【第二章 装備は金で買え】
【第二章 装備は金で買え】
翌朝、スフン町の朝は喧騒で始まる。
登は宿を出ると、まっすぐ**冒険者用品店『鉄の牙』**に向かった。
軋むドアを開ければ、店主のガラ声が響く。
「おう、よう来たな貧乏冒険者……って、なんだその顔」
登は無言で金貨2枚と銀貨10枚をドンとカウンターに叩きつけた。
「今日は買う側だ。装備一式、冒険者ランクC相当のものを全部揃えろ。即納品限定だ」
店主の目が丸くなる。
「て、てめえ、どこでこんな大金……」
「夜の魔物を狩った。細かいことは聞くな」
もちろん嘘だ。だが、賭博で稼いだ金とは絶対に言わない。
店主は唾を飲み込み、すぐに奥の倉庫へ走る。
「ま、待ってろ……! Cランク級なら、すぐに出せる!」
すぐに持ち出されたのは、質実剛健な装備。
・鋼鉄の胸当て(物理防御高め・重すぎない)
・刃こぼれしにくいロングソード
・頑丈なブーツ
・冒険者ギルド推奨の耐毒マント
登は手慣れた動きで装備を確認し、重さも試す。
「……悪くない」
「お、おう。これで銀貨70枚だ。まだ金貨1枚半も残るぜ?」
登は黙って残金を袋に戻し、装備品だけ抱えて店を後にした。
【ギルドでのランクアップ申請】
その足で、**冒険者ギルド『スフン支部』**に向かう。
受付嬢が目を丸くする。
「小山登さん……!? 今日は何の用ですか?」
「ランクアップ申請だ。DランクからCランクへ。資格はあるだろ?」
登は、ギルド規定の証明書を突きつける。
『装備と資金がCランク相当であること』
これが最低条件のひとつ。
「し、しかし……急ですね……」
「俺は急ぎの男なんでね。さっさと試験を回してくれ。俺は時間を無駄にしない」
受付嬢は慌てて奥に走る。
数分後、試験官の男が現れた。
「小山登だな。じゃあ、ランク試験は明日の朝だ。『薬草採取クエスト』。持ち帰り量と質で合否を決める」
「望むところだ」
登は静かに微笑む。
薬草採取なら慣れている。
だが、今回の勝算はそれだけじゃない。
分身がいれば、採取範囲は五倍以上。
しかも、全員が同じ知識と手際を持つ。
勝つのは当然だった。
「……明日、Cランクになるのは俺だ」
登はギルドを後にし、月光の下、ニヤリと笑った。
金で装備を整え、裏技で試験を突破する――それが小山登の流儀だ。