【第四章 パーティーは商売の駒】
【第四章 パーティーは商売の駒】
冒険者ギルド・スフン支部の掲示板前は、いつもより賑わっていた。
「おい、見たか? あの小山登って奴、Cランクに昇格したんだとよ」
「信じられねえ、あんな地味な薬草拾いが……」
「しかも装備も新品ピカピカだ。どこで金を手に入れたんだ?」
噂話をよそに、登は掲示板の前でじっとクエスト一覧を眺めていた。
――狙いはパーティー推奨の高額クエスト。
薬草採取だけでは、もう物足りない。
今の装備とランクなら、魔物討伐にも手を出せる。
その中に、ちょうどいい案件があった。
【急募:東の洞窟・魔物掃討依頼】
・推奨ランク:C以上
・推奨人数:3~5人
・報酬:金貨3枚+討伐品の買い取り有り
(これだ……腕試しにも、資金稼ぎにも悪くない)
だが、問題は人手。
いくら分身が使えるとはいえ、戦闘中に堂々と分身を使えば怪しまれる。
表向きの“仲間”は必要だった。
その時、後ろから声が飛んできた。
「おい、あんた……登さんだよな?」
振り返れば、剣士の青年が立っていた。
ギルドでも有名な剣の腕を持つアレド。
陽気で、熱血漢。実力は確かだが、金には無頓着。
「よかったら、組まねえか? 俺たち、今その洞窟のクエスト狙ってたんだ」
アレドの後ろには、大盾を背負った無口な盾士と、クールな雰囲気の錬金術師。
盾士はゴラン、錬金術師はシェリア。
どちらも実力者で、ギルド内では信頼も厚い。
「お前さんの噂は聞いてる。薬草採取で相当な量を持ち帰ったとか。手際の良さは折り紙付きだろ? 今、戦える仲間が欲しくてな」
登は彼らを一瞥し、即座に頭の中で計算する。
(アレドは火力要員。ゴランは壁。シェリアは補助と回復。……悪くない。こいつらが前で戦ってる間、俺は裏で“別の稼ぎ”ができる)
表情は変えず、登は静かに答えた。
「条件がある。報酬の金貨の分配は、俺の言う通りにしてもらう」
アレドは笑った。
「お、強気だな。だが、構わねえ。稼げる奴の言い分は通すのが、冒険者のルールだ」
ゴランは黙って頷き、シェリアはじっと登を見つめる。
「……あなた、妙に計算高そうね。でも、ま、いいわ。役に立つなら文句はない」
登は薄く笑った。
「なら決まりだ。今夜、作戦会議をする。全員、俺の宿に来い」
アレドは陽気に笑い、肩を叩いてきた。
「これで決まりだな! よっしゃ、俺たち最強のパーティーになるぜ!」
登はその軽さに呆れつつも、内心はほくそ笑んでいた。
(……これで戦力は揃った。表の顔は“冒険者パーティー”。
裏では、俺と分身たちで資金を稼ぎまくる)
ギルドの扉をくぐるとき、登は静かに呟く。
「……パーティーも、商売道具だ」だがそれを表向き言っちゃいけない言葉なんだよな
まだ俺も未熟者だってことよ
書かなかったけど「パーティーは仲間だ」を本音にできないから未熟者ってことが分かったかな