれていくのであった。

 その名も──英雄レオ、ここに誕生!

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